くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「鬼ガール!!」「小説の神様 君としか描けない物語」

「鬼ガール!!」

なんともだるい映画で、早く終われ早く終われと前半ひたすら願っているのですが、クライマックスの舞台と映画のシーンになると、それだけがやたら面白い。どうせならもっとコンパクトに作れば良かったと思える。ただ、ドローンを振り回した下手くそなカメラワークはこの監督のセンスの乏しさを露呈することになり、まあ、素人に毛の生えたローカル映画という感じでした。監督は瀧川元気。

 

奥河内、鬼族の末裔で、油断すると頭に角が生えてしまう主人公のももかは、憧れの女子高生となる。そこで憧れのイケメン先輩と出会ったり、幼なじみと再会したりと青春真只中に放り込まれるが、やはり、鬼であることが明かせない。

 

そんな時、映画部で映画を作る話が持ち上がる。ももかの部屋にあった幻の脚本が出てきたためだ。幼馴染の漣を監督に、岬先輩をヒーローにももかをヒロインとして、連鎖ドラマの撮影がスタート。

 

そして無事完成したが、蓮はどこか物足りなさを感じていた。そして無事終演かと思われた時、ももかは隠していた角を出して、蓮に告白し、蓮もももかの気持ちに応えてハッピーエンド。まあ、たわいないのだが、クライマックスの、映画と舞台、生演奏をコラボしたイベントがなかなか面白いので、なんとか救われた感じです。ただ、ドローン撮影を意味もなく多用する映像作り、登場人物の心理描写が全くなされていない演出はさすがに素人に近いレベルで、映画全体のレベルを思い切り下げていました。まあ、ローカル映画の典型的な仕上がりでした。

 

小説の神様 君としか描けない物語」

薄っぺらい青春映画だろうとたかを括って、万が一つまらなくても橋本環奈見れるからいいや程度で見に行ったが、これがまた物凄く良かった。掘り出し物でした。映画がリズムに乗り切っているというか、とっても心地よい展開をして行く。もちろん、あざといところもあるのですがそこを音楽でカバーして行くテンポの良さが爽やかな映画でした。もちろん、橋本環奈は可愛かったけれど。監督は久保茂昭

 

モノクロームの映像から映画が始まる。1人の高校生千谷一夜は、中学の頃に描いた小説が絶賛され、そのままプロの作家になったものの二作目が酷評され、それ以来筆が進んでいない。この日も編集者に見せた原稿に芳しい返事がなく悩んでいた。そんな彼は部長1人の文芸部に誘われる。しかし、そこで、小説について小馬鹿にしたような悪態をついているところへ一人の女子高生小余綾詩凪が現れ、ビンタされる。実は彼女は売れっ子作家の女子高生小説家だった。

 

ある時、編集者のアドバイスで一夜は共作を勧められ、やってきたのは詩凪だった。詩凪がプロットを考え、一夜が文章にするという作業が始まる。今まで全くかけなかった一夜に光が見え始める。物語は、一夜、詩凪、そして新しく文芸部に入った小説好きの成瀬綾乃、そして部長の九ノ里正樹という四つのエピソードで進むが、中心は一夜と詩凪の物語である。

 

一夜は詩凪の考えるプロットでどんどん書き進めていき、かつての第一作の続編にも手をつけられるようになる。そして完成した続編を編集部へ持っていったが、一時は受け取られたものの、編集会議で却下されたと返却されてくる。落ち込んだ一夜は小説を書くことをやめることを決心、共作も頓挫することになるが、そんな時、論文のテストをしている時に詩凪が突然手が震えて倒れてしまう。実は詩凪はここ一年、文字が書けなくなっていた。ネットの誹謗中傷が続き、自分の好きな作家のファンの方からのメッセージにショックを受けて書けなくなっていたのだ。

 

しかし、一夜は正樹の懸命の説得、そして詩凪のことも知っていた上で2人を助けようとしてくれたことに心を打たれ、詩凪に連絡を取る。落ち込んで塞ぎ込んでいた詩凪だが、一夜の気持ちが伝わり、共作の最終章へと向かって行く。そして最後の最後のセリフは詩凪が書く。彼女も復活した。

 

こうして映画は終わっていきますが、一見、ガキの稚拙な物語に見える映画なのですが、役者たちが一生懸命演じている熱さが伝わってくる上に、背後に終始流れる楽曲のリズムに物語がうまく乗せられていく演出が実に的をいていてうまい。しかも、脚本もいいのかしっかりしたメッセージも伝わってきます。大傑作とは行かないまでも、なかなか爽やかな青春映画の佳作という出来栄えでした。