くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「TOVE トーベ」「護られなかった者たちへ」「死霊館 悪魔のせいなら、無罪。」

「TOVE トーベ」

映画としては普通でしたが、ムーミンの生みの親トーベの物語を知ることができたのは収穫でした。監督はザイダ・バリルート。

 

主人公トーベが狂ったように踊っている。傍に酔いつぶれた男性、そしてカットは1944年の防空壕、トーベは子供達にフィンランドに伝わる妖精ムーミンの物語を語っている。オーバーラップしてトーベの自宅、彫刻家で芸術家としての誇りを持つ父がトーベを責めている。そんな父から逃れて部屋を借りたトーベは絵画で芸術家として成功するべく励んでいた。一方で、ホームパーティーをめぐり、恋を繰り返し、1人の妻子ある男性アトスと知り合う。しかし、絵画はなかなか認められない。そんな頃、市長の娘で舞台芸術家のヴィヴィカと出会う。

 

ヴィヴィカは、女性同士でキスすることを教え、そんなヴィヴィカにトーベは夢中になっていく。ヴィヴィカは、生活のためにトーベが書いている風刺画に興味を持つ。それはムーミンという妖精を描いたものだった。ヴィヴィカはパリに旅立ちそこから戻ってきたヴィヴィカはトーベにムーミンのミュージカル舞台をやりたいと提案する。乗り気でなかったトーベだが、舞台は大成功する。やがて時が経ち、トーベは絵本作家として人気者になっていた。

 

トーベは、誘われるままにパリの展覧会に行き、その後のパーティでヴィヴィカと再会する。トーベは懐かしい思いが蘇り、彼女を追ってきたヴィヴィカと夜を過ごすが、トーベはこれが最後だからと別れを告げる。その翌朝、目覚めたトーベは窓から入る風を感じる。そして彼女は、再び油絵を描き始める。パリの展覧会で知り合った女性トゥーリッキが訪ねてくる。絵の題名を聞かれ、旅立ちだと答えて映画は終わる。

 

トーベという女性をストレートに描いた素直な作品という感じの一本で、これという秀逸したものではありませんでしたが、勉強になる作品という感じでした。

 

「護られなかった者たちへ」

原作の良さ、脚本のうまさは見事なのですが、配役がチグハグでせっかくのフェイクが全部無駄になってしまった感じで、映画として昇華しきれなかった点だけは残念。少し、受け入れられない部分のある物語ですが、厚みのあるいい映画でした。監督は瀬々敬久

 

東日本大震災の避難場所から映画は幕を開ける。笘篠が、妻と息子を探して避難所に駆け込んでくる。しかし見当たらず、大丈夫だからという伝言ダイヤルを受け取る。一方、利根という青年は、かんちゃんよと呼ばれている少女、中年の女性けいと知り合う。利根、かんちゃん、けいは避難所で家族のように親しくなる。そして九年の時が経つ。

 

捜査一課の刑事笘篠は、ある事件に遭遇する。それは、拉致して放置し餓死させた殺人事件だった。笘篠は、被害者が勤めていた役所を訪ねるが、そこでは非常に人格者だという噂だけだった。さらに同様の事件が再び起こる。二つの事件に共通するものを見つけた笘篠は、被害者がかつて勤務していた役所を再度訪ね、そこで行われていた窓口の隠蔽の証拠を掴む。さらに、そこの職員で生活保護担当の円山幹子から情報を得ていく。映画は震災直後の利根らの姿、9年後の利根の姿と、震災で妻子を亡くした笘篠の苦悩などを交互に描いていきます。

 

震災後、地元で仕事が無くなった利根は栃木へ仕事に行き、間も無く宮城に戻ってきて高校生になったかんちゃんと再会する。しかし、遠島けいは、生活が苦しく餓死寸前であることを知る。そして、三人で生活保護の申請のため役所を訪れるが、その時に対応したのがのちに被害者となった三雲と城之内だった。一旦は申請は降りたのだが、何故か、けい自身が申請を取り下げたことを知り、利根は真摯に対応しなかった三雲らにあたり、さらにけいが餓死してしまったことにキレ、役所に火炎瓶を投げ逮捕されてしまう。けいには若き日に手放した子供がいて、申請することでその子供に迷惑がかかることをおそれたのだ。

 

