くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「モンソーのパン屋の女の子」「シュザンヌの生き方」「ベレニス」「獅子座」「モンフォーコンの農場」

「モンソーのパン屋の女の子」

「六つの教訓話」シリーズ第一作。女性を追い求めていく一人の男の物語ですが、実は女性はそんな男の姿をずっと見ていたというなんともコミカルな一本、面白かった。監督はエリック・ロメール

 

主人公である私が友人とカフェにいる。いつも気になる一人の女性シルヴィーが脇を通る。友人が声をかけろというが、なかなか踏ん切れないままに、私と友人がシルヴィーとすれ違う絵が繰り返される。ところが、ふとした偶然から私はシルヴィーと肩をぶつけてしまい、思わず声をかわすことになる。まもなくして友人は仕事で離れていくが、なぜかそれからピタリとシルヴィーと会えなくなる私。

 

私は待ち伏せしたり、いそうなところを探したりするが全然出会えず、立ち寄ったお菓子店の店員にちょっかいを出し始める。そしてその店員とデートの約束をし店を出て少しいったところで、杖をついたシルヴィーと再会する。なんと捻挫をしていた。しかも、彼女の部屋はお菓子店の向かいで、いつも私のことを見ていたという。

 

そして私はシルヴィーとデートを約束し向こうへ歩き去って映画は終わる。ニヤリとしてしまうラストシーンで、自分に出会えなくなり苛立っている男を陰から盗み見ていた女性のちょっと小悪魔的な展開が楽しい一本でした。

 

「シュザンヌの生き方」

「六つの教訓話」シリーズ第二作。したたかな女たちの物語に翻弄されていく男たちをユーモラスに描くタッチがとにかく楽しい映画でした。監督はエリック・ロメール

 

主人公のベルトランには何事にも調子良く振る舞うギヨームという友人がいる。ベルトランはソフィーという女性が気になっていて、ギヨームは自宅でやるパーティに呼んで仲を取り持とうと提案する。そこへ一緒にきたのはシュザンヌという女性で、ギヨームがソフィーにかかりきりで話をしているので気が気ではない。ソフィーが先に帰り、ギヨームはようやくシュザンヌの方に近づきシュザンヌを家に泊めてやる。これはギヨームがシュザンヌを落とすための手だった。そんなギヨームを半ば羨ましく思うベルトラン。

 

シュザンヌとギヨーム、ベルトランは一緒に楽しんだりを繰り返すが、女に気の多いギヨームは、次第にシュザンヌから遠ざかる。一方シュザンヌはベルトランに近づいてくる。ちょっとしたお金が入り、裕福になったシュザンヌにベルトランもギヨームも奢ってもらいながら豪遊する。

 

久しぶりにシュザンヌにあったベルトランだが、シュザンヌはタクシー代を貸してほしいという。ギヨームにも借金をしているしソフィーにも頼めないというが、ベルトランは、持っている金を本に隠したままで、財布には手持ちがなかった。そこで、ベルトランはシュザンヌを家に泊めてやることにする。翌朝、シュザンヌは先に帰った後だったが、なんと本に隠していた金がなくなっていた。たまたま、先日もギヨームを招いた事もあった。

 

ベルトランは、シュザンヌの住所を探すが、ソフィーはシュザンヌが結婚することになったというのを聞く。ベルトランの金を獲ったのは誰かはわからないが、女の子を遊び相手に適当に扱っていたつもりのベルトランやギヨームが実は女性から適当にあしらわれていた。となんともユーモアあふれるラストでした。

 

「ベレニス」

エドガー・アラン・ポーの「ベレニス」というテロップと不気味な音の後始まる、まるでサイレント映画のような演出で語る作品。監督はエリック・ロメール

 

私といとこのベレニスは全く性格が違うという説明から映画は幕を開け、ひたすらサイレントでセリフというものはなく、私の一人語りで話が進む。

 

ある時、突然ベレニスは発作を起こして倒れてしまう。しかし私がレコードをかけているうちに彼女は目を覚まし、いつの間にか恋に落ち、結婚をするのだが、実はそれは私の妄想で、気がつくと自分は暗がりの中にいて、ベレニスは発作の後死んでしまったことを知る。という物語。ちょっとシュールでホラーな一本でした。

 

「獅子座」

これはなかなか面白かったです。のちの透明感のある作風とは少し違っての悲惨そのもののストーリーですが、それでも、どこかユーモアを交えた演出はエリック・ロメール映画という感じです。エリック・ロメール監督の長編第一作。

 

一人の電報配達人が颯爽と走っている場面から映画は幕を開ける。かつて著名な音楽家だったが、今や安アパートで暮らすピエールは、電報配達人のベルの音で目が覚める。悪態をつきながら電報を受け取るが、なんとそれは叔母が亡くなり遺産を相続するという内容だった。一気に機嫌を直した彼は友人を呼び、パーティを始める。今住んでいるアパートは、家主が売ってしまったので明日には出ていかなければならなくなるが、ピエールは全く気にしなかった。

 

家でのパーティに飽き足らずモンパルナスに繰り出して大騒ぎをする。夜が明けて、友人たちは帰っていく。そしてバカンスや仕事でパリを離れていく。時は約半月後、ピエールは安ホテルで暮らしていた。叔母がピエールの相続権を剥奪していて、いとこに全ての遺産が行き、ピエールは一文なしになったのだ。ピエールは、友人を頼って街を彷徨うが、誰もがバカンスに出かけていたり、仕事で出張していない。みるみる日々の生活、食事さえもなくなる。服はボロボロになり、靴は破れ、食べ物を盗もうとして追い返され、拾い食いをしながらどんどん落ちていく。ところが、ここに調子のいいホームレスと出会い、相棒を組んでなんとか生きていけるようになる。時は約一ヶ月以上が過ぎていた。

 

バカンスや出張に行っていたピエールの友人たちが戻ってくる。そんな頃、遺産を相続したピエールのいとこは車の事故で死んでしまう。ピエールの友人たちは、ピエールが遺産を全て相続することになったことを知るが行方がわからない。一方ピエールは相棒のホームレスと、観光客らに恵んでもらいながら生きていた。たまたま立ち寄ったところでいつものように調子のいいトークで金を恵んでもらおうとしていて、傍に来た流しのバイオリン弾きを見つけたピエールは、そのバイオリンをとって軽く弾く。その音をたまたまその店にいたピエールの友人が聞き、ホームレス姿のピエールを見つける。

 

ピエールが堕ちてしまった自分を嘆いていると、友人が駆けつけ、ピエールが遺産を相続したことを知らせる。歓喜するピエールは友人の車で去って映画は終わる。

 

なんとも皮肉の効いた作品で、みるみる落ちぶれていくピエールの姿の描写が恐ろしくリアルなので、この先が予想できない。そこを逆手にとってのどんでん返しと冒頭のシーンにつながるようなエンディングがなんともコミカルで見事。なかなか面白い映画でした。

 

「モンフォーコンの農場」

近代化が進んでくるモンフォーコンの農場に嫁いだかつては教師だった一人の女性の短編映像。監督はエリック・ロメール