「ポネット」
シンプルでピュアな詩篇のようなファンタジックな映画でした。映画としてずば抜けて優れた出来栄えに見えないのですが、淡々と綴っていく一人の少女の全くの澱みのない物語は胸を打たれます。監督はジャック・ドワイヨン。
一人の少女のポネットが病院のベッドで横たわっている。手にギブスがつけられていて、傍の父親の言葉で、どうやら母と車に乗っていて事故を起こし怪我をしたようです。母も大怪我をしたと説明されるが、病院からの帰り道、父に、母は亡くなったと知らされるポネット。しかし、わかったのかわからないままに泣くポネット。
父が仕事で留守になる間、いとこのところに預けられたポネットは従姉妹たちと遊びながらも、母への思いが立ちきれず、小さな礼拝堂に行って神様の像に母と話したいとお願いしたりを繰り返す。さらに、勉強の間も仮病を使ってベッドに戻り、壁に向かって神様にお祈りしたりする。
そしてとうとう、一人で母の墓のところへ行き、埋められた土の上で泣き伏せるポネットの前に、母親が昔のままの姿で現れる。そして、ポネットに真っ赤なセーターを着せてやり、いろいろな話をして、父親と楽しく過ごしてほしいと言う。気がつくと、母はポネットの前から姿を消していた。そこへ父が迎えに来て二人は車で去って映画は終わる。
本当に何の余計な描写もセリフもなく、シンプルに子供同士の会話とポネットの直向きな思いだけが描かれてラストへつながる。これだけのドラマを一本の映画にまとめられていると言うこと自体が見事な仕上がりなのかもしれません。
「現在地はいづくなりや 映画監督東陽一」
東陽一監督の語るドキュメンタリー。なかなかこの映画は面白かった。東陽一監督がかつて起用した女優さんを交えたり、スタッフの方々と自身の映画の考え方などを話す内容が楽しい。この監督の作品は全部見れていませんが、機会があれば埋めていきたいと思います。楽しいひと時が過ごせました。監督は小玉憲一。