くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ザ・ハント」「罪の声」「きみの瞳が問いかけている」

「ザ・ハント」

少々グロいけれどかなり面白い。テンポのいい演出と抜群の脚本の組み立ての妙味、そしてこの手のB級ホラーアクションらしいいかにもな知的なセンス。この融合にすっかり引き込まれた。面白かった。監督はクレイグ・ゾベル。

 

一人の女性が背中向きに座り、テッドと呼ぶ男からのメールのやりとりが行われる。カットが変わるとプライベートジェットのような飛行機の中、一人の男がキャビンアテンダントから軽食を聞かれている。何十万ドルもするシャンパンを頼まれて、置いてないと答え、キャビはいかがとキャビンアテンダントに聞かれて、きみは食べたことがあるのかと問い返される。そこへ大男が現れる。そして大男が暴れるので、テッドという医師がやってきてキャビンアテンダントからペンを受け取り、それで突き刺して殺す。

 

大男は片付けられ、その部屋にもう一人の女が寝ていてジャンプカットしたらその女は鍵のついた猿轡をはめられてどこかの森の中へ。やがて、草原中央に置いてある箱を誰かが開けると豚が出てきて、武器がたくさん置いてある。蓋の裏の鍵で猿轡を外すが、一人が突然撃たれるので、皆武器を持って構える。こいつが主人公かと思ったら撃たれたり爆死したりする。そして最初の女を含めて三人が柵の外へ脱出する。どうやらマナーゲートという都市伝説のハントゲームに放り込まれたらしいという。

 

三人は道端のドラッグストアへ。気の良さそうな老夫婦が迎えるが、店のものを食べた女が突然死に、気がつくと老夫婦はガスマスクをつけていて、ガスが撒かれ、さらにショットガンで残り二人も殺される。そして死体を片付けているところへ無線が入る。スノーボールという女が向かったという。そこに現れたのがクリステルという女、ハント側からスノーボールと呼ばれている女である。クリステルは、店に入り、老夫婦を敵と見破ってショットガンで殺す。

 

外に出ると一人の男がやってくる。ドンと名乗るその男は味方らしく二人で逃げる。そしてやってきた列車に乗るが、軍に止められる。列車の中には難民がいる。軍の難民キャンプに連れて行かれたクリステルとドンは、難民の一人も敵側だった。そこへ大使館員が迎えにくる。二人は乗るが、この大使館員も敵で、クリステルが見破って、車を奪って脱出。当初箱が置いてあったところへ。

 

その地下にはハンター達が集まりクリステルらを殺そうとしている。そこへ、クリステルとドンが突入し、全員倒すが、そこに無線が入り、ドンへの指示。ドンも敵かと思わせる内容で、クロステルはドンを撃つ。そして息も絶え絶えな軍事指導の男から、首謀者アシーナの館への道を聞いて、クリステルは一人で突入。

 

あとは女同士の肉弾戦。ひたすら暴れて、同士討ちのようになって倒れ、アシーナは息を引き取る前に、クリステルは人違いだったことを知り死んでしまう。クリステルはアシーナのドレスを着て、庭のプライベートジェットのなかへ。そして、何十万ドルもするシャンパンを飲み、キャビアを食べて離陸して映画は終わる。

 

とにかくテンポが抜群で、ジョージオーウェル動物農場や、ウサギと亀の寓話なども挿入された凝った脚本がうまい。ラストでクリステルが倒れた先にウサギがいたりする演出も楽しめました。

 

「罪の声」

いい話だし、もっと胸に迫ってきても良さそうなのですが、ぐっと来るものがないのはどこが原因だろう。いい役者を揃えて、それなりにできる監督を起用しているが、もう一歩弱い。物語はグリコ・森永事件を元にした原作による映画化ですが、人間ドラマの描写に力がなかった。まあ、それでもラストは、じんわりとは来たからいいとしましょう。監督は土井裕泰

 

一人のテーラーがスーツを作っているシーンそして時はこの男性の息子曽根俊也の場面へ。クリスマスの飾りが壊れたからと、押し入れを探していて、父の懐かしい箱を発見、その中にあった手帳とカセットテープを発見する。その手帳に書かれていたのは約30年以上前の事件の内容らしきことが書かれていたこと、さらにその時に犯人が使った子供の声のテープだった。しかもその声は俊也の声だった。俊也はその手帳が、父の兄達雄のものだと突き止め、達雄が事件に関わっていたこと、自分の声がなぜ使われ、誰が録音したのかを調べ始める。

 

一方、新聞社で文化部の仕事をしている阿久津英士は、昭和最大の未解決事件を再調査する仕事を受けていた。乗り気ではなかった阿久津だが、次第にその真相に迫っていく。そして、堺の料亭での聞き込みを続けるうち、その料亭に聞きにきたもう一人の人物、曽根俊也の存在を知る。

