くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「MOTHER マザー」

「MOTHERマザー」

脚本が悪いのか演出が悪いのか映画と演技に強さがない。こちらに訴えかけてくる迫力がないのに、ひたすら陰湿で暗い。監督の独りよがりにしか見えない仕上がりになったのはどうしたものか。長澤まさみも監督の大森立詞もいい役者だし良い監督なのにという感じでした。

 

シングルマザーの秋子が、幼い周平と暮らしているが、秋子はこれという仕事もなく、両親や妹に金を無心しながら生活をしている。彼女がこうなったことは一切説明シーンを省き一気に本編へ行くのだが、よくある手法ながらどうもテンポが悪い。周平の父親も出てくるシーンはあるが、今一つ描写が弱い。

 

両親からももう金は出さないと言われ、妹からも断られ、どこ行くこともなくゲームセンターに来た秋子と周平は、そこでいかにも遊び人の川田と出会う。秋子は川田の近づき、いつの間にか三人で生活するようになるが、秋子は周平を放っておいて一週間近く家を空ける。ガスも止まり、間も無く電気も止まる。市役所の福祉課の職員で秋子に気がある宇治田をうまく利用しようとする秋子だが、周平を出しにして脅迫まがいのことをしたので逆ギレされ宇治田は大怪我を負う。

 

結局、ことを荒げず、秋子と川田は以前のままに暮らすものの、元のところへもいられず点々とする。物語は秋子が男を変えながら、周平をこき使って金を作り、生活して行く様を描いて行く。秋子に子供ができたことで川田が去り、ラブホの経営者の男からも離れ、娘冬華が生まれたものの生活する術もなく7年が経つ。

 

ホームレスまがいの生活をしているところを福祉職員の髙橋亜矢に出会う。彼女は秋子らを簡易施設に住まわせ、周平にフリースクールを世話する。次第に勉強にも興味を持つ周平だが、秋子はあくまで生活のために周平を使おうとする。何故にそこまで秋子は世間に背を向けているのかが、この辺りになると気になり始めるのだが、それらしい描写が全く見られず、秋子がただの異常なヒステリー女にしか見えなくなってくる。人物像の演出が薄っぺらいのである。

 

ところがどこで見つけたか川田が現れ一緒に生活を始める。暴れる川田をどうしようもなくなんの手立てもしない亜矢の描写が実にリアリティに欠け、事情はあるらしいがこのあたりからおかしくなってくる。

 

結局借金取りから逃げるため宿泊所を出た秋子らだが、川田はまたも何処かへ消えてしまう。それからしばらくし、三人は工事現場の宿舎に住んでいた。このあたりからストーリー展開が雑になってくる。現場の社長に世話になる秋子は、会社の金を盗むように周平に言ったりするも、結局ままならず、またここを出て行く。そして、途方に暮れた秋子は、両親、つまり周平の祖父母を殺せば良いのではと周平に言うのだが、あまりに唐突で、理由が見えない。

 

修平は実行に移すのだが、この辺りもかなりの手抜き状態で、追い詰められた感もなく、何故周平が秋子にそこまで心酔しているのかも見えない。

 

警察に捕まるも、周平は秋子に言われて犯したわけではないと主張し、秋子は執行猶予だが周平は12年の懲役刑となる。どうにも納得のいかない弁護士は何度も二人に詰め寄るが、秋子は自分の子供をどう育てようと自由だと言い、周平は母が好きだと答える。このラストも実に弱い。何か訴えかけたいものがあるのだろうが、監督の独りよがりで終わった感じでした。