くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「見世物」「知られぬ人」

「見世物」

サイレント映画なので、もうちょっとシンプルな映画かと思ってましたが、意外に込み入った作りの作品でした。絵作りも凝っていて楽しめました。監督はドット・ブラウニング。

 

羊が沢山走り出してくる場面から、羊飼いが羊を売って金を手にするところから映画は始まります。ここに、見世物小屋があり、さまざまな奇怪な人間などを売り物にする一方で、サロメの劇をメインに客を集めている。ここのスターロビンは女癖が悪く、羊飼いの娘レナをたぶらかして、夕食を奢らせたりしていた。そんなロビンを慕っているのは見世物小屋サロメだった。

 

ある時、サロメに横恋慕する一人の男グリーク(ギリシャ人)は、ロビンを亡き者にしようと企むが果たせず、羊飼いの男を殺して金を手に入れようとするも、羊飼いの男は羊を売った金をレナに預けていたので果たせず、追い詰められて逃亡する。一方、ロビンはレナから金を奪い、そのまま逃げるがサロメに助けられ匿われる。

 

グリークはロビンの持っている金を狙ってくる。一方サロメの父は盲目で、息子が軍隊から帰ると信じていたが、実は息子は絞首刑になる罪人だった。そしてその絞首刑の日、ロビンを息子と勘違いしたまま父は死んでしまう。そこへグリークが現れるが、サロメの家が怪しいと踏んできた警官がロビンを突き止める。ロビンはサロメの心に絆され改心し、金を返す。グリークは仕掛けた毒トカゲの毒にやられてしまう。とまあごちゃごちゃである。

 

そして何故か無罪になったロビンは今日もサロメと舞台に立っているところで映画は終わる。てんこ盛りのストーリー展開で、正直、物語を正確に把握してるか不安ですが、こんな感じでした。

 

「知られぬ人」

サイレント映画ながら、これはなかなか良い映画でした。作劇のうまさか、見せ方のうまさか、どんどん引き込まれてラストまで引き込まれました。監督はドット・ブラウニング。

 

サーカスの場面から映画は幕を開ける。このサーカス団のヒロインナノンは団長の娘で、この日も、相棒で両手のないアロンソからのナイフの標的などになって観客を楽しませていた。アロンソは密かにナノンを慕っていた。ここに怪力男のマラバールがいて、彼もまた純粋にナノンを慕っていたが、ナノンは男の手に触られることに極端に拒否反応を示す性格だった。アロンソは、巧みにマラバールがナノンに嫌われるように仕組んでいくが、純真なマラバールはそんなアロンソをいい奴だと思っていた。この日も娘に色目を使うアロンソを団長が滅多打ちにするするところをマラバールは助ける。

 

しかし、実はアロンソには両手があった。それを知るのは相棒で親しいコッホという背むし男だった。二人は巡業先で泥棒を繰り返す悪人だった。しかもアロンソの左手の親指は二本ある奇形だった。たまたま、コルセットを外し両手を自由にしていたアロンソの姿を団長に見られて、喧嘩になりアロンソは団長の首を絞めて殺してしまう。その現場で、二本指の男が絞め殺すのを一瞬ナノンが見てしまう。警察は泥棒と絞殺犯は同一と判断し指紋を調べ始める。

 

アロンソは、ナノンとマラバールをさらに遠ざけるためにサーカス団を旅立たせる。そんなアロンソにコッホは、ナノンと結婚しようとしても手があるのがバレれば嫌われるだけだと諭す。しかし、アロンソはナノンを手に入れるために狂気へと進んでいく。弱みを握る外科医を呼びつけ、自分の両腕を切断させたのだ。アロンソが入院している間に、マラバールとナノンは親しくなり、やがて男性の手に触れられることにも慣れてしまったナノンはマラバールと結婚することになる。

 

傷が治って退院したアロンソはナノンに会いにくるがそこでナノンとマラバールが結婚することを知り愕然とする。マラバールは新しい劇場で両手を馬で左右に引っ張らせ、馬は地面が動く台車を走ることで、マラバールの腕が安全なまま、怪力を見せる芸を企画していた。それを聞いたアロンソは、ショーの当日、レバーを操り馬が走る台車の動きを止める。腕を引っ張られるマラバール、暴れ始める馬、あわやという時、ナノンが馬の前に体を投げ出す。それを見たアロンソはナノンを庇い、馬に踏まれて死んでしまう。真実を知らないまま、マラバールとナノンは結婚して幸せになって映画は終わる。

 

ある意味、恐ろしい展開ではあるが、見るものを楽しませる展開は実にうまく組み立てられていて、どんどん物語に引き込まれてしまいました。単純に面白かったです。