くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ペトルーニャに祝福を」「クレールの膝」「ある現代の女子学生」

ペトルーニャに祝福を」

面白い映画なのですが、結局、どこへも落ち着かずに映画が終わって行くので、消化不良のままでエンディングを迎えてしまいました。もう少し、映像からいろいろ感じ取らなければいけないのかとも思うのですが、理解が及びませんでした。監督はテオナ・ストゥルガル・ミテフスカ。

 

水のないプールの中、一人の女ペトルーニャのカットと派手な音響、暗転してタイトルから、ベッドで目覚めたペトルーニャに母が朝食を差し入れる場面へ移って映画は始まる。この日、仕事の面接がある。北マケドニア、シュティブという小さな街に住む32歳のペトルーニャは、大学を出たものの仕事がなく、いまだにウェイトレスしかしたことがない。美人でもなく太めの体型で、この日の面接でもセクハラまがいの態度で臨まれ不採用となる。

 

帰り道、地元の伝統儀式に巻き込まれてしまう。その儀式とは司祭が川に投げ入れた十字架を男たちが奪い合い、手に入れた者には幸せが訪れるという者だった。たまたま橋の下で眺めていたペトルーニャは、十字架が流れてきたので思わず飛び込み手に入れてしまう。司祭も彼女が取ったことを認め、動画にも撮られ周知の事実となるが男たちが黙っていないで、大騒ぎとなる。やがて警察がペトルーニャの家まで来て彼女を警察署に連れて行く。さらに地元のリポーターも彼女を取材すべく行動する。

 

警察署長も司祭もどんどん騒ぎが大きくなる上に、ペトルーニャは十字架に固執するので困り果てて行く。なんとか穏便に返却させようとするがペトルーニャもそれに応じない。やがて男たちは暴徒となって警察署に押しかけ、ペトルーニャは自宅に帰る事もできなくなる。警察署長は巧みにペトルーニャから十字架を取り上げ署の金庫へ入れ、検事を呼ぶ。検事もなぜ呼ばれたかわからないままにペトルーニャと話すが、十字架は署長にとられたと話す。そして、署長は十字架をペトルーニャに返し、帰宅を許す。一緒に出てきた司祭にペトルーニャは十字架を返し、そのまま帰っていって映画は終わる。

 

終盤のたたみかけるような唐突な展開にあっけに取られるし、あの熱心なリポーターについてはあのあと言及されないし、熱心な信者でもあった母などについても尻切れで、ペトルーニャの世話をしていた若い警官とペトルーニャとの握手に何がしかの希望は見られるものの、ちょっとラストがあっけなさすぎて戸惑ってしまいました。

 

クレールの膝

大人たちと少女たちの恋愛ごっこのような展開が、独特の会話の応酬とネストール・アルメンドロスの美しいカメラで描かれて行く透明感あふれる作品でした。「六つの教訓話」の第五話です。監督はエリック・ロメール

 

結婚を控えた中年のジェロームは少年時代を過ごした避暑地アヌシーを訪れ、旧友で女性作家のオーロラと再会して映画は始まる。淡いブルーとレッドの色彩を中心にした画面作りが美しい。オーロラが仕事部屋を借りているボルテール夫人の家を訪ねた際、夫人の娘ローラと出会う。

 

ローラはまだ10代の少女だが大人のジェロームに父親に抱くような不思議な愛情を感じる。そんな気持ちを察するジェロームは、オーロラの次回作のネタにと誘惑してみようと提案する。ローラにはボーイフレンドはいたがローラにとっては物足りなかった。ジェロームは、ローラと親しくするうちに、さりげなくキスをしてみたりするがローラは決して拒絶することはなかった。

 

そんな時、ローラの姉クレールが恋人のジルを伴って現れる。ジェロームは、まだまだ成熟しきっていないもののみずみずしいほどの魅力のあるクレールに惹かれる。特に、クレールの膝に心奪われてしまう。ジェロームは、クレールにも感情を向けるが、クレールの心はジルから離れることはなかった。

 

映画は、ジェロームのクレールへの想いやローラとの関係をオーロラと話しながら、ジェロームが行う行動を、一日単位で短いシーンを重ねて描いていきます。クレールの恋人ジルがクレール以外の女性とキスしているところをたまたま見かけたジェロームは、ある時、クレールをボートに乗せてアヌシーへ向かう途中雨に降られ雨宿りした所で教える。そして、泣くクレールの膝を優しく撫でる。

 

やがて一ヶ月がたち、ジェロームが帰る日が来る。前夜、オーロラにクレールとの経緯などを話し、やがてボートで去っていく。その後、ジルがクレールの元を訪れ、ジェロームが見かけたミュリエルという女性とのことを正直に話し、クレールを優しく抱き寄せキスをする。その姿をじっと見つめるオーロラのカットで映画は終わる。

 

ジェロームが作り出していく小説のネタのような物語と、現実の少年少女たちの恋愛模様の微妙なズレを描いていく作品で、会話劇が中心になるエリック・ロメールらしい作品。淡々とした会話劇なので、しんどいところもありますが、少女たちの瑞々しさで最後まで見ることができます。透明感あふれる作品でした。

 

「ある現代の女子学生」

一人の女子学生を追っていく感じの記録映画的なショートフィルムでした。監督はエリック・ロメール