くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ブラック アンド ブルー」「#ハンド全力」

「ブラック アンド ブルー」

脚本がよければ三流監督でもそれなりの作品になるという典型的な作品。とにかく脚本が実によく書き込まれている。しかも演出もそれなりにテンポ良くスピーディなので、最後まで全くだれずに見終わることができました。久しぶりに幌出し物に出会いました。監督はデオン・テイラー。

 

一人の黒人女性アリシアがランニングをしている。そこへパトカーが近づき有無を言わせず職務質問に入るが彼女が警官だと分かり、即釈放する。アリシアは元軍隊にいて最近この故郷に警官として赴任してきた。

 

相棒と巡回するが、かつての団地はギャングの巣窟となっていて、そこのギャングのリーダーはダリウスといった。アリシアにはこの地には幼なじみのマイロやミッシーなどもいて懐かしく声をかけるが警官になったアリシアには冷たかった。

 

一通り巡回から戻ると、夜番に入ることになり麻薬課のブラウンと巡回に出る。ところが、ブラウンがある建物に入って、待っていたアリシアは銃声を聞いて駆けつける。そこには麻薬課の警官マローンらが組織の黒人ゼロらを銃殺していた。アリシアのボディカメラにその映像が映されたと知ったマローンらはアリシアを撃つが、間一髪でアリシアは脱出する。

 

ところがマローンらは麻薬課組織ぐるみでアリシアを襲ってくる。なんとかマイロの店に逃げ込み、相棒と待ち合わせて車に乗るがその相棒も見て見ぬ振りをした方がいいと諭す。アリシアは車から逃げマイロの家に逃げ込む。ところがマイロはゼロを殺したのはアリシアだとギャングたちに情報を流したため、ギャングもアリシアを襲ってくる。マイロはアリシアと逃亡、後はギャングとマローンたち悪徳警官、アリシアらとの逃亡劇となる。

 

ところがアリシアを逃すためにマイロはダリウスに拉致されてしまう。アリシアは最後の手段で、カメラを取引手段としてダリウスらの団地に単身乗り込む。そしてダリウスはハッキングしてアリシアのカメラから真実の映像を確認するが、機動隊らを従えたマローンらがアリシアに迫ってきた。

 

マイロは最後の手段で警官に化けアリシアの映像を警察署でアップロードするべく団地を脱出、アリシアはマローンらと戦うことになる。そして間一髪、アップロードされた映像が署長に届き、アリシアの無罪が証明され、マローンは逮捕されて大団円。ダリウスらも銃撃戦の中で死んでしまう。

 

登場人物や小さな伏線がそこかしこで生かされた展開が見事で、ラストシーンが一気に解放される。黒人差別というメッセージも埋め込まれておるもののアクションが秀逸で、ちょうどいい感じに忍ばせた感じに仕上がったのが良かった。掘り出し物でした。

 

「#ハンド全力」

脚本も映画のできも普通という映画でしたが、こういうなんの飾り気もない素朴な映画を見ると、なんか映画っていいもんだななんて感じてしまう。そういう映画でした。監督は松居大悟。

 

熊本の仮設住宅に住むマサオは、これということもせず、進路も決められずのんびりと高校生活をしていたが、ある時、三年前やっていたハンドボールをしている自分の写真を少し加工してアップしたら、背後に仮設住宅が映っていたこともあり、いいねクリックがみるみる増えて驚く。そこで友達の岡本と協力し、#ハンド全力、と入力した上で、ハンドボールをしている様々な画像をアップし始める。

 

熊本の被災者の仮設住宅の生活の中でというイメージがどんどん拡散して、やがて#ハンド全力が全国規模で話題になる。そんな中、廃部寸前の男子ハンドボール部の島田がこれに目をつけ、マサオらもなんとか廃部脱出のため協力するようになる。テレビ局などからもオファーが来るし、義援金なども集まり始め、やがてメンバーも七人になり試合もできるようになる。

 

しかしマサオらには試合で勝つなどということではなく、SNSでの拡散こそが目指すものだと練習さえも特にしない。そんなマサオらに豪を煮やす女子ハンドボール部の面々。しかも他校と試合をしてぼろ負けになっても逆にマサオらのハンドボールチームは注目を浴び続ける。

 

ところが、ある時、マサオと岡本が最初にアップしたヤラセに近いハンドボールの動画のネタバレしたものがネットに投稿され、一転して炎上し、マサオらは非難の的にされてしまう。テレビ局も去り、義援金も中止される中、一人また一人と部員が去っていく。ネタバレ動画の投稿者、その動機など全く描かれてない手抜き脚本だが、そこは無視して前に進む。やがて一時はバラバラになりかけたメンバーも戻り始め、改めて試合に臨む彼らの姿で映画は終わる。

 

女子ハンドボール部員との小さなさりげない恋物語のようなエピソードも交え、ネットの中傷や熊本復興のエピソードなどもさりげなく挿入し、ラストは青春映画らしく締めくくる。なんの変哲もない映画ですが、こういうのもたまには良いかなという作品でした。