くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ディック・ロングはなぜ死んだのか?」「ファヒム パリが見た奇跡」「ジェクシー!スマホを変えただけなのに」

「ディック・ロングはなぜ死んだのか?」

ここまで自由な発想でブッ飛んでしまえる監督の感性に脱帽してしまいます。ネタにこだわってしまうとこの映画の面白さはおそらくわからないだろうと思える一種の傑作かもしれません。面白いというか、この柔軟さに脱帽してしまいました。監督はダニエル・シャイナート

 

ジークとアール、ディックの三人はピンク・フロイド系の一昔前のロックバンドのグループを作っていて、この日も地下室で練習をしている。その場面から映画が始まり、ジークの妻リディア、娘のシンシアも楽しそうに接して、先に家に帰る。

 

そのあと、ジークらはハメを外そうと酒を飲んでふざけ始める。そしてカットが変わると、ジークの車でアールと二人必死で怪我をして血だらけのディックを病院へ連れて行こうとしている。しかし、そのままか担ぎ込めないからと病院の前に下ろし、ディックの免許証などを抜き取って放置する。

 

ディックは身元不明のまま病院へ担ぎ込まれるが、直腸破損の出血もあり死んでしまう。打撲跡もあるということで、殺人事件ではないかということで警察がやってくる。死体の直腸から精液が発見されたので、レイプの末に殺されたのではないかと推測されるが、調べてみると馬のものだと判明する。一方、ジークは早朝家に戻るが妻にシンシアを学校へ送ってくれと言われ、シンシアを車に乗せるが、途中のガソリンスタンドで、シートに染み込んでいたディックの血がシンシアの服についたことに気がつく。一方、たまたまシンシアが、ジークが持っていたディックの財布を、ジークが拾ったと言ったために、ガソリンスタンドに立ち寄った警官に届ける羽目になる。

 

ジークはアールに頼んでアールの車でシンシアを送ってもらい、ジークは自分の車を沼に沈めて盗まれたことにする。リディアはジークに聞いて警察に車の盗難を届けたので、警察がやってくる。しどろもどろになってくるジークの行動がこのあと延々と続く。このどうしようもない不甲斐なさでイライラさせて引っ張っていくが、一方でディックの妻ジェーンがディックが帰ってこないと探している姿も映画を面白くしていく。しかも、死んだディックの名前がリチャード・ロングが本名で、いつまでも警察が被害者の身元が見えないのがうまい。

 

ジークはリディアに詰め寄られ、次第に全てを白状せざるを得なくなったいき、真相を話す。それはディックが死んだのは元はと言えばコメットという馬にレイプされたからだという。しかも、ジークもアールも昔からコメットと関係を持っていたと白状する。リディアは激怒しジークを追い出す。

 

いくところもないジークは街を出る段取りをしているアールと街を出ようとする。最後にコメットに挨拶に行くジークだが、そこでジェーンと会う。ジェーンはディックの行方を探していたが、そんな時、盗難の車のことで警官がやってくる。リディアが迎え入れるが成り行きでジェーンとジークも同席することになる。まさかリチャードがディックと同一人物な上にジェーンの夫であることを知らない警官とリディア、ジークらのぎこちない会話が展開。しかしふとしたことでジェーンがリチャード、つまりディックの妻だとわかり事態は急展開、ジークはコメットを逃してやり、その場を逃げ出し、警官に捕まりそのまま逮捕される。

 

すべてがあきらかになるものの、ジークらを正当に逮捕することの意味がないと判断する警察署長はジークを保釈にしてしまう。ジークはリディアに別れを告げ、アールとバンドを再開するかに流れで映画は終わる。結局、何の罪もなかったのにうろたえてことを複雑にしたジークのコミカルなお話ということで、そのポイントの面白さが絶品の一本。ディックが死んだ原因に妙にこだわると視点がぼやけてしまうと思います。その意味で、吹っ飛んだ傑作だったかもしれない。

