くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「異邦人」(デジタル復元版)「マンディンゴ」(デジタルリマスター版)

「異邦人」

ほぼ四十年ぶりの再見。圧倒的な迫力に身じろぎもできない。セリフや物語に全く意味がなくただひたすら映像が語りかけてくる、訴えかけてくる。そのリアリズムに叩きのめされてしまいます。マルチェロ・マストロヤンニの演技力なのか、監督のルキノ・ヴィスコンティの演出力なのか、見るものを打ちのめす迫力に圧倒されてしまいました。

 

一人の男ムルソーが判事のところへ連れて来られるところから映画は始まる。そして、物語は約一年前に遡る。アルジェからバスに乗って母が亡くなった施設へ向かうムルソーの姿となる。霊安室に安置された母の遺体の顔を見ようともせず、タバコを吸い時を待つムルソー。そこには感情というものも信仰というものも見当たらない。すでに過去に置き去りにしてきたようである。

 

葬儀を終えて、ムルソーは久しぶりに出会ったマリーと海に行き戯れ、一夜を過ごす。帰ってくると友人のレイモンが、アラブ人の女と別れるきっかけに手紙を書いて欲しいと頼まれる。それからしばらくしてムルソーはマリーと過ごしていると、上の階のレイモンの部屋で騒ぎがあり、警官が駆けつける。どうやらうまく女と別れられたレイモンは、ムルソーに礼を言う。彼はヒモのような生活をしていた。

 

レイモンの誘いでムルソーとマリーは海辺の友人のレストランに行くことになる。レイモンは、女の兄からつけられているとムルソーに話す。案の定、浜辺でアラブ人の若者とムルソーらは喧嘩になる。レイモンが銃を出すので、危ないからとムルソーがあづかる。とりあえずレストランに戻ったが、暑さに朦朧としてくる。そして、戻れずにもう一度海岸へ歩いていくが、そこでアラブ人の青年を見つける。その青年が突然ナイフを出したので、ムルソーは銃で何度も撃って殺してしまう。そのまま、収監され、裁判となる。

 

法廷シーンはひたすら感情的にムルソーを責めていく検事の姿が中心になる。そこにはよくある法廷劇の理路整然とした展開ではなく、ムルソーが母の葬儀で泣くこともなかっただの、葬儀の後マリーと泳ぎに行ったり映画に行っただのを責める。証人に立ったムルソーの友人らは誰もがムルソーを悪く言わないにも関わらず、結局有罪、しかも死刑が確定する。この展開に何かメッセージがあるのだろう。

 

独房で刑の執行に怯えるムルソーだが、宗教に救いを求める気もなく、神父との面会も拒否する。しかし、死には怯え、夜は眠れず昼に眠ることを繰り返す。しかし、ある夜とうとう彼を迎えに死刑執行人がやってくる。映画はここでのムルソーの顔のクローズアップで終わる。

 

何を訴えてくるのかは明確にわからないのだが、ラストのマルチェロ・マストロヤンニの視線に釘付けになって映画を見終わります。圧倒される映像というのはこう言うのを言うのでしょう。しかも、凡人のわたしには具体的な感想を書く言葉さえ浮かびません。すごいの一言の作品でした。

 

マンディンゴ

物凄い映画でした。黒人差別、近親相姦、女性蔑視、言葉にできないほど生易しい表現では語れない見事な映画でした。よくもまあデジタルリマスター化したものだと脱帽します。人生に一見の価値のある一本でした。監督はリチャード・フライシャー

 

マクスウェルの農場、奴隷を育てて人身売買する仕事をしている彼は、この日も奴隷の仲買人にめぼしい奴隷を売っている。中に一人、反抗的な奴隷もいるが、いい値段で売れてしまう。息子のハモンドは足が悪く、そのことで引け目を感じていた。マクスウェルは、奴隷の一人でまだ処女の女を抱かせる。そんなある時、事業が破綻して金に困っている名家の娘ブランチとの結婚話が持ち上がる。明らかに政略結婚で、ブランチの兄フィリップはハモンドと仲が良かった。

 

ハモンドがフィリップのところに行った夜、一人に奴隷の女エレンと知り合う。夜の相手にあてがわれたのだが、他の奴隷と少し違うエレンにハモンドは惚れてしまう。一方で、ハモンドはブランチと結婚することを決める。新婚旅行で、ハモンドはブランチが処女ではないことを知り激怒する。ブランチはフィリップと近親相姦の関係を持ったことがあった。ハモンドは奴隷市場で、かねてから父が望んでいた純血のマンディンゴの奴隷ニードを手に入れることに成功、さらにフィリップの家でエレンを買い取ることにして連れ帰る。

 

ハモンドはブランチから距離を置き、エレンと夜を過ごすようになる。また連れ帰ったニードを育て奴隷同士の格闘などをさせる。ニードは素直な奴隷だったが強かった。また、父の希望でマンディンゴに女性と交わらせ、妊娠させる。白人にとって黒人は獣でしかなかった。

 

やがて、エレンはハモンドとの間で妊娠するが、嫉妬に狂ったブランチはハモンドらが留守の時にエレンを鞭打った上階段から突き落とし流産させる。しかし、ハモンドのブランチへの態度は全く変わらず、しかもますますエレンを大切にしていく。

 

マクスウェルとハモンドが奴隷を売るために出かけた時、ブランチはニードを誘惑して体を合わせる。やがて、ブランチは妊娠、ハモンドらを喜ばせるが、出産した子供は黒人だった。赤ん坊はその場で殺され、ハモンドはブランチに毒を与えて殺す。そして銃を取りニードのところへ行き、ニードに煮えたぎった窯に入るように強制するが、拒否したニードを銃で撃つ。それを見かねた、別の黒人は、ハモンドの銃を奪い、そばにいたマクスウェルを撃ち殺す。ハモンドは、息絶えたマクスウェルのそばで意気消沈し、銃を撃った黒人は彼方に走り去る。こうして映画は終わっていく。

 

物語の展開も見事で面白いが、容赦なく差別行動やセリフが次々出てくる迫力に圧倒されてしまいます。今ではもう二度と企画に上がらないだろう作品だと思いますが、必見の映画だと思いました。