くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アウトポスト」「ビバリウム」

「アウトポスト」

2009年アフガニスタンのキーティング前哨基地で起こった悲劇的な戦闘の実話を元に描いた戦争アクションで、実話なので面白いという表現をして良いものか迷うけれど、クライマックスの延々と描かれる戦闘シーンは相当に迫力もあるし面白い。群像劇的に描かれるので誰が誰かというのは横のテロップでしかわからないが、緊迫した現場の姿がきっちり描かれているなかなかの力作でした。監督はロッド・ルーリー

 

四方を険しい山に囲まれたキーティング前哨基地の描写、そしてそこに派遣されている兵士たちの紹介を手際よく描いて映画は幕を開ける。地元の長老たちと仲良くすることが平和の道だと考えながらも、頻繁に攻撃してくるタリバン兵との小競り合いは途切れることなく行われている。しかし、小競り合いが日常になって、それがかえって兵士たちの緊張感を弱めてきているのも確かだった。

 

そんなある時、地元住民との通訳係の民間人が騒ぎ始める。村人が突然いなくなったので、タリバンの総攻撃が来ると叫ぶ。しかし小競り合いが日常になった兵士たちは信じようとしなかったが、まもなくして何百人というタリバン兵が崖を駆け降りて襲って来るのを目撃する。兵士たちは必死で応戦するが、次々と撃たれ、死傷していく。この終盤の戦闘場面がとにかく長尺な上に迫力が半端ではない。手持ちカメラを多用した機動力のあるカメラワークがなかなかの緊張感を最後まで繋いでいきます。

 

基地内にタリバン兵も侵入してきて、もはやこれまでとなったところで航空部隊、ヘリが到着してタリバンを一掃する。やがてこの基地は全て爆破して引き上げることになって映画は終わっていく。あとは生存する兵士たちの談話がエンドクレジットに延々とかぶっていく。まあ普通の戦争アクションですが、退屈なしなかった。

 

ビバリウム

後味の悪いサスペンススリラーで、風刺でも潜ませているのかもしれないが、感じ取れなかったし、結局魔物かエイリアンか、B級とまではいかなくてもそれに近いホラーだったという印象です。特に造形も創造性もそれほど感じられなかった。期待しすぎたのかもしれません。監督はロルガン・フィネガン。

 

鳥の巣のアップから、そこの雛が他の卵を蹴落とし、実はその雛が親鳥の子供ではない風に育ったところで画面は変わる。

学生のトムとジェマのカップルは、今やラブラブ真っ最中。たまたま立ち寄った不動産屋でマーティンという男から新しく分譲中のヨンダーという町の物件を紹介される。何故かNo.9の表札の家を案内されたトムたちだが、気がつくとマーティンの姿が見えない。それほど乗り気でもなかった二人は車で帰ろうとするが、いくら走っても元の家の前に戻って来る。やがてガソリンも尽き、諦めて夜を明かし、翌朝屋根に登ってみると延々と続く同じような街並み。そこへ段ボール箱が届き、開けてみると赤ん坊が入っている。この子を育てたら解放されるというメモが入っていた。

 

赤ん坊は自分の思い通りにならないと叫びだす少年に育ち、トムやジェマの言葉を真似たりと不気味そのものであるが、街から出られたらと育てるトムたち。ある時、タバコの吸い殻を庭の芝生に捨てたら芝生が広がり土が見える。その日からトムは地面を掘り始める。どこかにつながるかもしれないと信じる一方他にすることもないからだった。一時は車に子供を閉じ込めて殺そうとするがジェマが助け出してしまう。ジェマが少年の叫び声の真似をしてみたら少年の喉が膨らんで、いかにも人間ではない何者かの姿を目の当たりにする。

 

みるみる成長する子供はいつの間にか青年となる。相変わらず穴を掘るトムだが、次第に体が弱っていく。そしてある夜、穴の底で死体らしい物を見つけてしまい大慌てで外に出るが、体力の限界が来る。そしてジェマの傍で息絶えてしまう。そこに青年は死体を包む袋を持って来る。そしてトムの死体を入れて穴に捨ててしまう。

 

精神的に追い詰められたジェマは、ツルハシで青年に襲いかかる。青年は歩道をめくって地下に逃げ、それをジェマが追っていくが、結局追い詰められない。このクライマックスのシュールな展開はなかなかのものでした。やがてジェマも力付き、青年に死体袋に入れられ穴に捨てられる。穴を埋めた青年はトムらが乗ってきた車に乗り、街を出て元の不動産屋へ。そこには息絶えたマーティンがいた。青年はマーティンの名札を自分に付け替え、マーティンの体を死体袋に入れてクローゼットに仕舞い込んでしまう。そこへ新しい顧客がやってきて映画は終わる。

 

日常に潜む恐怖と捉えれば一番わかりやすい解釈になるけれど、この魔物の目的が今ひとつ見えないために非常にシュールな空気感が漂い、それがかえって主人公たちに悲劇を後味の悪いものにしたかなと思います。二度見たくはないです。