くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「男はつらいよ 知床慕情」「シカゴ7裁判」

男はつらいよ 知床慕情」

これは素直にいい映画でした。寅さんが脇によった作品はいいものが多いです。全盛期の竹下景子が抜群に可愛らしいし、老年の三船敏郎の存在感もしっかり出ていて映画が締まっていた感じです。監督は山田洋次

 

とらやの主人が入院しているところから映画が始まり、例によって寅さんが帰ってきてひと騒動、そして寅さんはいつものようにすねて旅立って北海道へ行く。そこで、偏屈の老獣医師の上野と知り合う。上野の娘りん子は駆け落ちして東京へ行ったまま、妻は十年前に他界し、近所の料理屋の悦子が世話をしにきている。そんなところで寅さんはすっかり地元に馴染んで過ごしているところへ、離婚したりん子が帰ってくる。

 

一方、上野は悦子に惚れているがなかなか言い出せず、悦子は知床の街を去ると言い出す。そこを取り持った虎さんが上野に悦子へ告白させ、ハッピーな展開へ。一方で、りん子に惚れている寅さんだが、自分は結局言い出せず知床を去ることにする。

 

父のことで世話になったりん子はとらやにやってきてお礼を言い、そこに長良川にいるという寅さんの手紙が来てエンディング。まあ、よくある展開を程よくまとめた演出と、ワンパターンながらも少し練り込んだ脚本が功を奏した仕上がりになった作品でした。

 

「シカゴ7裁判」

素直に楽しめる作品ですが、ラストに向かっていかない展開は結局こういうことなのかと思わせられた。ただ、Netflix配信ドラマだと割り切れば、それはそれでよくできた映像作品だし、きっちりと整理された脚本も上手いと思います。監督はアーロン・ソーキン

 

七人の暴動教唆の容疑で逮捕された人たちの姿から、彼らがいかにこの状況になったのか、そして彼らの背景を細かいカットで描いていく。一瞬混乱しそうになるが、実にうまく整理されているので、次第に物語の全体が見えてくる。時は1968年、ベトナム戦争への非難が高まり、さらにジョンソン大統領からニクソン大統領に代わり、さらに激しさを増してきた時代。次々とベトナム戦争の犠牲者が出てきているニュース映像が被って行く。

 

1968年シカゴで行われた民主党の大会で、ベトナム戦争に反対する民衆などが集まる。平和理な展開のはずだったが、ふとしたことから暴動になりさらに警察官らの反撃もあって、多数の怪我人が出る惨事になってしまう。そしてその暴動の首謀者としてトム・ヘイデン、アビー・ホフマンらが逮捕される。

 

政府側は、首謀者として逮捕した七人を有罪にすべく、陪審員の買収や脅迫、さらに検察側にも圧力をかけた裁判となる。しかも、黒人差別に偏見のあるジョン・ミッチェル判事は7人の審理に殺人容疑の黒人を誰の代理人も入れずに同席させる。極端な裁判にトムらも呆れるが、逮捕されたことに変わりはないと論ずるトムは、他の六人にも反抗的な態度は控えたほうが良いと意見する。

 

そして審理は続くが、判事の横暴的な態度がさらにエスカレートして行く。そして、判決の日、被告側代表としてトムが最終陳述をすることになる。手短に、反省を述べよという判事の言葉に、トムは五千人に及ぶベトナム戦争の犠牲者の名前を語り始め、場内の喝采を浴びながら映画は終わる。確かにラストは爽快だが、結局七人は暴動の首謀者としては罰せられるので、ラストシーンを描くためだけに見えなくもない。ただ、途中の展開は確かに面白いし、欠点はあるもののしっかりできた作品だと思います。