くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ジョゼと虎と魚たち」(アニメ版)「新感染半島 ファイナル・ステージ」「AWAKE」

ジョゼと虎と魚たち」(アニメ版)

原作が名作なのでどんな形で映像化してもそれなりに感動してしまうが、二十年前の犬童一心監督作品がその年にベストワンの私にとって不安だらけの観賞。でも相当に涙ぐんでしまいました。さすがに犬童監督版ほどのインパクトはなかったけれど胸に切なさと前向きに生きる勇気が迫ってきました。監督はタムラコータロー。

 

メキシコへ留学を夢見るダイビングが趣味の恒夫は、ある夜、坂道をものすごい勢いで落ちてくる一人の少女を抱き止める。彼女は生まれながらに足が悪く車椅子生活をして、祖母に世話になりながらの毎日だった。しかし、祖母のチヅの依頼で恒夫はその少女の面倒を見るバイトを始めることになる。

 

少女はフランソワーズ・サガンの小説の主人公の名前を取ってジョゼと呼ばれていた。ほとんど外に出ることなく毎日を過ごしていた彼女は常夫にわがまま放題を言い、外の連れ出されるうちに外の世界に目覚めていく。

 

恒夫もそんなジョゼにいつの間にか惹かれながら、自らの夢に向かっていく。ジョゼは恒夫に連れて行かれた図書館で司書の花菜と友達になり、電車で海を見にいったりして外の世界を知り始める。そんな頃チヅは心臓病で死んでしまう。一人になったジョゼは一人で生きるべく、大好きな絵を描くことも諦め、自暴自棄になっていくが、一人で出ていったジョゼを追った恒夫は交通事故に遭い足を骨折してしまう。

 

留学もなくなり、落ち込む恒夫を励ますべく、密かに恒夫に好意を持つダイビングショップの同僚舞がジョゼを訪ね、ジョゼに恒夫を励ますようにいう。ジョゼは絵本を書き、図書館での朗読会に恒夫を呼ぶ。恒夫はジョゼの描いた絵本に心打たれリハビリをがんばく決意をする。

 

この絵本のモニ語りが抜群に感動してしまいます。やがて歩けるように回復した恒夫を見たジョゼは自分も絵本作家になる夢を叶えるため働くとをと決意、独り立ちするため彼の元を去ろうとするが、ジョゼを訪ねた恒夫は一人飛び出したジョゼを追っていく。しかし見失った恒夫の前にジョゼが坂道を転げ落ちてくる。抱き留めた恒夫はジョゼに告白をする。

 

やがて、恒夫はメキシコへ行き、ジョゼは一人で待つ。桜の春、スケッチしているジョゼのところに恒夫が帰ってきて映画は終わる。実写版は、インパクトのある名シーンがち入りばめられていたが、こちらのアニメ版は素直な仕上がりになっています。これはこれでいい映画だったと思います。

 

「新感染半島 ファイナル・ステージ」

「新感染 ファイナル・エクスプレス」の四年後。面白い、とにかく徹底的に面白いのですがゾンビに胸焼けしてしまいます。「マッド・マックス 怒りのデスロード」的なクライマックスは相当に見せ場があるし、ゾンビとカーチェイスを組み合わせた絵作りは相当に見応えがあります。まあ韓国映画らしく暗いですけどね。監督はヨン・サンホ

 

半島が感染され、脱出するべくジュンソク大尉は兄夫婦を車に乗せて脱出船の待つ港へ向かう。途中、子供を抱いた家族と出会うも助けずに港へ。やがて日本を目指して出港するが船内で感染者が出て、行き先は香港へ。さらに兄の妻と息子がゾンビにやられてしまう。そして四年が経つ。

 

半島に残された大金を積んだトラックを手に入れようと香港の組織がジュンソク、そしてその兄らを使い半島に向かわせる。そしてトラックを見つけたが突然現れた631部隊というならず者集団のトラックを奪われてしまう。ジュンソクは、突然現れた少女の運転する車に助けられるが、なんと彼女らはかつて見捨てたミンジョン親子だった。

 

ジュンソクらはならず者集団からトラックを取り戻し、港で待つ仲間のところへ脱出する計画を立てる。一方、ジュンソクの兄がならず者集団に捕まりゾンビと戦う奴隷にされていたので彼を助けるが、結局兄は撃たれて死んでしまう。

 

ジュンソクとミンジョンらはトラックで港を目指すが、ならず者集団のファン軍曹らが追ってくる。そして派手なカーチェイスの末に港に着いたかと思われたが、突然現れたファン軍曹の上官ソ大尉が、ミンジョンの子供を盾にトラックを奪い返し船に乗る。しかし船内でソ大尉は殺される。そこへ国連軍のヘリがやってくる。ミンジョンは自らを犠牲に、子供らを逃がそうとするが、ジュンソクがミンジョンを助けに戻り無事救出して全員ヘリに乗って旅立って映画は終わる。

 

登場人物のドラマは一切排除して、ひたすらテクニカルなカーチェイスとゾンビ、さらにならず者集団との攻防戦をこれでもかと見せていく。特に秀でた演出は見当たらないが単純に面白い。まさにエンターテインメントでした。

 

「AWAKE」

それほど期待してなかったが普通に楽しめる作品でした。ただ、木下グループ新人監督賞グランプリという肩書きほどの作品ではなかった。2015年に実際に行われたAIソフトとプロ棋士との対決をモチーフにしたオリジナルストーリーです。監督は山田篤宏。

 

将棋会館にやってきた少年期の主人公英一はそこで陸という同年代の天才棋士と出会う。何度か勝負をするが、ある時陸に敗れたことでプロになることを諦める。そして時が経って大学に入学した英一は父親がたまたま将棋ソフトで遊んでいるのを見て自分も将棋ソフトを作ろうと考え、AI研究会に入部してソフト作りを始める。

 

まもなくして彼は、その方面でも認められるソフトの開発をし、電脳戦と呼ばれる大会で優勝する。そこで彼のソフトとプロ棋士との対決というイベントの話が持ち上がり、AIソフトとAWAKEの対戦相手を模索されるが名乗りをあげたのはかつての英一のライバル陸だった。対戦に備えてソフトを完成させたが、何度かの電脳コンテストでソフトのミスを発見する。融通の効かないソフトの弱点を見つけたがすでに改変は出来ずそのまま陸との対決の場へ進む。

 

陸は対戦で、ソフトのミスを誘う戦法でAWAKEを破るが、英一にとってもそれは清々しい敗北だった。こうして映画は終わっていく。あえてミスを誘発する同じ差し手を陸が取ることで融通の効かないAIソフトの弱点をついたかの展開と一方でそれがかえって人間味あふれる物語として締めくくったラストはうまい。ただ映画としては特に優れた演出も見えなかった気もします。