くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「帝銀事件 大量殺人獄中三十二年の死刑囚」「ニワトリはハダシだ」

帝銀事件 大量殺人獄中三十二年の死刑囚」

テレビ番組ですが、松本清張原作、新藤兼人脚本ということもあり見にきた。とにかく長い。当時まだ控訴中だったこともあり、ドキュメンタリータッチで延々と描いていくのはさすがに辛い。特に、逮捕までのテンポの良い展開と打って変わっての逮捕後のだらだらが見ているこちらがぐったり来るところがあり、テレビなら耐えられるという形になっている。見応えあるといえばそれまでですが、映画作品というものではなかった感じです。監督は森崎東

 

戦後すぐ、当時まだ質屋の佇まいを改築しただけのようなものが銀行だったという説明から、そんな民家のようなところから一人の男が出てきて映画は始まる。少し時間が遡り、帝国銀行内、一人の男が訪ねてきて、毒物を飲ませて去っていく。女子行員が助けを呼んで事件が発覚、やがて捜査が始まるまでの流れが描かれる。

 

捜査の中で、平澤画伯が渡した名刺による捜査から、731部隊の戦時中の人体実験の記録と引き換えに、731部隊の戦犯が無罪で放逐されたGHQの政策が語られていく。そして、強引に平澤が逮捕され、延々と続く取り調べシーンから、裁判シーン、そして第一審での死刑判決が申し渡されて映画は終わっていく。

 

事件は史実だが、そのほかはあくまでさまざまな資料からのフィクションではある。なんの疑いもなく受け入れてはいけないが、一方で、疑問を持つことは正しい。ただ、メッセージだけが一人歩きする後半が少ししんどかった。

 

ニワトリはハダシだ

非常に良くできた秀作だと思いますが、ちょっと物語を詰め込みすぎた感があります。検察庁汚職の問題、在日朝鮮人の問題、知的障害者の問題、それぞれがそれぞれ絡み合うようにはできていますが、最後は納めどころがわからなくなったかのように大団円を迎える。しかも、毒が前面に出て、かつての森崎東監督なら、大爆笑の影にさりげなく散りばめていた毒っけが前に出てきてややメッセージが鼻につく感じになったのはちょっと残念です。

 

終戦後、帰国すべく乗り込んだ北朝鮮の船が舞鶴沖で爆発して、ほとんどが死んでしまったという史実の説明から映画は幕を開ける。知的障害者の施設に向かうバスの前で、先生が踊っている。勇という一人の青年がまだきていないと心配する。先生の名前は桜井直子、父は検察庁刑事部長らしく仕事一筋。一方、一人の青年勇に潜水を教えようとしている男大浜守。勇は知的障害がある。守の妻澄子は千春という勇の妹を連れて離婚している。初潜水がうまくいかず、施設にイサムを送り届ける守だが、すぐに勇は姿をくらます。

 

そんな頃、検事局の汚職問題が起こり、その証拠物件が、舞鶴の地元ヤクザ重山が送った賄賂のベンツに残された上、そのベンツが盗まれ、丹波や若手の立花の刑事が捜査を進める。重山らも警視正を味方につけるネタなので必死に探す。たまたま、訳も分からず盗難自動車を海外へ持ち出す組織の手伝いをしてしまった勇は、ベンツの場所、その中にあった証拠物件について記憶していたことから、証拠隠滅のために丹波は勇を少年院送りにするようにと警視正のトップを狙う灰原から命令される。灰原の娘は直子の母で、直子に母は、夫桜井のために離婚をするが、体が弱かった。

 

こうして、証拠物件ベンツを中心に、違法逮捕して証拠隠滅しようとする丹波らと重山、さらに生徒を守ろうとする直子らが絡み三つ巴四つ巴の大混戦が展開するのが本編となるが、あちこちに話が飛ぶうちに、その中心がぶれていく。結局、直子の父桜井直道が、灰原警視正に媚びることをやめて内部告発する決心をして映画は終わっていくが、ベンツと一緒に守が沈めて証拠物件を、勇が潜水で取り出すことに成功したり、澄子と守が仲良くなって、朝鮮の太鼓を奏でたりかなり強引。しかも、いかにも悪徳刑事の丹波朝鮮人の居場所をユンボで壊す派手なラストも無茶振りに近い。

 

言わんとしたいことが山のようにあってそれぞれに必死で力が注がれた感じの作品で、もうちょっと整理したら大傑作になったかもしれない一本でした。