くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「クリスマス・ウォーズ」「トムボーイ」「スクールガールズ」

「クリスマス・ウォーズ」

なんともスケールのちっちゃな凡作だった。メル・ギブソン主演というだけできた感じです。もうちょっと面白いかと思ったのに残念。監督はイアン・ネルムス、エショム・ネルムス。

 

いかにも金持ちの少年ビリーが偉そうに学校へ行く。この日はクリスマスイブ、科学展に毎年優勝してきた彼は今年も出品するが、なぜか次点に。怒ったビリーは殺し屋に仕事を頼む。一方プロの殺し屋ジェイソンはこの日も仕事をしていたが、クソガキビリーにつまらない仕事を頼まれる。今年科学展で優勝した少女を脅して辞退させるというものだった。

 

ここはカナダの山中で暮らすクリス。彼は実はサンタクロースだった。しかし、世の中の子供達はサンタクロースを蔑ろにし始め、国からの援助も減り、毎年のプレゼントにも財政的に苦しくなっていた。仕方なく軍事物資の製造を始めることになっていた。

 

一方ビリーは今年もサンタクロースからのプレゼントを楽しみにしていたが、なんと届いたのは石炭だった。怒ったビリーは殺し屋にサンタクロースを殺害してくれと依頼する。殺し屋は様々な情報から、クリスの住まいを見つけ、襲撃をかける。そしてクリスを撃ち殺すのだが、クリスの妻に銃撃され殺し屋は死んでしまう。

 

カットが変わると、ビリーの家に来客、なんとクリスとその妻だった。クリスは無事だったのだ。そしてビリーを散々脅して帰っていく。クリスは殺し屋に破壊された製造工場を規模を拡大して再建し始めていた。で、これで映画は終わる。

 

なんやねんと言う作品で、もっと遊び心満載のふっ飛んだ映画かと思ったががっかりでした。

 

トムボーイ

ちょっと洒落た映画でした。LGBTとか性同一性障害とか大人が張ったレッテルが馬鹿馬鹿しくなるとってもピュアな性の物語。子供時代は誰もが男の子であり女の子であるという中性感があると思う。そこを切り取って素直に映像にした手腕は見事でした。監督はセリーヌ・シアマ。

 

一人の男の子?が父の運転席で車を運転しながらはしゃいでいる場面から映画は始まる。転居を重ね、この日も新しい家にやってきた。先についていたのは妊娠をしている母と妹のジャンヌ。この妹、ロングヘアでいかにも可愛い女の子然としている。ショートヘアの子供はロールという女の子だが、男の子のような格好で男の子のように振る舞っている。

 

ロールは新しい家で友達もいなかったが、近所に住むリザという女の子と仲良くなる。空き地では子供達が遊び、ロールはミカエルという名前で男の子のふりをして仲間に入る。水着を工夫したりしながらバレないように振る舞い、リザはミカエルに好意を持ち始める。やがて二人は幼い恋人たちのようになりキスを交わす。

 

次第に慣れてきたミカエル=ロールは、妹のジャンヌも連れて遊びに加わるが、ジャンヌが一人の男の子に突き飛ばされたことでミカエルはその男の子に掴みかかり怪我をさせてしまう。ところがその男の子が母を伴ってロールの家に来たことで、ロールの母はロールが男の子のふりをしていることに気がつく。

 

一夜明けて、母はロールにワンピースを着せ、喧嘩した男の子の家とリザの家を回り女の子だと告げる。そのあと、子供達はロール抜きで遊んでいたがロールがのぞいているのを見つけ、みんなの前で女の子であるとリザに確かめさせる。

 

傷ついたロールはそれから家に引きこもるが、間も無く学校が始まる日が近づく。ロールの母には赤ん坊も生まれていた。ロールはさりげなくベランダに出ると、下からリザがのぞいていた。リザのところに降りて来たロールにリザは、本名を教えてと語りかける。答えるロールの口元に笑みが生まれて映画は終わる。

 

本当に大人が大騒ぎすることなんか意味がないと言わんばかりにとっても純粋そのものの男女の姿が綺麗に描かれていて、とっても引き込まれてしまいます。こういう感性はありそうでないものだと思う。その意味で素敵な映画でした。

 

「スクールガールズ」

思春期を迎えた主人公の心の揺れ動きを捉えた青春ドラマだと思うのですが、スペインというお国柄なのか、その背景にある物を汲み取ることはできませんでした。その意味で、相当に良くできた作品と呼べるのかもしれません。監督はピラール・パロメロ。

 

修道院で合唱の練習に集う少女たちは、声を出さずに口を動かすように指導されている場面から映画は始まる。一通り終えて、では声を出しましょうと言われてタイトルカットが変わる。このオープニングが実に斬新です。

 

バルセロナオリンピックにわくスペイン、修道院に通うセリアは、どこにでもある女子学生の毎日をおくっていた。ある時、バルセロナから一人の生徒ブリサがやって来る。都会育ちで洗練されたブリサにセリアは影響を受け、次第に友人のクリスの姉らとも付き合う中で少しずつ大人の世界へ足を踏み込んでいく。

 

ディスコに行き、男友達と遊び、タバコや酒を試しながら、性に興味を持ち始めた少女たちの女子トークに盛り上がったりする。何かにつけ厳格な学校の先生たちに反抗したりしながらも日々の青春を楽しむセリア達。ある時、クリスの姉らとゲームをした時に、セリアが母一人子一人で、父の姿が見えないことなどで茶化され、セリアは、死んだと聞かされている父のこと、そして何かを隠している母のことに疑問jを持ち始める。以前かかってきた叔母からの電話への不審が蘇ってきた矢先、再び叔母から電話がかかる。

 

一人で向かうという母にセリアは自分も行きたいと告げる。そして母と共に祖母の家にやってきたセリアは、何故母が寄り付かなかったかを空気で感じてしまう。家に戻ったセリアは母と一緒に食事を作ると言う。ここまで過ごしてきた母の思いがようやくわかったような気がした。

 

カットが変わると、合唱の発表会、舞台袖で待つセリアは客席に母の姿を見つける。颯爽と舞台に出て歌い始めるセリア。周りを見ると、友達も一緒だと確信する。セリアのアップで映画は終わっていく。

 

キリスト教への宗教観や未婚の母への世間の目などスペインならではの価値観が背後に流れ、その中で描かれる思春期の少女達の瑞々しい青春の一瞬の輝きが、独特の色合いで描かれています。次第に主人公の心が変化していく様と、何気なく描写される生活の場の風景が見事な映像として映し出されています。なかなかのクオリティの一本でした。