 

阿久津は曽根俊也の店を訪れ、取材を進めようと迫るが、今更犯罪に関わった過去に触れたくない俊也は最初は断る。しかし自分以外に二人の子供が声のテープに関わっていたことを知り、その人達の今を探すことを条件に、自分が見つけたテープと手帳を阿久津に託す。

 

映画は、次第に事件の真相に迫っていく阿久津の姿とそれに伴って、事件の時の三人の子供のその後の数奇な人生を柱にしていく。曽根俊也だけが普通に幸せな人生を歩んでいたが他の二人の人生は波乱と不幸の日々だった。そういう真実を目の当たりにする阿久津は自分のこれからの仕事の目的を改めて知る。

 

こうして映画は終わっていくが、おそらく物語の骨子は阿久津の物語なのだろうという展開になっている。本来、曽根俊也の人生の何かも原作ではしっかり描いているのだろうが、そこが薄くなってしまったために映画全体に強さが出なかったのかもしれない。

 

非常に奥の深い中身のあるお話だと思うが、今更、学生運動を全面に出した脚本や原作があるのでどうしようも無いがイギリスに達雄がいるという無理矢理海外展開はやや厳しいものもある。もう少し映像とするにあたっての推敲が必要だったのではないかと思う。でも映画としては人生を考えることができるいい映画でした。

 

「きみの瞳が問いかけている」

前半が素晴らしくいいのに、後半に進んでいくに従って、雑になっていく上に、くどいほどの引っ張りが映画をどんどんダメにしてエンドロールを迎えた感じです。ラストはもっと鮮やかに決めるべきでしたね。チャップリンの名作「街の灯」を元にした韓国映画のリメイク作品です。監督は三木孝浩。

 

酒の配達のバイトをする主人公累のシーンから、新たなバイトで駐車場の管理を始める場面に移り映画は始まる。累が管理室でぼんやりしていると、突然目の見えない女性が累にお弁当やらなんやらを持ってきて一緒にテレビを見ようという。実は累の前にいたおじさんの管理人と親しかった彼女はいつもここへ遊びにきていたのだ。彼女の名前は明香里、事故でほとんど視力を失っていた。

 

明香里は、累のところに入り浸るようになるが、累は中年に近いおじさんだと勘違いしていた。累は、かつてキックボクサーで、闇リングの試合で活躍していたが、あることがきっかけで留置所に三年ほど入っていて出てきたのだ。

 

累と明香里は、次第に親しくなり、お互いの年齢も分かり愛し合うようになる。累も、かつてのジムに戻り普通にボクシングを再開していた。明香里は。会社の上司のセクハラから会社を辞めて、兼ねてからの陶芸を始めながらマッサージ師の勉強を始めていた。

 

そんな時、累のところにかつての闇リングの元締めのヤクザが近づいてくる。さらに明香里の目が悪くなり網膜剥離を引き起こし始めていた。手術を進める累に明香里はかつての事故の原因を語り出す。

 

免許取り立てで両親を乗せて運転していた明香里は、窓から燃える人が落ちてくるのを見て事故を起こした。かつてヤクザ紛いの仕事をしていた累は、裏切った仲間をリンチにし、その際そのリンチされた男は灯油を被って火をつけて窓から飛び降り、その直後警察に逮捕された。なんと、累は明香里の事故の原因を作っていた。

 

罪悪感に苛まれる累は、闇リングの元締めの頼みを聞く代わりに明香里に近づくのを辞めさせるのと明香里の手術代のためにリングに立つ。そしてなんとか勝つのだが、逆恨みしたヤクザは累を殺す。一方手術に成功した明香里は、マッサージの資格を取り、ボランティアで病院を回る。二年が経っていた。

 

ある時、ある病室に累が担ぎ込まれてくる。累は命が助かっていたが口が聞けず、入院していた。累は明香里に気がつくが明香里はそのままマッサージして去る。明香里は陶芸の店を開いていて、累はそこを訪ねてきて、かつて明香里が駐車場の管理室にきた時に話していた金木犀を買う。さらに、累が姿を消す前に明香里に送るべきオルゴールを店で見つけて涙ぐむ。

 

外出から帰った明香里は、松葉杖をついていた累が、あの累だと知り追いかけるが見失う。累は罪悪感から、かつて母が無理心中しようとしていた海岸にいた。明香里が駆けつけ、帰るべきところはここじゃないと抱き合ってエンディング。

 

とにかく、ラストが相当にくどいのと、中盤あたりの上司のセクハラやなど無駄なシーンも盛り込みすぎで、「街の灯」が原案の映画のリメイクならもっと鮮やかに閉めるべきだと思う。でも、吉高由里子の演技が抜群で、前半はすっかり彼女に引き込まれました。それだけでも見た甲斐があったと思います。