「リカ 自称28歳の純愛モンスター」
テレビドラマの映画版なのですが、あまりにもリアリティのない雑な脚本と演出に、バカにされている気分の映画だった。荒唐無稽なのは構わないが、締めるべきは締めないと、適当感大爆発してしまう。まさにそんな典型だった。監督は松木創。
テレビドラマ部分の、雨宮リカが殺人を起こしてきた下りが簡単に描かれ、ラストで怪我を負って病院へ入院したが、看護師を殺して脱走、最後にストーカーしていた本間の家を訪ね、二人とも行方不明になったという経緯から物語が始まる。当時、本間の家に駆け込んだ新米刑事が、目、鼻、舌、耳、両手両足だけ残された現場を見て発狂、今は入院している。すでにその事件から3年が経っていた。
発狂した刑事の見舞いにいく奥山刑事は、その時の責任を感じ、リカを見つけ出すため捜査を続けている。奥山には婚約者で同じく刑事の青木孝子がいた。そんなある時、山中でスーツケースに詰められた死体が発見される。それは手足も、目、鼻、舌、耳のない死体で、本間だと断定される。人形として拉致していたリカが、本間が死んでしまったため捨てたものと捜査本部は結論する。
奥山は、リカが新たな恋人を探すはずだと、片っ端からマッチングアプリを登録して、上司には黙って個人的にリカを探し始める。別に個人でやらなくても、どうにでもできるだろうにというリアリティのなさから物語は流れていく。
やがて、奥山はリカと接触に成功、これまでの捜査資料から巧みに会うように仕向けていく。そして奥山の自宅で会うことを約束する。一方、孝子は、最近奥山と連絡がつかないことが心配で、この日、同僚と奥山のマンションへ行くことにする。
奥山のマンションにリカがやって来る。奥山は、油断しているリカに手錠をかけ、刑事だと名乗るが、リカはポケットに忍ばせていた注射器を奥山に刺す。なんともお粗末な刑事である。夜、奥山のマンションを訪れた孝子たちは、奥山が死んでいるのを発見。孝子は奥山がリカとの接触に使っていた携帯を使って奥山になりすまし、再度リカを呼び出すことに成功する。
待ち合わせの倉庫にやってきたリカに大勢の刑事たちが取り囲む。しかし、突然リカは人間離れしたスピードで逃げ出し、刑事たちは見失ってしまう。どんな刑事たちやと、呆気に取られてしまう展開。と、突然一人になった孝子の前にリカが現れるのだが、あれ?他の刑事どこ行ったの?という感じである。さらに、リカは飛ぶように倉庫の屋根まで飛び上がるし、壁は這い登るし、もう荒唐無稽な化け物の姿を現す。孝子が発砲するも射止められず、にもかかわらず他の刑事は誰も戻ってこないので、結局、孝子はリカに注射されて拉致される。全く笑い話である。素人映画でもここまで適当にやらないだろうに。
リカの部屋で縛られている孝子に、メスを持ったリカが迫る。そして片目を刺し、続いて拳銃を突き付けようとしたところへ、孝子の同僚が駆けつける。そして、奥山のスマホの音声を流してリカが気を緩めたタイミングで発砲しリカを倒す。え?他の大勢の刑事どこいった?
で、一件落着して、リカは入院。一方孝子はおかしくなったのか、リカと同じように奥山の人形を置いて、食事をしている。ベッドのリカが突然意識を取り戻すというお決まりのラストで映画は終わる。
リカが人間離れした動きをするのは構わないが、警察の描き方がいかにも雑でリアリティがない。出演者が忙しくてスケジュールが合わず、あれだけしか撮れなかったのかと思わせるほどに、適当感満載で、いったい観客を馬鹿にしているのかと思った。最低映画の一本でした。