くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「魂のジュリエッタ」「エマ、愛の罠」

魂のジュリエッタ」(4Kリマスター版)

監督はフェデリコ・フェリーニ。ということなので、全編カーニバルです。ストーリーは、夫の不倫疑惑に悩む主人公ジュリエッタの幻想とも現実とも言えない心の揺れ動きが、独創的、万華鏡のような映像の氾濫で描かれていくニ時間あまり。目眩く陶酔感に襲われながらも、次は何だろうとワクワクし始めている自分を見つける作品、やはり楽しい。いい格好してわかりましたとは言いません。また見たくなる一本でした。

 

主人公ジュリエッタが、今夜の結婚記念日にサプライズパーティーを企画して準備している。向こうを向いたままの彼女の姿から色とりどりの衣装を身につけて現れ、灯を消して待つところへ夫が帰ってくる。そして、迎えたのだが夫はどこか醒めている。それでも賑やかを装うのだが、ベッドの中で、夫は女性の名前ガブリエッタを寝言に2回言う。ジュリエッタが尋ねても知らないと言う。

 

ジュリエッタはどんどん疑心暗鬼になり、いつに間にか幻想の世界が彼女の周りに現れてくる。あとはもう、絢爛たる映像世界が次々とスクリーンを覆い、所々に、彼女が夫の調査をした結果や、ジュリエッタの過去、結婚式の時、近所の人たちとの付き合いが挿入されるが、それも現実かどうかわからない映像である。

 

そして、とうとう夫が長期の出張をするという。送り出すジュリエッタの周りには絶望から生み出された不気味な人たちがジュリエッタに襲いかかる。しかし、それを跳ね除け、全てが幻覚として消えて行った先には、一人残った彼女にどこかさっぱりした何もない現実が現れて映画は終わる。果たして本当にガブリエッタという不倫相手はいたのか、それもジュリエッタの不安から生まれた幻覚かもしれない。

 

解釈はこれでいいのだと思うのですが、何度も見直したいくせになる作品ですね。さすがにフェリーニの魅力満載の一本でした。

 

「エマ、愛の罠」

第三国が作る賞狙いの映画にしか見えなかったのは私だけでしょうか。倫理とか道徳とかはそっちのけにして、それを自由奔放という一括りにした上で、突拍子もない物語設定にして作品にした感じの映画で、確かにクオリティは高いですが、嫌いな作品でした。監督はパブロ・ラライン

 

信号機が燃えている。カメラが引くと火炎放射器を持つ女のカットから物語は本編へ。一人の女エマが福祉局の女らしい人物を捕まえ、息子のポロの消息を聞いている。しかし、福祉局の女は取り合わない。背景に太陽のようなものがセットされた舞台でシュールなダンスを繰り返す集団のシーンが挿入されながら、主人公エマの状況が描かれていく。

 

エマには子供が作れない夫ガストンがいる。ガストンはダンスパフォーマンスの演出担当らしい。二人の間にポロという少年を養子にしたが、結局、手放さざるを得なくなったようで、その行き先がわからない。エマとガストンの関係もギクシャクしていて、エマは新しい恋人を探している。

 

ダンサー仲間と火炎放射器を手に入れ、エマはことあるごとに夜の街で火をつけている。どうやら、ポロも遊び半分に放火をし、エマの姉に火傷させたようだ。エマが車を燃やした時にやってきた消防士アニバルは夜はバーテンをしていて、エマは猛アタックして関係を持ってしまう。さらにアニバルの妻にも関係を持ち、さらにダンサーの友達とも関係を持つという自由奔放というより見境のない行動を続けていく。一方、ガストンとの関係も付かず離れずの関係を続ける。

 

時折挿入される集団ダンスシーンが素晴らしいのと、夜景などを背景にした陰影の絵作りがなかなか見応えがあるし、エマを演じたマリアーナ・ディ・ジローラモが抜群に美しいのとダンスが上手いので見入ってしまいます。

 

そして、アニバル、ガストン、そのほか関係を持った男女とSEXを何度も繰り返すシーンの後、エマは、子供にダンスを教えるためにある学校の面接を受け、合格する。そして授業の初日、教室に行くとそこにポロがいた。エマはポロを連れて教室を出て散髪を受けさせる。そこへやってくるガストン。三人はポロを家に送っていくが、何とポロの養親とはアニバル夫婦だった。しかも、エマは妊娠しているとそこで告げる。ガストンは不能者なので、アニバルの子供ということになる。なんと、全てエマの仕組んだ計画だった。

 

こうしてアニバル夫婦とポロ、ガストン、エマで暮らすようになり、赤ん坊も生まれる。エマがガソリンスタンドでガソリンタンクに給油してもらっているシーンで映画は終わる。

 

ラストの真相暴露のシーンはさすがに、こんな話を作るかというレベルの展開で、国柄としてこういう倫理外の物語に抵抗がないのかと思えなくもないけれど、賞狙いに見えるのがどうもいただけない映画だった。