くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「リラの門」「ル・ミリオン」「マリグナント 狂暴な悪夢」

「リラの門」(4Kリマスター版)ジ

二年前に見たばかりでしたがたが、やはり名作ですね。人間の心の機微が見事に描かれているし画面も美しい。それでいて、甘ったるい話ではなく、締めるところは締めてある。そういうところが名作と言える所以でしょうか。監督はルネ・クレール

 

夜の巴里、何かを引いている人が画面を横切り、あるカフェに場面は変わる。芸術家という愛称の男が甘いギターを弾いている。そばに飲んだくれのジュジュという男が酒を飲んでいる。やがて芸術家とジュジュは芸術家の家で飲み直そうとする。翌朝、ジュジュが家で目を覚ますと外が騒がしい。どうやら強盗犯人が逃げているらしい。ジュジュはその騒ぎに乗じてドラッグストアで缶詰を盗み芸術家の家に行く。

 

ところがこの家の裏手に犯人のピエロが逃げ込んでいた。やがてピエロは芸術家の家に逃げ、そのまま地下に隠れることになる。カフェにはマリアという女性がいてジュジュは密かに恋心を持っていた。マリアは、芸術家の家の地下に誰かいると感が働き、忍び込んでピエロを見つけるが、ピエロは美しいマリアに一目惚れしてしまう。季節が流れ、ピエロとマリアは恋人同士になっていた。しかし、警察の手が迫る中、ピエロは海外へ逃げることを決意し、マリアへの別れの手紙をジュジュに託す。

 

ジュジュはマリアが外に出られないのでピエロに渡す金だけ預かりピエロとの待ち合わせの場所に行くがピエロはマリアの金だけが目的だと知る。ピエロを責めるジュジュだが、ピエロの自己中心な考えにとうとう撃ち殺してしまう。芸術家の家に行ったジュジュは取り返した金をどうするか話し、世がふけていって映画は終わる。

 

背後に何度も流れる芸術家のギターの音色が素敵な空気感を生み出し、主人公の淡い恋心を巧みに操作しながら展開するドラマはとっても洒落ている。名作らしい名作という一本、何度見ても素晴らしいです。

 

「ル・ミリオン」(4Kリマスター版)

サイレント映画の空気感を残したままのトーキー映画の秀作という感じで、少々終盤がくどいのが玉に瑕ですが、名作の部類に入る一本でした。監督はルネ・クレール

 

巴里の街を俯瞰で見下ろすカメラが一軒の家の屋根に移動する。窓から二人の男が下の賑やかな様子を覗く。何があったのかという問いに、こういうことさという返事が来て物語本編へ。この会場で、絵描きのミシェルは一人の女性と抱き合っている。しかし次々と邪魔が入っているうちにフィアンセのベアトリスという女性が入ってくる。ミシェルは言い訳をしにベアトリスに部屋に行き、上着を脱いで話していると、彼の借金取りが集まってくる。その場を逃げ出すミシェル。ところがこの建物に義賊である泥棒チューリップおやじが逃げ込み警察と追いかけっこをはじめ、二組が入り乱れるドタバタ展開へ。そこへミシェルの友人プロスペールがやってきて、二人で買った宝くじが当たったという。どちらの買った宝くじかと見てみるとミシェルのものだったが、山分けするか独り占めするかで仲違いしてしまう。しかもクジ自体は上着のポケットに入れていたことを思い出す。

 

一方、ミシェルが出て行った後ベアトリスの部屋に入ってきたチューリップおやじはベアトリスにミシェルの上着を借りて逃亡する。チューリップおやじはその上着を、たまたま出会ったオペラ歌手に売ってしまう。ミシェルはベアトリスに上着の行方を聞く一方、プロスペールもその上着を狙って行き先を聞き出す。こうして、上着の行方を追うミシェルとプロスペールのドタバタ劇が延々と続く。そこへベアトリスとミシェルの恋物語も絡んで、ミシェルの借金取りや近所の人たちがミシェルの部屋に集ってきてパーティを始める。

 

しかし、結局、取り戻せず落胆して家に戻ってきたミシェルだが、大勢の人がお祝いに集まっていた。全てを話そうとした途端、チューリップおやじが駆けつけ上着を返すが中は空っぽ。でも宝くじは別途ポケットに入っていてハッピーエンドでパーティが繰り広げられ冒頭の場面に戻って映画は終わる。

 

