くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「男はつらいよ 寅次郎恋歌」「男はつらいよ 柴又慕情」

男はつらいよ寅次郎恋歌」

物語の構成はワンパターンで面白みもないが、画面の絵作りの美しさは流石に美しい。特に冒頭の山村の芝居小屋のショットは秀逸。監督は山田洋次

 

山深いところで興行を打つ芝居小屋だが、連日の雨続きでお休み。そんな小屋で寅さんが座長と話している場面から映画が始まり、看板女優に宿まで送ってもらう。この風情あふれるシーンは素晴らしいが、ここだけといえばここだけ。

 

ここからはいつもの展開で、柴又に帰ってきた寅さんが例によっての大げんかで出ていく。そんな時、弘の母親が危篤という電報で弘が田舎に戻ると時すでに遅く葬儀となる。そこへ通りかかったのが寅さん。葬儀が終わり弘たちも帰ってくるが、電話をかけてみると、何と一人残った弘の父のところに寅さんが話し相手で入っていて、そこで蘊蓄にある話をされて柴又へ帰ってくる。

 

そんな頃、柴又に貴子といい美人が喫茶店を始め、とらやに挨拶に来て、あとは寅さんと鉢合わせて、例の恋話からのドタバタ劇の後振られてまた旅に出る。旅先で冒頭の旅芸人一座と再会し、そのトラックに乗って去っていってエンディング。

 

貴子の喫茶店はどうなったの?弘の父の哀愁はどうなったの?とこの辺りの処理がかなり雑な脚本になっているがここまで見てきたどれもその辺りは放置なのでこれも目を瞑るしかない感じです。

 

物語の中身は何の変哲もない作品ですが、このワンパターンの喜怒哀楽がファンを掴んだのでしょうね。個人的には中盤から眠かったです。

 

男はつらいよ柴又慕情」

おいちゃん役の森川信が亡くなり、松村達雄が代役となる。映画に余裕のある仕上がりになっていて、物語も綺麗に纏まっている、このシリーズに中では佳作の仕上がりで、いい作品でした。監督は山田洋次

 

安直ながら、漁師の弘とさくらが出てくる夢シーンから映画は始まる。目を覚ました寅さんは、旅の空で列車に乗る。柴又に帰ってくるが、二階を貸し間にするという看板に切れた寅さんとおいちゃんらの騒動から再び旅に出る。

 

舞台は金沢に移り、三人の女性が旅行に来ている。たまたま寄った茶屋に寅さんがいて面識ができ、一緒に観光することになる。三人のうちの一人が今回のマドンナ歌子で、吉永小百合が演じる。流石に若き日の吉永小百合は可愛らしい。三人とも東京ということでその場は別れる。

 

東京に戻ってきた寅さんは、かつての三人のうちの二人と再会し、とらやにやってくる。その日はそのまま終わるが、後ほど歌子が訪ねてくる。こうして物語は本編へ。

 

物語の構成展開がこれほどワンパターンでよくも飽きられなかったと思う。寅さんは歌子にぞっこんになってしまうが、歌子には焼き物をする恋人がいるのだが父と二人暮らしなので家を出ることに躊躇している。とらやで楽しく過ごす歌子はさくら夫婦に相談し、そこで決心する。

 

さくらのアパートで相談した歌子を迎えにきた寅さんと夜の道を帰る。このシーンが今回の作品の見せ場というか、なかなかの仕上がりになっている。そこで、寅さんは歌子が結婚する決心をしたことを知り、寅さんは失恋。一ヶ月後、歌子から近況を知らせる手紙がとらやに届き、寅さんは例によって旅の空で映画は終わる。

 

一つ一つのシーンに余裕のある演出が施されていて、映画に叙情と余韻が見られる仕上がりになっている一本で、このシリーズの中でもいい仕上がりの一本だったと思います。