くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「おもいで写真」「理由なき反抗」

「おもいで写真」

これというほどの映画ではなかったけれど、最後まで飽きずに見ることができた。さりげないエピソードの積み重ねですが、お年の方が微笑む姿の連続に癒される年齢になったのでしょうかね。監督は熊澤尚人

 

東京でメイクアーティストになる夢を挫折し、祖母の葬儀に主人公結子が故郷に戻ってくるところから映画は始まる。祖母の遺影がピンボケ写真しかなかったという幼馴染の一郎が結子に告げる。役場に勤める一郎は、落ち込んでいる結子に、お年寄りの遺影写真を撮って回る仕事を頼む。結子は気乗りしないままに、高齢化が進む団地を回り始める。

 

最初は受け入れられなかったが、一人の婦人和子と出会ったことで、遺影よりおもいで写真を撮ることで仕事を進めるようになる。映画は、様々な老人の思い出写真を撮りながら、その背後の人生の断片を描き、結子の両親の過去や、一郎との切ない思い出が語られていく。

 

一見平凡な物語ですが、脚本がしっかり描かれているせいか薄っぺらくならずに畳重ねられているのがいい。そして、東京のデザイン会社に行くつもりだった一郎は、地元が好きだと分かり、結子に告白めいたことを言って映画は終わっていく。まあ普通の映画でした。

 

「理由なき反抗」

洋画劇場で見たきりで、長いことスクリーンを待っていた名作を、ようやく見ることができた。こんなに素晴らしい名作だったんだと改めて感動。たった一晩の物語に凝縮された青春の1ページのあまりに残酷であまりに切ない物語に自然と涙が溢れてきました。冒頭の伏線がラストで生きる脚本の素晴らしさも秀逸でした。監督はニコラス・レイ

 

道路上で猿のおもちゃのアップから、そこに酔っ払ったジムが転がるオープニングで映画は始まる。泥酔いしたジムは警察署へ連れて行かれる。そこには不良グループと一緒に捕まっているジュディ、両親に放っとかれて家出したプレイトウがいた。震えているプレイトウにジムは上着を貸してやる。ジュディは釈放される時にコンパクトを忘れていく。

 

ジュディの両親は十六歳になったジュディの扱いに困っていて、ジュディは両親への反抗から不良のバズらと付き合っている。ジムは前の学校で暴力沙汰を起こし、ここへ引っ越してきた。母がやたら偉そうで父を尻に引き、何かにつけ世間体を重んじてジムとの間にも溝がある。ジムは初めての登校でバズらに目をつけられ、チキンレースをすることになる。

 

バズは、ジムのことを少し気に入っていて、半分友情親交も含めチキンレースを行うことにした。そして夜、ジムとバズはジュディの掛け声で車を崖めがけてスタートさせるが、ジムは飛び降りたが、バズは服が引っかかりそのまま転落して死んでしまう。ジムは罪の意識で警察へ赴くが、頼りにしていたレイ警部は不在だった。バズの仲間はてっきり自分らをタレコミにきたと思い、ジムをつけ狙おうとする。

 

一方、プレイトウは家に帰ったものの両親は養育費だけ置いていて不在で、枕の下に隠していたピストルを持って家を出る。そんな頃、不良たちはプレイトウを脅して手に入れたジムの家に嫌がらせをしにいくが、ジムはジュディを連れてプレイトウに教えてもらっていた山の頂の空き家へ行く。プレイトウも間も無く現れ、三人で自由を楽しもうと思ったが、一人眠ってしまったプレイトウのところに不良グループが現れる。プレイトウは慌ててそのうちの一人をピストルで撃ち、逃げて、昼に行ったプラネタリウムに逃げ込む。

 

ジムとジュディはプレイトウを追ってプラネタリウムに行くが、すでに警察や両親が駆けつけていた。なんとかプラネタリウムに潜り込んだジムたちはプレイトウを説得し、ピストルから弾を抜いて返す。ジムは自分の赤いジャケットをプレイトウに与える。灯を落とし、下がるように叫ぶジムと一緒にプレイトウも現れる。レイ警部らも待ち構えるが、つい灯をつけ、警官が銃でプレイトウを撃ってしまう。プレイトウは死に、ジムらは両親に抱きしめられ、映画は終わっていく。夜が明け、あたりは明るくなっていた。

 

たった一晩の物語で、何もかもを詰め込んだ素晴らしい脚本がまず見事で、思春期の危うい子供たちの心の物語が絶妙の展開でどんどん表現されていくのに圧倒されます。名作とはこういうものですね。