サイレント映画の空気感が抜けきれていないためにちょっと独特の映像になっていますが、洒落たコメディに仕上がっているのはさすがです。名作の一本と呼べる作品でした。

 

「マリグナント 狂暴な悪夢」

久しぶりに、思いっきりグロテスクなホラー映画見ました。ジェームズ・ワン監督はあまり鮮血シーンやスプラッターシーンをやらないので安心してたので油断しました。でも人間、表と裏になるとアクションがすごいし、建物の中の部屋のつなぎを真上から捉えたセット移動撮影は素晴らしいし、「サイコ」を思わせる建物の美術や俯瞰で見上げる構図も楽しめました。

 

1997年、湖のほとりにたつ巨大な研究所、一人の博士がこちらに向かって話している。「そろそろ悪性腫瘍を取り除く必要がある云々」の台詞の後、激しい音と、次々と職員が殺される映像、そしてその犯人らしき何物かを取り押さえて場面は現代へ変わる。

 

一軒の家に一人の女性マディソンが帰ってくる。彼女は妊娠しているようで、家の中にはゲームをする夫、しかし彼は明らかにDVで、マディソンを突き飛ばす。突き飛ばされたマディソンは後頭部を壁に打ちつけ倒れる。夫が部屋を出て、マディソンは部屋の鍵を閉めて眠る。夜、下で眠る夫が物音に目が覚めると、突然影のようなものに襲われ、惨殺される。マディソンには妹のシドニーがいて、姉の夫が殺されたということで駆けつける。刑事たちは捜査を始める。

 

マディソンがベッドで寝ていると、突然周りの景色が変わり、一人の女性がトロフィーで殴り殺される夢か現実かわからない状況に見舞われる。殺された女性は冒頭で話していた博士であった。夢か現実かわからない幻覚を信じたシドニーとマディソンは刑事のところで説明をするが、その直前、マディソンは一人の老人が殺される夢を見ていた。言われるままに刑事がその現場に行くとマディソンのいうように殺されていた。マディソンは養女で、実母のことを聞けば何かわかるのではとシドニーは母の元を訪れる。そこで、幼い頃のマディソンの姿や、彼女が育てられていた病院などの資料を見つける。そんな頃、一人の女性が化け物に拉致されていた。

 

マディソンは、幼い頃、湖畔の病院にいた。名前をエミリーと言っていて、シドニーはその病院の地下室でエミリーの真実の資料を目の当たりにする。一方、マディソンの過去の記憶にヒントがあると判断した刑事たちは催眠術で、マディソン=エミリーの過去を遡るが突然マディソンは狂暴化していく。急遽目を覚まさせるが、拉致されていた女性がなんとか脱出したものの床が抜けて落ちてしまう。なんとそこは、マディソンが催眠療法されている現場だった。実は、拉致されていた女性はエミリーの実母であることがのちに判明するが、落下した時の怪我で昏睡状態で病院に入院する。刑事たちはマディソンが犯人だと判断する。

 

マディソン=エミリーは、表と裏に一体の肉体がある共有性一卵双生児だった。と、こういうことが本当にあるのかわかりませんが、脳を共有する背中側の人間ガブリエルと表の人間マディソンが生きていた。ガブリエルを切除する手術が行われたが、脳は共有されているので、頭部の一部だけ頭蓋骨の中に埋め込んだのだ。ここまでくるとさすがに笑ってしまう。そして、壁に頭を打ち付けたためにガブリエルが蘇り、凶行を始めたらしいとわかる。

 

ガブリエルの最後のターゲットは実母だったが、刑事はマディソンを留置所に収監する。しかし、収監されていた女囚人たちに痛めつけられたマディソンは、突然ガブリエルが目を覚まし、殺戮を開始する。警察署内で縦横無尽に飛び回るガブリエルのアクションがある意味相当にすごい。実母の入院する病院に駆けつけたシドニーだが間も無くガブリエルが襲いかかってくる。そしてシドニーを殺そうと迫った瞬間マディソンが意識を復活させ、ガブリエルを再び頭に中に押し込めて拘束してしまう。こうして、なんとか落ち着いたマディソンとシドニーが抱き合う場面で映画は終わる。

 

中合わせの人間が飛び回る、回転するアクションで、次々と警官を殺していくクライマックスのアクションは相当に面白い。少々グロいのだが、それでも爽快なほどに動きのキレがよく、しまいには見ていて笑いが込み上げてきた。映画としてはそれなりに面白いアクションホラーでした。