くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「おかしな奴」「凱里ブルース」

「おかしな奴」

昭和初期に活躍した実在の落語家三遊亭歌笑の半生を描いた作品で、全体が丁寧に物語を追っていく一方で、芸達者が繰り広げる落語の世界も面白い逸品でした。監督は沢島忠

 

子供の頃から顔立ちがユニークでみんなから馬鹿にされて大きくなった主人公は、子供の頃から落語が好きで、そのまま大人になる。しかし徴兵検査では生まれながらの近視で丙種になり家族からも疎まれる。そんな主人公は東京へ出て落語家になることを決心し、単身東京へ向かう。

 

なんとか弟子入りできた金楽師匠の元で芸を磨いていくのが前半となる。弟子同士の確執や可愛がってくれた兄弟子の死、結婚などの人生を描くも、寄席でのトラブルから寄席出入りを禁止される。時は第二次大戦も終わり、ラジオで人気が出て、歌笑の名前で人気を博すも、古典的な落語界からは疎まれる。しかし、その人気はどんどん上がる一方で、金楽師匠の口利きもあり、寄席へ戻れるようになる。そして真打となって落語会に復帰するが、後援会に呼ばれて出かける途中で交通事故にあい、呆気なく死んでしまう。

一人の芸人の半生という普通の作品ながら、テンポ良い展開はなかなか面白い作品でした。

 

「凱里ブルース」

話題になるだけのある作品。小品ではあるけれども、中国の農村の閉鎖された空間、四十分の長回しにもかかわらず組み立てられたリズム感の面白さに引き込まれていきます。監督はビー・ガン。

 

主人公シェンが刑期を終えて凱里の村に帰ってくる。しかし妻はすでに亡く、可愛がっていた甥は、弟によって遠方に売られていた。シェンは甥を引き受けるべく旅に出る。そしてダンマイという村につくのだが、時間が遡るのか心の思い出がかぶるのか不思議な世界がシェンを引き込んでいく。そして甥を引き受けようと学校へ行くが、新学期にまた来いと言われ、再び汽車に乗る。

 

甥を向かいにいくためにバイクに乗せてもらい延々と進む長回しシーンが素晴らしく、次々とシーンや人物を入れ替えながらもカメラは途切れることはない。にもかかわらず映像のリズムが静かに展開していくのだからこれは映像感性の良さと思わざるを得ません。

シンプルな物語を幻想的にしかも鋭い映像感性で綴っていく表現の素晴らしさに魅了されてしまう作品でした。