「燃えよデブゴン TOKYO MISSION」
これは面白かった。香港アクションコメディという空気感と抜群のカメラワークの大胆さ、そしてスケールの大きな映像演出、そしてテンポの良い展開に終始楽しめました。古き香港映画の中途半端な日本描写も笑える傑作でした。監督は「るろうに剣心」のアクション演出を務めた谷垣健治。
香港、フィアンセとの結婚記念写真を撮る予定の主人公のロンは、たまたま銀行強盗に出くわしてしまう。何かにつけ派手な活躍で上司から嫌がられている刑事でもある彼だが、我慢できず銀行強盗に立ち向かう。そして追い詰めた末に警察署長を轢き殺しそうになって事件を収める。それが祟って、ロンは閑職に移動させられる。そんな彼に愛想をつかした大部屋女優のホーイは彼の元からさっていく。
閑職ですることがないロンは半年で激太りしてしまう。そんな時、彼に銀行強盗の容疑者山本を日本へ護送する任務を受ける。そしてロンは日本へ向かうが、飛行機の中で日本での撮影に向かうホーイと再会する。彼女は日本のヤクザ島倉のバックアップで次第に人気が出始めていた。しかし、島倉らは麻薬の売人だった。
日本へやってきたロンらは、ヤクザとなぁなぁの日本の警察にあっけに取られる。さらに山本も島倉らに殺されてしまうが、日本の警察は本気で捜査しない。ロンは日本にいる香港警察のファン警視と協力して島倉らを追い詰めていく。山本は島倉らが麻薬をマグロに詰めている映像をたまたま撮っていたので殺されたのだ。その証拠動画を手に入れたロンらは島倉に最後の戦いを挑む。クライマックスは東京タワーの上、島倉とロンの死闘が開始される。そして香港から駆けつけたロンの同僚で出世したウォンがヘリコプターで飛んできて、最後はロンとホーイが縄梯子でヘリに吊るされて去っていってハッピーエンド。
展開が荒唐無稽なほどに豪快で楽しい。古き香港コメディの面白さ、ロンがブルース・リーを尊敬していたり、日本の家屋や設定が全然チグハグだったり、それもまたご愛嬌という楽しい映画でした。
「映画 えんとつ町のプペル」
非常によくできた絵ととってもピュアなストーリーは評価できるのですが、いかんせん脚本がもう一歩物足りないのが残念。緩急がうまく取れていないのとエピソードの配分にもう一工夫ほしかった。絵本ならこれで良いけどという仕上がりが勿体無い一本でした。監督は廣田祐介。
煙に覆われた煙突町に何やら隕石のかけらが降ってきるところから映画は始まる。そのかけらがゴミを引き寄せて一人のゴミ人間が出来上がる。時はハロウイン、みんなで踊場所にゴミ人間も一緒に踊る。このオープニングは素敵です。ところが人間ではないとわかりゴミ人間はその場を逃げ出すが、ゴミ収集車に落ちてしまい危うく焼却されてしまうところ、ルビッチというえんとつ掃除の少年に助けられる。そしてゴミ人間はプペルという名前をつけられ、ルビッチ達のところで働くようになる。
ルビッチの父は亡くなっていて、生前、煙の向こうには星空があるという紙芝居をしていた。しかしその死は謎だった。ルビッチは父の意思を継ぐべく、たまたま知り合ったモグラ少年スコップから無煙火薬をもらい、煙を吹き飛ばす計画を立てる。しかし、政府組織はなんとか阻止しようと迫ってくる。この政府組織がなぜ煙で住民の目を外に向けないようにしているのかの動機付けの描写が弱く、本来住民のためだったはずなのに何故住民を抑圧しているのかの表現がうまく見えない。
とはいえ、ルビッチたちは気球で空に上がり、爆弾を爆発させて煙を吹き飛ばして大団円となる。例によってそれまでルビッチやルビッチの父を疎んじていた住民たちがルビッチ応援に変化する流れになる。そして、ゴミ人間はその使命を終え、脳にしていたルビッチの父のブレスレットとともに崩れて、隕石のかけらのようなものが空に去っていく。ルビッチの父の魂だったのか、父がルビッチに最後の望みを託したのかという思いを伝えて映画は終わる。
背景が非常に描き込まれていて美しいのですがキャラクターが対照的に雑でシンプルなのが気になるし、全体の物語に深みが足りない脚本が実に残念。子供向きに軽く見る分には耐えられるのですが大人が感慨を覚える仕上がりではなかった感じです。