くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ウィッカーマン」(final cut)「サンタ・サングレ/聖なる血」

ウィッカーマン

真面目に作っているようでなんか変、伝説のカルト映画とうとう見ました。思い返してみても何か変な映画でした。監督はロビン・ハーディ。

 

一人の警部ハウイーが水上艇でサマーアイル島にやって来る。一人の少女ローワン・モリソンが行方不明なので探してほしいと直接手紙をもらったためである。ついてみると島民はボートもよこさず、この島は私有地だから上陸できないという。そこを強権で上陸したハウイーは、ローワンの母が営む郵便局に行くがそんな娘はいないし、手紙も出していないという。島民もみんなそう答えるが、学校へ行ってみるとそこの名簿にローワンの名を見つける。

 

島では、なんとも猥雑な歌や遊戯が行われているし、公共の場で平然とSEXしたり裸で踊っていたりする。ハウイーは、この島の性風俗の乱れを訴えかけるが、島の領主サマーアイル卿は、そんなことは全く完治しないと答える。ローワンが死んでいるらしいと思ったハウイーは、墓を掘り起こすが中からうさぎの死体が出てきたりする。

 

ハウイーは、応援を呼んで島を粛清しようと水上艇にいくがエンジンがかからず、戻ってくる。どうやら、間も無く開催される祭りの生贄にローワンが捧げられると呼んだハウイーは、仮装して村人に紛れ込む。ところがようやく見つけたローワンの後をつけていくと、そこにはサマーアイル卿らがいて、実は生贄はハウイーその人なのだと告げられる。

 

ハウイーは村人たちに抱えられ、岸壁の上に作られた木の人形ウィッカーマンの中に閉じ込められ、火をかけられる。焼け殺されていくハウイーのシーンで映画は終わっていく。で、なんなんだという物語である。まさにカルト。

 

「サンタ・サングレ/聖なる血」

これはなかなかの傑作でした。シーンの一つ一つがしっかりと全体を支えているし、画面の展開も美しくて幻想的。グロテスクなフェリーニ作品という感じの見事な映画でした。監督はアレハンドロ・ホドロフスキー

 

映画が始まると一人の青年が、部屋の中鳥のように木の上に止まっている。医師らしい人たちが彼に食事を与えると、彼は木を降りてきてむしゃぶりつくと共に彼の体は鳥になり羽ばたく。鳥がついたところはサーカスのテント、そこに幼い頃の彼、フェニックスがいる。口のきけない女性アルマが、サーカス団の調教師に火のついた縄の上を綱渡りするように命令されている。アラジンという小人の芸人がそれを見つめ、少年のフェニックスが彼女を見つめる。

 

ここに新興宗教の教会が取り壊される現場がある。その教祖は両手をもぎ取られた処女を聖女として崇めることをしていたが、司教がやってきて、それは邪教だと教会を取り壊させる。その教祖はサーカス団の団長の妻である。

 

フェニックスの父親はサーカス団の団長で、母は団長の妻で、髪の毛でぶら下がる芸を持っている。団長は、全身刺青のナイフ投げの芸人の太った女と浮気をしている。何度か母が咎めるがそのたびにかわされている。ある時、母が芸をしているときに、団長がその女と抱き合っているのを見つけ、母はナイフを持って襲いかかる。その前にフェニックスをトレーラーハウスに閉じ込める。母は、団長の股間に薬品をかけ、女を殺す。団長は襲ってきた母の両腕を切り落として殺してしまう。自らも死んでしまう。

 

やがてフェニックスは青年となる。彼は、両手のない母が芸をしている小屋に行く。そこで、母の腕となって芸を披露するようになるが、次第に母に征服され始める。そして、フェニックスが女性に気を惹かれると、母はフェニックスの手で、その女を殺させるようになる。母の嫉妬であり、フェニックスという腕を取られることを防ぐことでもあった。

 

殺した女は、フェニックスが穴を掘って埋めている。ある時、フェニックスは街で、靴磨きをしているアラジンを見つけ自宅に招く。さらにアルマも発見する。フェニックスの母はアルマを殺そうとするが、フェニックスは必死で抵抗し、逆に母を殺す。しかしそれは幼い日、トレーラーハウスから見ていた死んだ母への想いから生まれた幻覚だった。アラジンも消えてしまい。全てがフェニックスの幻覚とわかり、アルマと共に外に出ると警察が待っていた。フェニックスとアルマが手を挙げて映画は終わっていく。

 

カーニバルのような雑踏にもみくちゃにされる場面や、やたら太った女性がでてきたり、サーカスが舞台になっていたりと、明らかにフェリーニの世界である。ただ違うのはグロテスクな場面が随所に盛り込まれているところでしょうか。それでも、映画作品としての全体の仕上がりは見事なものであり、監督の才能を実感できる一本でした。