くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「サウンド・オブ・ミュージック」「在りし日の歌」

サウンド・オブ・ミュージック

言わずもがなロバート・ワイズ監督の傑作。とにかくすごいのは、戦争映画でサスペンスにも関わらずファミリー映画に仕上がっている点です。映画の完成度の高さでは「ウエストサイド物語」を超えていると思います。それは、演出の素晴らしさ、どれもが名曲揃いの充実度、そしてなんといってもジュリー・アンドリュースの力量でしょうね。全く素晴らしい。

 

雪山が広がる空撮映像から緑に包まれた山間、主人公マリアの姿が彼方に見えて、テーマ曲。このオープニングも見事。そして歌い終わって、教会の鐘が鳴り、マリアが慌てて走り去ってメインクレジット。もう寒気がします。

 

あとは次々と流れる名曲の数々に載せて、トラップファミリーの物語が綴られて行きますが、時は第二次大戦下、ナチスの侵攻が迫ってくる緊張感もちらほらと挿入されてくる。このさりげない脚本構成も本当に舌を巻いてしまいます。

 

前半は名曲の数々とラブストーリーに中心に置かれ、後半は一気にナチスからの逃亡劇に変わる。構成のバランスの良さがとにかく見事ですね。前半と同じ曲で後半を閉め、アルプスの山を越えるラストショットが映るともう背筋に寒気を覚えるほど感動してしまいました。これこそが本物の名作でしょうね。

 

「在りし日の歌」

これは良かった。中国の近代史を背景にした二つの家族の人生の物語が、巧みなフラッシュバックで時間を操りながら描く作品で、一瞬戸惑うこともありますが、整理されてくるとどんどん引き込まれ、三時間あまり全然退屈しませんでした。監督はワン・シャオシュアイ。

 

ハオハオとシンシンの二人の少年が溜池に来ている。池のそばには他の子供たちが遊んでいて、ハオハオはシンシンを誘うが水の怖いシンシンは躊躇っている。カットが変わると、心身が溺れたらしく駆けつけるヤオジュンとリーユンの夫婦。またカットが変わり、シンシンを迎える両親。反抗的なシンシンの姿。シンシンは溺れ死んだようで、その経緯を息子のハオハオに詰め寄るハオハオの両親。細かくいきなり過去に変わったりするので、最初はついて行きづらかったが、次第に物語の流れが読めてくる。

 

ヤオジュンら夫婦の一人息子はシンシンで、可愛がって育てていたが妻のリーユンは第二子を妊娠してしまう。ところが時はひとりっ子政策推進の折で、ヤオジュンの勤める工場の主任でハオハオの母でもあるハイイエは強引にリーユンに中絶させる。しかし間も無くしてシンシンが溺死し、それにハイイエの息子ハオハオが関わっていたらしく、心に悔いが生まれてしまう。それでも、ヤオジュン夫婦とハイイエ夫婦は工場の同僚として仲良く暮らす。

 

ところが、ある時ヤオジュンの持ち場のモーリーとヤオジュンが、それとなく惹かれあい、モーリーがアメリカに渡航する直前ヤオジュンと体を合わせてしまう。しかもその一回でモーリーは妊娠する。シンシンの死で沈み込んでいるリーユンのために、モーリーは生まれてくる子供を、モーリーの子供ではなく他人の子を養子にしたことにしてヤオジュンに受け入れてもらうことにする。

 

シンシンの代わりにヤオジュン夫婦に育てられたが、次第に反抗期になり、一時は行方がわからなくなる。そして戻って来たときには、不良グループのような集団の中にいた。ヤオジュンは、本当の身分証を身代わりのシンシンに与え、家を出す。

 

時が流れ、ハオハオは医師となっていた。ハイイエは不治の病で余命幾ばくもないことがわかり、かつての仲間を病院に呼び寄せる。既に20年以上の時が経っていた。自殺未遂さえ起こしたリーユンもヤオジュンと共にハイイエの病院にやってくる。工場時代の仲間も集まりひと時の古の感慨にふけるが間も無くハイイエは死んでしまう。

 

ハオハオは、少年時代のシンシンとの経緯の真相をヤオジュンたちに告白する決心をする。ため池で思わずシンシンを突き飛ばしてしまったことを告白するが、全て過去のことだからとヤオジュンたちは応える。

 

そして時を経ずしてハオハオに子供が生まれ、ヤオジュンたちもお祝いに駆けつける。アメリカのモーリーからもネットで祝福が届き、アメリカで生まれた子供も紹介される。そんな時、ヤオジュンの携帯に、かつての身代わりのシンシンから電話が入る。故郷に戻って来たという。しかも恋人も連れている。ヤオジュンとリーユンは彼を迎えるという返事をして映画は終わる。

時代の流れと人生の機微が、細かいカットつなぎと構成で描かれるドラマに次第に胸が熱くなって来ました。いい映画を見ました。