くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「すずかけの散歩道」「大当り三色娘」「大江山酒天童子」「蛇娘と白髪魔」

「すずかけの散歩道」

爽やか、その一言に尽きる気持ちのいい映画でした。どろどろしたものは全然ないし、全てが丸く収まる展開も心地いい。それが甘すぎるというならそれでもいいんじゃないかと思う。映画は夢の世界なんだというのを感じられるいい映画でした。監督は堀川弘道。

 

歩道に様々な人が行き来する場面にタイトルがかぶる。このオープニングがまるでヨーロッパ映画のようで素敵。しかもフィルムの美しい色彩に引き込まれる。出版社に勤める久美子の場面から物語が始まり、同僚の野崎が、久美子の父の家の息子春雄に家庭教師を探していることから一人の青年を紹介する。久美子の父は作家でその原稿を取りに行った野崎は、仕事を始めようとしている久美子の姉で既婚の信子と出会う。野崎は信子に仕事を紹介する一方、お互い惚れて二人は付き合い始める。

 

一方、久美子は会社の編集長で男やもめの野呂を慕っているが、野呂は自分は久美子に相応しくないと久美子の気持ちに応えない。また、久美子の弟春雄は、絵が好きで、河原で描いているときに妾の娘だというユリ子と知り合う。そんな様々な恋愛模様を交互に描きながら結局、信子は野崎から離れ、全てが丸く収まっていく。ラストは、河原で春雄が大勢の男女と絵を描いているシーンを捉えて終わっていきます。

 

物語は非常に甘いほのぼのしたものですが、面倒なことが全くないまさに映画は夢の世界だと言わんばかりの展開に気持ちよく劇場を出ることができました。これが黄金期の映画ですね。気持ちいい一本でした。

 

「大当り三色娘」

これは楽しかった。軽い恋愛コメディかと気楽に見ていたが、意外にしっかりとストーリーを組み立てているし、時折挿入されるミュージカル仕立ての場面がとっても洒落ているし、村木忍の美術も美しく、本当に映画を楽しみました。監督は杉江敏男

 

エリ子、トミ子、ミチオの三人娘が描き割りの前で歌う場面から映画は幕を開ける。彼女らはそれぞれ大邸宅で勤める女中、この日も買い物に出て、それぞれに軽い事件に巻き込まれる。そして、それぞれに絡んだ三人の男性との交錯したコミカルな展開が次第に嘘が嘘を呼んでどうしようもなくなりかけたところで一気に糸がほぐれてそれぞれ恋人同士になってハッピーエンド。

 

美空ひばり江利チエミ雪村いずみらの歌声も華やかに、三人三様の恋愛コメディは、とにかく昭和の時代に引き戻してくれます。まるで映画館の外は高度経済成長真っ只中の古き活気ある日本なんじゃないかとさえ錯覚するくらい楽しい。素敵な一本を見た感じです。

 

大江山酒天童子

伝奇映画大作という感じのオールスター映画を堪能しました。大江山の鬼退治を題材にした歴史絵巻という雰囲気の大河ドラマです。監督は田中徳三

 

大江山の鬼退治の伝説のお話の映像から幕を開けて、物語は横暴な関白藤原道長の権勢を描写する所から始まる。関白の側室渚の前が源の大将頼光の妻として遣わされることとなる。渚の前が関白の前で舞を舞おうとするが、突然牛の妖怪が現れ、攫っていこうとする。それを坂田金時が阻止する。

 

大江山には酒天童子と呼ばれる男を頭にした盗賊の一味がいた。彼らを陰で操るのが茨木と言われる妖術使いだった。頼光は大江山の内情を探るべく渡辺綱の妹こつまを使わすが捕まってしまう。実は渚の前の夫備前守は復讐に燃える酒天童子の元の姿だった。頼光は渚の前を大事に扱い、いつの間にか渚の前は頼光を慕うようになっていく。

 

そしていよいよ頼光は大江山に攻め上ることになるが、二人を慕い始めた渚の前は自害する。山伏に扮して酒天童子の前に出た頼光らは、茨木に見破られる。しかし、藤原一門を倒し都に平安を願うことが酒天童子の本来の目的だったこともあり、こつまの訴えかけもあって頼光と酒天童子も和解し、物語は終わっていく。

 

なんとも無理矢理感のあるラストですが、酒天童子が最後に馬でかけていく場面で終わる長谷川一夫スター映画を全面に出した演出もまた映画全盛期の伊吹という感じで楽しめました。

 

蛇娘と白髪魔

楳図かずお原作の恐怖漫画の映画化。夢の中で描かれる恐怖シーンがなかなか工夫があって、演出の力の入れようが迫ってきて怖い作品。結局、人の醜さは姿形だけではないというメッセージで締め括るラストは救いもあって、ありきたりとは言え映画としてまとまったと思います。監督は湯浅憲明

 

何やら不気味な手がケースの中から蛇を取り出し、不審がって入ってきた女中に投げつけて殺す所から映画は始まる。カットが変わり、孤児院に南條家の主人吾郎が一人の少女小百合を迎えにやってくる。実は小百合は吾郎たち夫婦の実子なのだが、手違いで孤児院で育てられていた。吾郎らが家に戻って来ると、女中が心臓麻痺で死んだという騒ぎになっていた。

 

小百合は吾郎の妻夕子、女中のしげに迎えられるが、夕子は記憶障害で普通ではなかった。たまたま吾郎はアフリカから珍しい蛇が手に入ったという知らせを受け急遽アフリカに立つ。その夜から小百合の周りでおかしなことが起こり始める。夕子は何やら仏間に食事を運び、小百合がのぞいて見ると誰かがいるのがわかる。

 

小百合は毎晩のように悪夢を見て、蛇に襲われたりする。そして仏間の奥に二階の屋根裏にタマミという姉がいることを夕子に知らされる。しかもタマミは蛇のようで、背中に鱗があり、何やら不気味だった。次第に恐怖に襲われていく小百合。ここからいかにもホラーという展開が続く。

 

タマミの存在がバレたので夕子は吾郎が帰るまでタマミと小百合が一緒に暮らすように提案して小百合も受けるが、タマミは嫉妬からか小百合に意地悪ばかりをし、とうとう屋根裏部屋に追い出してしまう。しかも、夕子としげが留守の時、タマミは小百合に家を出るように迫り、出ていかなければ恐ろしいことが起こると脅す。

 

その夜、白髪の老婆が小百合に迫る。小百合は必死で屋根裏部屋を抜けて、孤児院で仲良くしてもらったお兄ちゃんのところへ行く。孤児院の園長は事情を察し、アフリカの吾郎にことに顛末を知らせることにするが、後を追ってきた白髪魔に殺される。

 

そんな時、夕子が家で倒れたからすぐに戻るようにと小百合に連絡が来たので、怪しいと思ったお兄ちゃんと一緒に屋敷に向かう。ところが罠を仕掛けられていて二人は地下室に拉致され、白髪魔とタマミに家もろとも火事にして殺されそうになる。実は白髪魔はしげで、タマミと共謀して南條家の財産を狙っていた。

 

なんとか脱出した小百合とお兄ちゃんだが、しげは小百合を向かいの工事現場に追い詰めていく。しかし間一髪で良心に目覚めたタマミが小百合を助け、自分は工事現場から下に居る夕子の上に落ちて死んでしまう。しげも警察に逮捕される。病院で目覚めた夕子は記憶が正常に戻り、小百合と吾郎と三人でタマミの墓参りをする場面で映画は終わる。

 

ホラー映画ではあるが、根底は人間ドラマです。でも前半の恐怖シーンはなかなかの迫力がありました。