「愛と誠」
歯が浮くようなシーンと展開、セリフの連続、しかもピュアで真っ直ぐすぎる純愛物語がかえってエロティックにさえ見えてしまう。その徹底がとにかく楽しい作品でした。監督は山根成之。
幼い頃の太賀誠と早乙女愛が雪山で接触する有名なシーンから映画が始まる。いかにもなモノクロに赤い傷が鮮明に映される。そして時は9年後、合宿にきていた高校生の早乙女愛の集団に不良グループが乱入、そこに太賀誠リーダーの不良グループが乱入して、愛と誠の再会となる。
父に頼んで、愛の青葉学園に誠を転入させたものに、やりたい放題の誠と、岩清水らの取り巻きの男子学生の確執。そしてクライマックスの大乱闘の末、愛が怪我をして、彼女を抱き上げた誠が夕陽に向かって歩いてエンディング。
とにかくセリフが、歯が浮くほどにピュアで真っ直ぐ。今ならコメディになる感じですが、それをくそ真面目に演じていくから、かえって
エロティックに見えてくるから不思議。
成長しすぎた肉体の早乙女愛のセーラー服姿が艶かしいほどの色っぽくて、熱っぽく恋を体現する西城秀樹の野性味が映画を不思議な空間に仕上げていく。突然背景が真っ赤になったり、ストップモーションで同じ場面が繰り返されたりするトリック撮影さえもコミカルに面白い。なかなか楽しめる映画でした。
「珠はくだけず」
古き恋愛メロドラマで、特に変わった展開も秀でた描写もなく、若尾文子映画祭の一本として鑑賞。監督は田中重雄。
徹と喬の兄弟が柔道の乱取りをしている場面から映画は始まる。喬が会社を辞めるといい、それを問い詰める兄徹。間も無くして、喬はドラマーとしてヤクザ紛いの生活になっている。ここに炭鉱会社の令嬢五月が同じ道場に通っていて、どうやら徹は惚れているようだが、喬も惚れていて身を引いたようである。
五月の父の会社は竹山という男の会社と合併の話があるようで、竹山は五月と結婚することで、会社を一つにする計画らしい。一方、徹らの妹きみ子が竹山と付き合っているが竹山は遊びのつもりながらきみ子は本気である。
という設定で二転三転と交錯して物語が進み、結局会社の合併話はそっちのけで、きみ子の思いに竹山も応える気になり、徹と喬は気持ちの整理のためにまた乱取りをし、吹っ切れた喬は素直に五月との恋が成就し、ドラムを叩いていて、行き場のない徹は道場で自主稽古していて映画は終わる。まあ、一本筋の通っていない、雑多な作品ですが、まあ、古き良き映画です。
「明日は日曜日」
たわいのないサラリーマンコメディですが、意外に後半は引き込まれて楽しんでしまいました。監督は佐伯幸三。
主人公大伍が駅のベンチで目を覚ますところから映画が始まる。そして遅刻して出社。彼には恋人の桃子がいる。そんな二人の物語に、大伍の上司の課長の夫婦喧嘩の話やら、定年間近の社員の悲喜劇、さらに、会社の経営状況の話、などなど様々なエピソードが絡んでくる。
ふとした行き違いで、桃子と大伍は喧嘩してしまう。二人がギクシャクする中で、周りの人物のさりげない人間ドラマが展開して、終盤、大吾が暴走して起こしたことが会社に貢献し、その流れで桃子の大吾への疑惑も晴れて、二人は仲直りし、駅のベンチで大吾を介抱する桃子のシーンから、明日の日曜日のデートの約束をして電車に乗ってエンディング。微笑ましいラストが心地よい映画でした。