くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「テスラ エジソンが恐れた天才」

「テスラ エジソンが恐れた天才」

テスラの偉業を描くでもなく、ライバルエジソンとの攻防を描くでもなく、ただ彼の頭の中にある理想の世界を目指す姿を映像として作り上げていくという演出は、ある意味面白いし、わざと絵の背景を使ったり舞台的な装置を設定したり、ストーリーテラーを使ったり、想像のシーンをあえて入れてみたりと独創的に見えるのですが、結局全体がぼんやりとした作品として仕上がった。この辺りをうまく見せるのが監督の手腕なのですが今一歩足りなかった感じ。監督はマイケル・アルメレイダ。

 

スケートをしているテスラの姿、その周りを女たちもスケートをしている。どこかの建物の中庭のような場所から映画は幕を開ける。19世紀末ごろの資産階級の家にはこんなものがあったのかと思っていると、時は9年前、テスラがエジソンの会社に入ったところへ遡る。

 

エジソンの進める直流電源に真っ向から交流電源を提唱するテスラは、すぐにエジソンの元を離れる。まもなくして投資家のウェスティングハウスと組むことになり、シカゴ万博で大成功を収めエジソンを打ち負かす。この辺りの展開も実にあっさりと描いていく。モルガン財閥の娘アンと交流し、次の理想であるテスラコイルの研究へ没頭していく。

 

映画は時にストーリーテラーを登場させてテスラの説明を行うが、時に想像のシーンをあえて想像だと説明して挿入したりする。さらに、明らかに絵となる背景を使ってみたりと、この辺りが、結局テスラの頭の中を映像にしているかのように思えます。

 

ひたすら人々が平和に幸せに暮らせる理想を追い求め研究に没頭するテスラに、やがてモルガンの心も離れていく。それと共に社交界とも溝ができ始める。クライマックス、なんとマイクの前で歌うテスラを描写するという斬新な演出の後、彼はエジソンやモルガンより長生きしたものの1943年孤独の中に亡くなったというテロップが出て映画は終わる。

 

全体が非常にぼんやりとした仕上がりで、それを狙ったのかもしれないが、終始ボソボソ喋るだけのテスラと、一方で華やかなエジソンやモルガンなどの描写も中途半端なために結局主人公が浮かび上がって来ず、自分たちはテスラの頭の中を見ていただけに感じて見終わることになりました。面白い映画なのですが、正直退屈でした。