くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「大綱引の恋」

「大綱引の恋」

佐々部清監督の遺作となった一本。遺作でなかったら行かないところの典型的な日韓友好ローカル映画でした。でも、さすがに佐々部清監督、それなりのレベルには仕上げているからすごいもんです。

 

鹿児島で四百年の伝統の川内大綱引の紹介映像、そして主人公達の幼い日々の映像から映画は幕を開ける。東京で一人立ちすると地元を離れた主人公武志は、リーマンショックで会社が潰れ、父が親方をする鳶の会社有馬組に戻っていた。この日、地鎮祭があり、父から遅れないようにと念を押されていた武志だが、向かう途中、一人の老人が倒れる現場に遭遇、その対応をしていて、日本へ来ていた研修医ジヒョンと知り合う。

 

武志の父寛志は、一生に一度しかできない大綱引の一番太鼓を務めたことがあり、息子にも是非務めて欲しいと願っていた。物語は大綱引の一番太鼓をめぐる展開を軸に、武志とジヒョンの恋、さらに武志の幼馴染で自衛隊員の典子や、妹数子の妊娠のエピソード、さらに母文子の癌告知などが絡んでのてんこ盛りの展開となる。

 

普通の観光映画なのだが、そのエピソードの詰め込みを心地よく整理したリズムづくりが流石に職人の技で、クライマックスの大綱引の場面への下はなかなかいいテンポでなだれ込んでいく。本来、武志が一番太鼓ではなかったが、選ばれた幼馴染が自ら骨折して武志に譲るという少々無理矢理感のある展開もあるものの、それなりに無難に仕上がった感じです。

 

大綱引が終わり、武志のチームは勝ち、研修が終わって一旦韓国に帰るジヒョンを見送る武志が、必ず迎えにいくからと映画は終わっていきます。普通の作品といえばそれまでですが、佐々部清監督は好きな監督の一人なのでこれが遺作と思うと寂しい限りでした。