くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「花束みたいな恋をした」

「花束みたいな恋をした」

さすがに坂本裕二脚本、とっても素敵な恋愛ファンタジーに仕上がっていました。物語全体のまとまりはテレビドラマ的でも有りますが、偶然が偶然を呼び、有り得ないラブストーリーが、ひとときの現実を忘れさせてくれました。監督は土井裕泰

 

2020年、とあるカフェでひと組のカップルがイヤフォンを一つづつつけて音楽を聴いている。それを見た一人の女性山根麦は、それはおかしいという。一方でもう一人の男性八谷絹も同じことを呟く。それぞれが彼氏彼女と一緒で、麦と絹は同時に立ち上がり、カップルに忠告しに行こうとするがお互い目があって元の席に戻る。二人はかつて恋人通しだった。そして物語は2014年に戻る。

 

大学生の麦は友達の人数合わせでカラオケに誘われて向かうが、場違いな思いをしている。一方で、一人の大学生絹はGoogleアースに自分が映っていることを発見し友達に吹聴して盛り上がっている。そんな彼も、これまた人数合わせでカラオケに誘われる。

 

麦も絹も付き合いで終電間近までカラオケにいて、麦は母からトイレットペーパーを買ってきてというメールをもらい、トイレットペーパーをだかえて駅に来るがそこで絹とばったり出会う。お互い終電を逃して、たまたま同じく終電を逃した男女と一緒に遅くまで開いている居酒屋へ。そこで、絹は押井守がいることを発見するが、男女は全く知らない。ところが一緒に来た麦はそれを分かり、一気に麦と絹は意気投合、しかも趣味も何もかもが全く同じで、そのまま麦は絹のアパートで朝を迎える。

 

それぞれの趣味があまりにも同じことから二度のデートの後三度目で絹は麦に告白し恋人同士になる。やがて、大学を卒業しフリーターとなり、二人の関係はどんどん熟成していく。まもなくして麦は就職、二人は同棲生活を始める。絹は大好きなイラストの仕事をこなすものの、麦の収入に支えられていたが、絹は就職することを決意する。

 

なんとか普通の会社の営業職についた絹だが、次第に仕事にかまけていくようになる。一方、麦はたまたま知り合ったイベント会社の人に誘われて派遣ながらもイベントの会社に転職する。イラストで食べていくという夢を捨てて普通の社会人になって必死に働く絹と次第に小さなすれ違いが起こり始める。2015年、2016年、2017年と年を重ね、やがて二人が知り合って5年目の2019年となる。麦と絹は別れる方向へ進み始め、友人の結婚式に出席した帰り、二人が初めて行ったファミレスに寄る。そこで絹は、結婚してもう一度二人で生きていこうと提案、麦も納得するが、そこへ、かつての自分達と同じようなカップルが入ってきて、五年前の自分達と同じ会話を始めるに及んで、もう元に戻れないことを悟る。

 

時は2020年、カフェを出たところで彼女を待つ絹、麦もまた彼氏と出てくる。二人はそれぞれの相手と手を組んで別々の方向へ歩いていく。そして何気なく手を振ってお互いの別れを確かめる。

 

家に戻った麦は、今日元カレにあったと呟く。家に帰った絹は今日元カノにあったと呟き、パソコンのGoogleアースを開くと、なんと、そこに二人が手を繋いでいる写真があった。映画はこうして終わる。

 

導入部のファンタジックな出会いシーンはとっても素敵で、そのまま、二人の人生の歩みが普通に描かれ、やがてお互い未来を見据えながら別々に生きていく展開は、いかにもテレビドラマ的ですが、そんな偶然のなせるほんのひとときの瞬間もあってもいいかなと思う。もう少し、踏み込んだ演出が見たかったけど、若いカップルが見たら、ほのぼのと感動するのだろうなと思います。そんな作品でした。