「セルギー神父」
一人の人間の、自分に課した罪深さをひたすら追い求める物語で、淡々と流れる中に潜む力強さが魅力の作品でした。監督はイーゴリー・タランキン。
一人の老神父が船着場で神の存在の問いかけ問答をしている。カットが変わり、ロシア皇帝が出席する豪華な舞踏会のシーンから映画は始まります。女癖の悪い皇帝は一人の女性メリーに手を出し、メリーは思わず身を委ねてしまう。それを知った恋人で近衛士官のカサツキーは、かねてからの自尊心の強さも相まって、修道院に入り隠匿生活をはじめ、セルギー神父の名を与えられる。
全ての欲を捨てて、修行のため隠匿生活を続けるセルギー神父は、地元の人たちから聖人と崇められ、国中に噂は広まっていく。しかしある時、地主の娘の誘惑に落ちてしまう。行き場を失ったセルギー神父はパーシャという一人に娘を訪ねる。彼女が慎ましやかに生活する姿を見て、再び旅に出る。
年老いたセルギー神父は、船着場で人々が過ごす様子を静かに見つめ一人何処かへ消えていって映画は終わる。淡々と流れる作品ですが、主人公セルギー神父の人柄と胸に秘めた力強さが画面から滲み出てくる映画で、なかなか見応えのある作品でした。
「ワーテルロー」
「戦争と平和」もものすごい物量映画だったが、負けず劣らずの溢れんばかりの物量に圧倒される作品でした。とにかく後半クライマックスのワーテルローの戦場シーンのものすごさといったらありません。しかも、物語の構成もしっかりしていてドラマ性も十分に練られている。なかなかの逸品でした。とにかくすごい映画でした。監督はセルゲイ・ボンダリチュク。
1812年、ロシア遠征に失敗し敗北したナポレオンが、ネイ将軍らによって皇帝退位を迫られる場面から映画は幕を開ける。渋々サインしたナポレオンは千人ほどの兵士を連れてエルバ島へ追放される。しかしまもなくして、兵士とともに島を脱出したナポレオンはフランスに帰ってくる。迎え撃つために向かったのはネイ将軍ら。ところが、ナポレオンは、再びフランスの栄光を取り戻そうとネイ将軍らの軍隊を引き込み、フランス国民の大歓迎の中、再度皇帝となる。
そんなナポレオンに、英国の指揮官ウェリントン卿は、プロシア軍と共同し、ナポレオン軍を迎え撃つ。場所はワーテルロー。時は1815年、15万の兵が集結した一大決戦の火蓋が下される。とにかく物量がすごい。遥か彼方に広がる人人人、馬馬馬。そして大砲の火炎や煙、群衆の叫び。とにかく、恐ろしいほどの物量に圧倒されるのである。
カメラワークも自由自在で、俯瞰のみでなく、大移動、クローズアップから空撮まで、所狭しと動いても、どこかしこにも人や馬が溢れかえっている。そして、ナポレオン軍が勝利したかに思われた時、プロシア軍が駆けつけ形成は一転、ウェリントン卿の軍隊は一気に勝利を収める。しかし、無惨に死んでいく兵士たちを見ながら戦争の虚しさを思い知るウェリントン卿の姿、そして、命かながら逃げるナポレオンの場面で映画は終わっていく。
あまりに物量が物凄過ぎて、余計に戦争の後の虚しさが伝わってくる。オープニングからのストーリー構成もテンポよく、非常によくできた作品だと思います。さすがソ連映画全盛期の一本ですね。圧倒です。
「祖国のために」
なんともダラダラした映画だった。話があっちこっちに飛ぶ上に、それぞれでやたら会話劇が展開する。戦闘シーンではちょっと、目を引くような演出や編集カットもあったのですが、特に終盤は完全にプロパガンダ的な展開になってしつこいほどの場面が続いて終わった。監督はセルゲイ・ボンダリチュク。
第二次大戦下、ドイツとの戦闘に苦戦しているようで、ソ連軍の兵士たちが意気消沈して行軍している場面から映画は始まる。とある村にたどり着いたが、そこを死守せよという命令が下り、兵士たちはそれぞれ塹壕を掘る。掘っている中で、ドイツ軍が攻撃してくる幻想を描いたりちょっとシュールな展開も見え隠れする。
そしてドイツ軍の爆撃機が襲いかかり、ソ連兵も善戦するものの次々と倒れていく。さらに戦車も襲ってきて、どう見ても苦戦しているようなのだが、なぜかドイツ軍は引き上げたらしい。そして、また行軍をはじめ、司令部があるらしいところへと向かうのだが、ここからとにかく時間を引き延ばしているのかと思うほど、あちこちの兵士のエピソードがダラダラ続く。そして、ソ連軍がスターリングラードへ向かっているのを見下ろすショット、ソ連は負けない的な映像のカットでエンディング。
確かに長い作品なのだが、物語もダラダラしていて相当にしんどかった。