くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想ジョーンの秘密」「ハニーボーイ」

「ジョーンの秘密」

なるほど、こういう切り口もあるのだと感心しました。実在の人物をモチーフにしたフィクションですが、それを基にしたフィクションなので作る側の訴えかけてくるメッセージが強烈な作品でした。あとは好きか嫌いかですね。監督はトレバー・ナン。

 

時は西暦2000年、ウイリアム・ミッチェル卿が亡くなった記事を読んでいた老婦人ジョーンは突然MI5の訪問を受け逮捕される。容疑は秘密保護法違反、つまりスパイ容疑である。

 

時は第二次大戦頃、ケンブリッジ大学の学生時代のジョーンに移る。寮に、突然夜遊びで締め出されたソニアが窓から入ってくる。ソニアに誘われて行ったパーティでジョーンはソニアの弟だというレオと知り合う。まもなくしてジョーンは物理の研究をするマックス教授の元で働くようになるが、何とそこは原爆の開発を進める研究所だった。

 

ジョーンはレオと恋仲になっていくが、共産主義に傾倒するレオはジョーンが携わっている研究に興味を持ちつ。イギリスとソ連は情報を共有するはずだったが政府はソ連に研究情報を流す予定がないようだとわかる。一方アメリカではマンハッタン計画が進み原爆開発が進んでいく。

 

ジョーンとマックスはカナダの研究機関に招待され、五ヶ月の渡航をする。レオに愛想が尽きてきたジョーンはマックスと次第に不倫関係になっていく。カナダから帰ったジョーンらにアメリカが原爆開発に成功した報告が届きまもなくして広島に原爆が投下されたニュースがジョーンに届く。

 

レオからソ連への研究情報提供を求められながら躊躇していたジョーンは決心をしソニアに連絡をする。そして開発情報をソ連に流し始める。ジョーンとマックスの関係は続くが、まもなくしてソ連も原爆開発に成功する。そんな時、MI5はマックスを情報漏洩で逮捕する。ジョーンは口をつぐんでいたが、マックスに会いに行き自分が情報を提供していたとマックスに告白する。

 

ジョーンは政府の公職についているウイリアムに懇願し、マックスとジョーンをオーストラリアに逃すように依頼する。ウイリアムはジョーンに弱みを握られていたこともあり職権を使って二人に偽名のパスポートを渡しオーストラリアへ逃す。

 

時は2000年、ジョーンは取り調べの中次第に過去の自分を明らかにし、弁護士である息子のニックに弁護を依頼するが、国を裏切ったとニックは拒否する。何もかも失ったジョーンはかつてもらっていた毒針のついたペンダントを手にするが行為に及ばず、自宅前でマスコミの前で、自分のしたことは東西の均衡を生んで悲惨な戦争を回避せしめたのだと公言、傍にニックがやってきて、ジョーンを擁護して映画は幕を閉じる。

 

ジョーンのモデルになった人物はKGBのスパイであったことがテロップされる。つまり映画として描かれた主人公は明らかに製作側のメッセージを伝えるための架空の人物だったとわかる。果たして、この行為が平和を生んだのかはかなり偏った考えと思わなくもない物語で、それを客観的に受け入れるかどうかが評価を決めると思いました。

 

「ハニーボーイ」

凡作ではないし、それなりに映画的な描写を見せる面白い映画なのですが、あまりにも今更という内容で、しんどかった。監督はアルマ・ハレル。

 

青年となった主人公オーティスがアクションシーンの撮影をしている場面から映画は幕を開ける。そしてガールフレンドとドライブをしていて事故を起こすが飲酒運転でもあった彼は施設に収監される。子役時代から活躍していたオーティスの子供時代の撮影シーンに場面が移る。

 

不器用で子供に横柄な態度をするひょうきんものの父親ジェームズはオーティスのマネージャー的な役割をしていた。何かにつけて殴るジェームズに振り回されるオーティス。そんなオーティスを心配する保護観察館のトムや寝泊りしているモーテルに住む隣人の少女などが絡み、過去と現代をスイッチングしながら映画は展開していく。

 

息子への愛情表現がぎこちないジェームズだがオーティスを愛する心は負けていない。しかしそんなジェームズに溝を感じるオーティスは時に普通の生活に憧れ涙する。

 

現代のオーティスはそんな過去を振り返りながら、父が本当は寂しかったのかと感じ始める。ある時、鶏の後を追っていくとかつてのモーテルにつき、そこに道化の格好のジェームズがいた。オーティスはジェームズに駆け寄り抱き合う。映画はこの辺りで終わっていく。

 

ヒューマンドラマとしてじんわり感動すべきところだが、何とも分かり易すぎるくらいにシンプルすぎて、映像は面白いのに、どこか未完成感が見え隠れしてしまう。その未完成さが胸に迫る何かを生み出せなかった感じがしました。