くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「甘いお酒でうがい」「マティアス&マキシム」

「甘いお酒でうがい」

小品ですがちょっと素敵なハッピーになれる映画でした。若林ちゃんを演じた黒木華が抜群に良くて、彼女が映画のレベルを上げた感じです。映画館を出る時笑みが溢れてました。監督は大九明子

 

主人公佳子が出社するのに靴を履いている場面から映画は始まります。40代独身で働く彼女が、つけている日記を語るという形式で物語が進んでいきます。

 

大事にしている自転車に話しかけたり、ワインに語ってみたりする彼女には会社の後輩でやたらテンションの高い若林ちゃんという友達がいます。というか唯一の友達という感じで、給料日には飲みに行き、誕生日はお祝いをしてくれる陽気な彼女。この若林ちゃんのコミカルなキャラクターがとっても素敵で、彼女の登場シーンを待ってしまいます。

 

ある時、佳子は一人の青年に街で会釈されます。誰かわからなかったのですが、なぜか佳子は気になってしまいます。実は彼は若林ちゃんの大学の後輩で、岡本くんと言いました。そして、若林ちゃんを加えて三人で食事したり遊びにいったりしますが、どうやら若林ちゃんは岡本くんを佳子に紹介しようとしていた様でした。

 

そして、いつの間にか佳子と岡本くんは付き合い始め、若林ちゃんも大喜びする。淡々と語られる物語ですが、次第に幸せを実感していく佳子。そして、佳子の誕生日、若林ちゃんは一年前の約束だからと佳子と岡本くんを食事に誘う。ミラーのサングラスをしてきた若林ちゃんのサングラスに、幸せで思わず涙ぐむ佳子が映り、若林ちゃんもメガネの奥で涙ぐむ。こうして映画は終わっていきます。

 

みんな幸せ、みんなとっても素敵な人たち、たわいないけど、ハッピーになって劇場を出ることができました。いい映画見たなぁ。

 

「マティアス&マキシム」

監督がグザビエ・ドランなので見に来た。ゲイの映画は基本的に嫌いだが、グザビエ・ドランの映像センスは流石に認めざるを得ない。今回も、センスの良い選曲とそれに合わせるかの様にテンポを乗せる絵作りのうまさを堪能できた。ただ、人物描写が、プラトニックな心理描写を強調しすぎたのかストーリー全体がやや混沌として、ラストの鮮やかさがもう一歩光切らなかったのは残念。正直、マットのクローズアップの煮え切らない行動にイラついてしまいました。

 

マットとマックスは親友同士で、マットは婚約もして、父は弁護士事務所を営んでいる。マックスの母は、精神的に病んでいて、成年後見人となってマックスが面倒を見ているが、オーストラリアへ行くことになり、叔母を新しい後見人にして準備を進めていた。一方マットの父に推薦状をもらう準備もしていた。

 

マックスが旅立つのが三週間に迫った頃、マックスらは友人と湖に遊びに行くが、そこで、マックスとマットは友人の妹サラの短編映画に出ることになる。その映画で二人は濃厚なキスシーンをするのだが、それをきっかけに二人の間に微妙な感情が生まれる。

 

婚約者もいるマットは戸惑う一方で、感情が抑えきれず次第に苛立つ様になる。そして周囲に当たったり、余計な動揺を見せて不快にさせることもしばしばになる。さらに、仕事も忙しくなってくる。

 

マックスの送別会のパーティで、マットは抑えきれない思いをマックスにぶつけ、部屋に鍵をかけて、抱き合うが、一線を越え切らないままに別れる。そして、マックスの出発の日がやってくるが、あの日から二人は会うこともなくなっていた。

 

マットの推薦状を待つマックスは、出発が迫った日に、マットの父の事務所に問い合わせると、すでに三週間前にマットに送ったと回答され、マックスのメールに再度送ってくれる様に依頼する。

 

荷造りを終えたマックスが外に出ると、友人のフランクが車で迎えてくれ、その先にマットがにこやかに待っていた。映画はここで終わる。マットの思いは、ひと時の心の揺れ動き、親友を旅立たせる寂しさから生まれた感情なのか、それとも真実の愛情だったのか、その微妙な描写が何ともピュアであるが、監督がグザビエ・ドランなので、男同士の恋愛感情が生まれたというラストでいいのだろう。

 

二人が初めて部屋で抱き合う場面を窓の外から映し、雨が降ってきて、慌てる友人たちが、離れた部屋から飛び出してくるシーンや、オープニング、音楽に合わせて道路の黄色の平行線を追いかけていく映像など、流石にセンスのいい映画作りです。好きな話ではないものの、映像の素晴らしさは楽しむことができました。