くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ザ・バッド・ガイズ」「街の上で」

「ザ・バッド・ガイズ」

お世辞にもよくできた映画ではないし、ツッコミどころ満載の脚本ですが、これが韓国映画という典型的な作品でした。こういうのを作らせると香港映画はうまかったのですけど。監督はソン・ヨンホ。

 

刑務所で服役しているウンチョルがミシンをかけている場面から映画は始まる。かつて、一人で縄張りを制圧したという男で刑務所内でも一目置かれている。そんな頃、護送者が覆面集団に襲撃される事件が起こる。

 

かつて、犯罪者を組織して特殊犯罪捜査課を作っていたオ・グタク元警察官は再び組織を再結成することを指令される。そして、ウンチョル、天才詐欺師ノスン、元警官ユソンらを減刑を条件に引き入れる。

 

あとはひたすら派手なアクションで、ストーリーテリングなどそっちのけであれよあれよと展開していく。そしてどうやら警察長官と日本のヤクザが絡んだ麻薬と臓器売買の犯罪が絡んだことが見えてきて、そのアジトに突入したグタクらが敵を退治して映画は終わる。

 

マ・ドンソク扮するウンチョルが主人公なのだろうが、全く引き立てた演出を行っていないので、ただのスター映画で走っていく割り切りはなかなか頭が下がります。しかも、クライマックス、全く銃が出て来ずに肉弾戦で結局悪者を倒してしまいますが、踏み込んできた警官は皆銃を持っているという矛盾もまた楽しい。

 

まあ取り立てるほどの映画ではないけれど、韓国映画の色は楽しめた作品でした。

 

「街の上で」

期待通り、とっても洒落た素敵な映画でした。やっぱり今泉力哉監督作品はこうでないといけません。さりげないけれどどこか身近でどこか寓話的な会話シーン、それとなく絡んでくる小さなエピソード、何かを予感させる本当にたわいのない小道具の数々、二時間以上あるのに全然退屈しないし、微笑ましい感じの笑いも出てくる。いい映画に出会いました。ますます今泉力哉監督ファンになります。

 

次々と本を読む人の場面から映画は始まる。荒川青の部屋で、彼女の川瀬雪が、別れ話を持ち出している場面から物語は幕を開ける。雪の誕生日ケーキが置かれていて、どうやら誕生日らしい。雪の言葉に青はわかれたくないと食い下がる。雪は別に彼氏ができたと言って後へ引かない。

 

カットが変わる。古着屋に勤める青だが、この日一組のカップルが服を選んでいる。男の方がこれから告白に行くのに服を選びにきていて彼女ではないが友達がついてきた。しかしこの彼女はこの男が好きらしい。男は、もしこれから告白する相手に振られたら付き合おうと言う。

 

古本屋に青がやってきた。この店の主人は先日亡くなって、田辺冬子が店番をしている。青は冬子とさりげない会話をするが、つい冬子が店の主人と交際していたのかと問いかけてしまい冬子にそっぽを剥かれる。帰ってから反省した青は古本屋に電話をして留守電で謝る。

 

青は行きつけのバーに行く。そこで友人に会う。その友人は役者を始めていて役作りに太っているにだという。青はマスターに雪と別れた話などをする。

 

青がいつものように古着屋で店番をしていると、一人の女性高橋町子がやってきて、自分の映画に出てほしいという。本を読んでいるシーンだけだからというので承諾するが、初めてのことなので、田辺冬子に頼んで、自分の練習を動画に撮ってもらう。

 

撮影に来た青は、そこで雪が大ファンだった間宮武も撮影に参加しているのを知り舞い上がる。そして、間宮と一言二言話をする。やがて撮影が始まるが、ガチガチの青の演技に高橋町子は、一応撮影するがカットを決める。その日、撮影後の打ち上げで、二次会に行く高橋らと離れて帰ろうとする青にスタッフの城定イハが声をかける。そして、控室にも使っていたイハの部屋に行く。そこで、お互いの恋バナに花を咲かせる。イハの二人目の彼氏は関取だったこと、三人目は別れ話をしたが、まだ部屋の鍵を持っていることなどを話す。青は雪のことを話す。

 

青は行きつけのバーにいる。青の友達は酔い潰れている。自分の役が本物の関取に取られたと言っている。

 

雪はまた別れ話をしている。相手は間宮だった。間宮は雪が言っている元彼に会いたいという。雪はその後、青の行きつけのバーに行き、マスターに自分の思いを話す。

 

イハの家、一夜明け青が帰りかけると、玄関にイハの三番目の彼氏が来る。青をイハの彼氏だと思いそのまま出ていく。イハと青が歩いて出てくると、マスターと雪が歩いてくる。青は雪の相手がマスターだと勘違いする。一方雪はイハが青の彼女だと勘違いする。そこへイハの三番目の彼氏が自転車で来て、イハの部屋の鍵を青に渡そうとする。戸惑う青、雪はイハに三番目に彼氏の自転車を取って走り去る。途中警官に止められ、その警官は、映画の前半で青と話をした警官で、青に話したのと同じ、姪っ子が好きだという話をする。それを聞いて、雪は自転車を置いて駆け出す。

 

家に帰った青はかつて作曲した曲をギターで弾いていると、そこへ雪が間宮を連れてやってくる。間宮は納得して走り去る。雪は慌てる青に好きだという。

 

一方、高橋の映画の完成試写がある。終わってからこれを見た田辺が、青が写っていないと高橋に詰め寄るが居合わせたイハが、下手くそだったから切ったと答える。イハは、青の古着屋にやってくる。

 

カットが変わると青の部屋、雪が一人いるが机の上に見慣れないメンソールのタバコを見つける。それは映画の前半で、青がまだ親しくなかった高橋にもらったタバコだった。そこへ青が帰ってくる。冷蔵庫を開けると、冒頭のケーキがまだあった。捨てようという青に雪は食べてみようとつまみ食いし、大丈夫だという。青もチョコをかじってみる。こうして映画は終わっていく。

 

さりげない会話の中にさりげない物語をさりげなく挿入して淡々と描いていく。そこに誰もが身に覚えのある懐かしい物語が見え隠れする。でも全体は一つのフィクションに仕上がっていり。抜群の映像センスと音楽センスで綴られる今泉ワールドがそこにある。良かった。ただ一言良かった。