くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「空に住む」「ストレイ・ドッグ」

「空に住む」

これはいい映画でした。青山真治監督7年ぶりの新作でしたが、とっても素敵で不思議な感じで心に染み入ってくる作品でした。

 

主人公直美がタワーマンションにやってくるところから映画は始まる。両親を交通事故で亡くし、父の弟雅博の投資用のタワーマンションに管理人として住めることになったのだ。39階からの眺めが広がる部屋で、愛猫ハルと一緒に暮らすようになる。直美は、日本家屋を事務所にする小さな出版社に勤めていて、親しい後輩愛子とそれなりの日々を暮らしている。文学賞を取った吉田理の子供をお腹に宿している愛子はフィアンセに隠して結婚を間近に控えている。

 

そんな直美は、ある時マンションのエレベーターで、人気俳優の時戸森則と出会う。人懐っこい森則と急速に親しくなる直美だが、どこか覚めた空気感が消えない。直美は両親の葬儀で涙を流せなかったことに不思議な感覚を持っていた。

 

雅博と妻の明日子は、気さくすぎて、遠慮なく直美の部屋に出入りする。森則と直美は次第に親しくなり、体を合わせるがそこに恋愛感情は見えない。たまたま、遊びに来た愛子を見た森則は、妊娠している女性は不気味だという。さらに部屋で直美と二人の時に、明日子が勝ってにドアを開けておかずを置いていったのを見て、森則は、直美のところに来なくなる。

 

そんな時、ハルに病気が見つかり。悪性リンパ腫で、命が危ういという医師。直美はハルに余計なストレスを与えたにではないかと、必死で看病するが、まもなくしてハルは死んでしまう。直美は以前森則に提案した森則の哲学を本にすることを決意し取材を申し込む。そして最後に直美は森則と体を合わせ、ハルの亡骸を火葬してやる。

 

出版社で、森則の哲学の本を吉田理に頼むことを承諾させた直美のところに愛子から電話がかかる。破水したという。今産むとフィアンセに吉田との子供だとバレると叫ぶ愛子を諭して病院へ連れて行き、無事女の子を出産させる。

 

森則は、吉田理の小説を読みながらロケ先に向かっている。吉田理は直美の取材記事を使って執筆している。家に戻った直美は、眼下に広がる景色を見ながら伸びをする。雅博夫妻がやってくるが、直美は出ないので留守だろうと帰って行く。こうして映画は終わる。

いい空気感、いい雰囲気、夢のような現実のような不思議な印象を与えられる上品な映画だった。

 

「ストレイ・ドッグ」

暗い上に陰惨、しかもニコール・キッドマンやりすぎで、物語は面白いのに、爽快感というか、息つく隙間がないというか、なんとも言えない作品だった。監督はカリン・クサマ

 

車の中で一人のFBI捜査官エリンが疲れ果てた顔で座っている。そばでスケボーをしている少年たち。おもむろに降りたエリンは堤防沿いのところで起こった殺人事件らしい死体のところへフラフラ行き、そのまままた車に戻る。カットが変わり、捜査室に一通の封書がエリンの元に届く。中に入っていたのは紫に染まった一ドル札。それは17年前に起こった銀行強盗事件に関連するもの。しかもその時の主犯サイラスが出所してきたことを知る。

 

17年前、エリンは捜査官のクリスと共にサイラスの組織に潜入し、彼らを逮捕する予定だった。しかしその時の失敗でその罪悪感から殺伐とした生活を送り、一人娘シェルビーにも疎まれていた。エリンは、その事件の決着をつけるべく、そして愛していたクリスに仇を討つためサイラスの行方を追う。

 

映画は、エリンがサイラスにたどり着くまでの展開、娘シェルビーとのドラマ、そして17年前の事件が交錯して描かれて行く。そして、サイラスらが再度銀行強盗を働く場面に遭遇したエリンは、負傷しながらもその仲間の女を追い詰め、サイラスと対決する場所を決める。実は17年前、クリスとエリンは、サイラスの組織で銀行強盗に加わった。当初は、寸前で逮捕するつもりだったが、エリンは正反対の人生を選びたいと、愛し始めたクリスと銀行強盗に加わる。ただ、万が一予測外の事態が起こったら、素性を明かして逮捕する予定だった。

 

なんとか無事、金を奪ったかに思われた矢先、逃亡阻止の紫の煙が一人の男の鞄で爆発、起こったその男は従業員を撃ち殺そうと銀行へ再度入る。それを追ってクリスが一人で突入、逆に撃たれてしまう。エリンはそのまま金を持って逃亡した。しかし、隠していた金を見たら、表と裏だけの札束で、大金ではなかった。エリンはシェルビーが付き合っているチンピラのような若者にその金を渡すことを条件にシェルビーを解放し、サイラスとの対決に向かう。

 

堤防岸で待っていたサイラスをエリンは撃ち殺す。そして冒頭のシーン。堤防岸で死んでいたのはサイラスだった。エリンは相棒にことの真相を記した封筒を渡し、車の中で息を引き取って映画は終わる。流石に暗いですね。しかもニコール・キッドマン一人舞台と言わんばかりのカメラワークが相当にくどいです。面白い話なのに、ちょっとやりすぎですね。