くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「スウィート・シング」

「スウィート・シング」

小品ですが、インディーズ映画の空気を漂わせる16ミリカメラで撮ったモノクロとカラーの画面がとっても心地よくて、主人公たち三人が普通の生活になって締め括るラストにほんのりと癒される作品でした。監督はアレクサンダー・ロックウェル。

 

アイワイプと言われる古き映像処理の画面、丸い画面がふわっと大きくなると一人の少女ビリーと弟のニコが、車のタイヤに釘を立てている。パンクさせて近くのタイヤ業者の仕事を作るというバイトのようなものをしている。父のアダムはアル中で、今夜はサンタの仕事に出かける予定だった。ビリーとニコとアダムの慎ましやかな三人暮らしで、母のイヴは恋人と家を出ていた。アダムは仕事の金でクリスマスツリーを買ってくる予定だった。

 

深夜、飲んだくれて戻った父だが、音楽好きなビリーにはおもちゃのギターを、ニコにはビリーがサンタからのプレゼントに見せて銃のおもちゃを与える。裕福ではないが暖かい生活に見えるが、アダムは酔っ払うと手に負えないほどになってしまうのがたまに傷だった。母と一緒に食事をする約束で出かけた三人だが、母のイヴは恋人のボーも一緒にと言って来たので、結局母抜きになってしまう。

 

そんな時、酒で酔い潰れたアダムは警察に捕まってしまい、アル中治療の病院へ強制的に入院させられる。ビリーとニコはイブのところに行く。そしてボーの別荘へ一緒に出かける。ビリーはそこでマリクというボーイフレンドができる。実はボーは幼児性愛者で、ニコと釣りに行った時にニコにペニスを触らせる。しかしボーに惚れ込んでいるイヴは信じようとせず、ビリーとニコとボーの三人だけにして買い物に出てしまう。身の危険を感じたビリーたちは隠れるがボーが迫ってくる。あわやという時、マリクが飛び込んできてボーを刺す。そして、ビリー、ニコ、マリクは逃げることに。マリクは巧みに車を盗んで三人でマリクの父がいるフロリダを目指す。

 

三人は、金持ちが買ったと思われる空き家の邸宅に忍び込み、服を物色したり、食べ物を食べたりして大騒ぎする。ニコはそこで銃を見つけるが、危ないからとマリクが取り上げて所持する。三人はたまたまキャンピングカーで暮らす老夫婦と出会う。食事をご馳走になり、一晩泊めてもらうのだが、夜が明けると警察が来ていた。てっきり通報されたと思ったマリクは窓から逃げるが、間も無く銃声が聞こえる。ビリーが飛び出すとマリクが倒れていた。マリクは一命を取り留めたもののビリーとニコの記憶がなく、満足に歩けなくなってしまう。

 

ビリーとニコはマリクを病院から連れ出し、浜辺で遊ぶ。間も無くして、治療が終わったアダムが退院してくる。ボーも一命を取り留めたが、満足に喋れなくなってしまう。目が覚めたイヴは優しい母となる。アダム、ビリー、ニコの三人の普通の日常が戻って映画は幕を閉じる。

 

アイワイプを繰り返す映像と、モノクロとカラーを交えたシーン転換にどこか癒されてきて、いかにも出来の悪い男どもに翻弄されている子供たちという殺伐とした構図が、次第に普通の幸せに移り変わる流れがとっても素敵。小品ですがいい映画でした。