 

「ファヒム パリが見た奇跡」

実話なので、これはこれでいいのかと思うけれども、フランスは理解のある国だと言わんばかりのラストはいただけないし、一方で現実は移民に苦しめられているフランス国民を啓蒙するような展開はいかがかとも思う。まあ、そんな余計なことを考えなければ普通の映画だった。監督はピエール=フランソワ・マンタン=ラバール。

 

バングラデッシュ2011年に映画は始まり、路上でチェスをする主人公ファヒムが大人を負かせてしまうところから映画は始まる。父ヌラは消防隊の隊長らしいが、政府に反対をしているために睨まれ、息子ファヒムを拉致されかけたこともあるらしく、息子を守るためパリに行く決意をする。

 

まず難民としてパリに入り、定住権を得たら妻たちを呼ぶつもりで、ファヒムにはチェスマスターシルヴァンに合わせるという名目で二人でパリにやってくる。しかしヌラの仕事は見つからず、強制送還の日が迫る。一方、ファヒムはシルヴァンに認められ、彼のチェス教室で勉強し、フランス大会に出場する運びになっていく。

 

映画はファヒムが教室の友達と仲良くなり、大会に向けて成長していく姿と、ホームレスになりながらも必死で模索するヌラの姿を描く。そしてフランス大会の直前、父とホームレス同様に暮らすファヒムをシルヴァンが連れ戻し大会へ出場するが、ヌラはとうとう逮捕される。

 

ファヒムは決勝に進むものの、不法滞在者の優勝資格はないと思われた頃、シルヴァンの教室に事務員、マチルダが大統領に質問する番組に電話をし、難民に人権を与えることを約束させハッピーエンドとなる。まあ、一見ファヒムのシンデレラストーリーのようだが結局フランス大統領のプロパガンダに見えるのは深読みしすぎだろうか。素直な感動という印象にならなかった。

 

「ジェクシー!スマホを変えただけなのに」

これは面白かった。人間的な嫉妬に狂っていくスマホのジェクシーと主人公フィルの掛け合いの面白さがとにかく最高で、次はどうなるのかワクワクして見ていくのですが、ラストに処理が少し甘かったのは残念。最後は一捻り欲しかったです。監督はジョン・ルーカスとスコット・ムーア。

 

スマホ依存に近い主人公フィルは、たまたま街で自転車店を営むケイトと接触スマホを落とす一方でケイトに一目惚れしてしまう。ところがスマホを拾い上げたものに目の前を走り抜けた男に落とされ壊れてしまう。仕方なく最新機種を手に入れたフィルだが、AIアプリジェクシーがあまりにも人間らしく、ハマってしまう。

 

何かにつけて引っ込み思案だったフィルはジェクシーの勢いにどんどん積極的な生活に変わり、ケイトも手に入れ、友達もでき、最後は行きたい部署にまで出世してしまう。ところが、ケイトとどんどんうまくいくフィルに嫉妬したジェクシーは、ケイトの元彼をうまくケイトに再会させ、ケイトとの仲を取り持つ。さらに会社にもフィルのバカな写真をばらまき首にしてしまう。

 

何もかも失うフィルだが、友達はジェクシーだと仲を取り戻す。しかしケイトを忘れられないフィルはケイトのところに乗り込む。そして元彼の誘いでブラジルに行くケイトを止めようとするが、何とケイトはフィルと一緒に暮らすことを望んでいた。

 

思わぬ展開にジェクシーも落胆する一方で、自分がふられたことを受け入れ、フィルを応援する言葉を残して去っていく。ここのあっさり感がちょっと物足りなくて、ここにもう一工夫あれば最高だった気がします。でも、フィルとジェクシーの別れの場面はちょっとジンときたし、エンドクレジットで、次にジェクシーが届いたのはフィルの上司の元だったとおうオチも笑えて、楽しかった。気楽に笑えるちょっとした佳作という仕上がりの一本でした。