笘篠は、円山と話をするうち、生活保護の実態を目の当たりにし複雑な心境となるが、捜査の中、三雲と城之内に関わる人物の中で利根を発見し容疑者として捜査を始める。一方、かつて三雲らと一緒に役所にいた上崎という男が政治家として活動していた。利根の次のターゲットが上崎と判断した笘篠らは、上崎に張り付き、接触してきた利根を逮捕する。利根は間も無く自白するが確たる証拠が見つからないままに難航し始める。

 

笘篠らは、利根の背後にある何かを探るために震災直後の利根らの周辺を探るうちに、当時かんちゃんと呼ばれていた少女の行方にたどり着く。かんちゃんは、本名を幹子と言い、笘篠らが聞き取りをした円山幹子がその成長した姿だった。そんな頃、上崎が何者かに襲われ行方不明となる。拉致した場所の推測がつくという利根の言葉を頼りに笘篠らが向かう。そして、上崎を拉致している円山幹子を発見する。そして丸山を逮捕、事件は収束していく。笘篠は、避難所でかんちゃんと言葉を交わしていた。笘篠の息子も黄色の服を着ていて、かんちゃんも同じ服だったからである。

 

利根を搬送していく途中で、笘篠は利根と二人きりで話す。その時利根は、震災の時に、助けを求めている黄色い服を着た少年を助けにいけなかったことを後悔し、避難所で見かけたかんちゃんを守ろうとしたのだと告白する。こうして映画は終わっていく。

 

それぞれの人生にさりげなく関わっていく人物をオーバーラップさせて物語を綴り、かつて守れなかったそれぞれの想いを一つにまとめていく流れはうまいのですが、どうも幹子が犯罪を犯す動機がまるでテレビドラマレベルにしか見えないのが非常に残念。可もなく不可もない一本ですが、一級品には仕上がりきれなかった気がします。吉岡秀隆が政治家に見えない弱さ、清原伽耶が今ひとつ迫力に欠けるのも残念。配役がチグハグになっているのだけが気になる一本でした。

 

死霊館 悪魔のせいなら、無罪」

面白かった。このシリーズは正当な怖がらせ方もですが、実話に基づくという前提ゆえかストーリーがしっかりしているので見ていて飽きません。今回も、悪魔の恐怖もですが謎解きの面白さも堪能できました。でも、「エクソシスト」へのオマージュに見えるようなシーンがたくさんあって楽しかった。監督はマイケル・チャベス

 

デビッドという少年に悪魔が取り憑いたということでウォーレン夫妻が乗り込んでいる。まもなくして神父もやってきて悪魔祓いを始める。この冒頭のシーンは「エクソシスト」そのままに見えるのがとにかく楽しい。そして一気に引き込まれるのですが、デビッドに取り憑いた悪魔を取り除くために、デビッドの姉デビーの恋人アーニーが、自分に乗り移れと叫んだことから物語は本編へ。エド・ウォーレンが、気を失う寸前、そのアーニーの言葉を聞いて、そのまま病院へ入院する。

 

一命を取り留めたエドは、デビッドの家族に危険を知らせるように妻ロレインに依頼するが、すでにアーニーが殺人を起こしていた。やがてアーニーは逮捕されるが、悪魔に取り憑かれたことが原因だとウォーレン夫妻は説明する。しかし、アーニーに悪魔付きの証拠が見られない。ウォーレン夫妻はデビッドの家に行きその地下に隠されていた黒ミサのオブジェを発見、さらに似通った事件を探す中、もう一件そのオブジェが関わった事件を見つける。そして、元神父で今はオカルトの研究をしているカストナーを訪ねる。そして、調べるうちにこの呪いについて書かれた書物を見つけるが肝心の部分が訳せない。ロレインは単身カストナーのところへ行く。

 

一方、留置所にいるアーニーは、悪魔付きの症状が現れ始めてきた。折しもエドは真犯人はカストナーの娘であることを見破り、ロレインの後を追う。ロレインはカストナーの住まいの地下にあるクロミサの祭壇を壊すべく地下へ進む。駆けつけたエドだが、逆にカストナーの娘に呪いをかけられ、ハンマーでロレインを襲う。しかし間一髪、エドのハンマーは祭壇を破壊、カストナーの娘は悪魔に魂を奪われ大団円となる。こうして映画は終わっていきます。

 

実際のアーニーの裁判やらが流れる中でのエンドクレジットですが、映像は明らかに「エクソシスト」に似通っている部分が多々あり、それが返って楽しめることになりました。B級ながらホラー映画としては一級品の出来栄えだった気がします。