くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「高校さすらい派」「喜劇・男は愛嬌」「喜劇・女は度胸」

「高校さすらい派」

当時の時代色を映し出した学園ドラマという出立ちの一本。立て篭もり、警察の乱入、悲劇の死、そしてラストの演出など、一筋縄で終わらせない作品作りのこだわりを感じさせる映画でした。監督は森崎東

 

剣道場で大暴れする主人公荒木が少年院を出所してくるところから映画は始まる。恩師の指示で鳥取の高校へ編入した荒木は、そこで井上という落第生と出会う。井上は学校の理事長の娘和子に想いを寄せていた。和子は学校の一方的な授業料アップや寄付金強制に敢然と立ち上がる。そんな和子に賛同する荒木と井上は三人で学校を相手に戦いを挑んでいく。

 

浜辺の廃船に立て篭もった三人だが、学校側は警察を突入させる。しかし、和子救出の際、船から落ちた和子は死んでしまう。講堂での葬儀の場で綺麗事を言う理事長に罵声を浴びせる井上。浜では荒木が、襲ってくるガスマスクをつけた警官たちと戦いを始める。こうして映画は終わる。

 

権力に対する学生の反乱という、まさに制作当時の世相の縮図のような作品で、ありきたりに学園ドラマで終わらせないラストの処理も面白い作品でした。

 

「喜劇・男は愛嬌」

軽妙な松竹らしい喜劇で、たわいのない映画ですが出てくるキャストが「男はつらいよ」シリーズとほとんど同じなので、区別がつかない感じでした。監督は森崎東

 

小川春子が少年院を出所する所から映画は幕を開ける。実は彼女が少年院に入るきっかけを作ったのは五郎というお調子者の男でマグロ漁船に乗っていたが帰ってくる。少年の更生のボランティアをしている五郎の弟の民夫は帰ってくる春子を真っ当な生活にするべく奔走し始める。しかし、五郎が帰ってきたので、ドタバタのドラマが始まる。

 

五郎は春子への責任を感じ、春子を玉の輿に乗せるべく走り回り、一方民夫はそんな五郎をヒヤヒヤ見つめる。見合い相手が次々と現れ騒動が起こるのがお話に中心で、実は五郎も民生も春子のことが好きだという背景があり、そこに五郎たちが住む長屋を再開発のために追い出そうとする地主が絡んできたりと大騒ぎの展開になる。

 

結局悪の道に戻りかけた春子を民夫が助け、民夫と春子の幸せを願って五郎は再びマグロ船に乗って出て行って映画は終わる。まさに「男はつらいよ」シリーズと同じストーリー展開には笑ってしまうが、軽妙で肩のこらない気楽な喜劇でした。

 

「喜劇・女は度胸」

これはなかなかの傑作でした。単純な物語を、すれ違いドラマを巧みに使ったラブコメディに仕上げた手腕は見事。しかもラストには日本映画らしい人情ドラマをさりげなく盛り込んだ脚本も秀逸。いい映画でした。監督の森崎東のデビュー作である。

 

何をやってもとろくてウジウジしている主人公の学はこの日も工場の同僚に誘われ遊びに行く。他の同僚が街で女性に声をかけてうまくやっているが学ぶはそんなことはできず、たまたま電車で前に立った女性と会釈をするくらい。仕方なく一人レコード店で試聴していると電車で見かけた女性と偶然再会する。彼女の名は愛子と言って四つ葉電気の女工をしていた。

 

なぜか気が合った二人はみるみる親密になり恋人同士になる。そして愛子の誕生日に学はゲーテの詩集をプレゼントする。愛子は会社の寮で暮らしていた。学には勉吉という調子者の兄貴がいた。ある朝、勉吉がゲーテの詩集を遊び半分に読んでいるのを見かける。勉吉が買ったコールガールの女にもらったのだという。そのコールガールは四つ葉電気の女工だと聞いた学はてっきり愛子のことだと勘違いする。その前夜学は愛子にプロポーズもしていたが、疑念を持った学は愛子に敵意を持ってしまう。

 

学は勉吉に頼んで、コールガールを呼んでもらうが、面と向かう前に逃げてしまう。勉吉が親しくしているコールガールは笑子で、笑子もまた四つ葉電気の女工で愛子の友達でもあった。学の父泰三も学が心配でコールガールを呼んで見たりする。こうして、学の疑念がすっきり晴れないままのすれ違いドラマが展開、そこに勉吉と泰三の親子喧嘩も繰り返され、テンポよく流れて行く。

 

勉吉は笑子と結婚の約束をする一方、笑子の家を訪ねた学は遊びにきた笑子の友人愛子と会い、ようやく疑いが晴れるが、一旦疑われた愛子は学のことが許せず、愛子は学の家に押しかけてくる。そこへ勉吉と笑子もやってきて、何もかもがすっきりと解決するかに見えたが、愛子はスッキリできず、平謝りする学を許せない。ここで、この場面まで一言も喋らなかった学らの母ツネが口を開き、笑子と愛子を部屋に入れて切々と話す。しかも、勉吉は泰三と血は繋がってないという告白までする。さらに笑子には子供がいることもわかる。

 

どうなることかという展開になるが、勉吉はそれでも笑子と結婚すると言い、愛子も結局学のひたむきさに打たれる。泰三とツネはこのままどちらかが出て行くかという展開になるものの、ツネは静かに泰三を布団に寝かせてやって映画は終わって行く。

 

完成品ではないものの、実に見事に組み立てられた作品で、さりげないセリフの数々も丁寧に物語を牽引して行く。少々あざとすぎる学のキャラクターは流石に鼻についてくるのですが、終盤の流れで許せてしまう。非常によくできた佳作作品だと思います。