くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「街に泉があった」「颱風とざくろ」「カオス・ウォーキング」

「街に泉があった」

たわいのない青春恋愛物語という感じの一本で、黒沢年男がワンパターンの男を演じているのが今みれば鼻につくが、これも時代がなせる色合いでしょう。監督は浅野正雄。

 

次郎と三郎、泰弘が、母を連れて東京の長男順一のところへやってくるところから映画は幕を開ける。四人の兄弟は母親思いだが、新婚の順一は母との同居が新妻の圭子に反対され、仕方なく、母ときは次郎、三郎、泰弘と暮らすことになる。小学生の泰弘以外は皆東京で仕事を始め、ときがいつもいく食堂の店員弓子に次郎が一目惚れし、猛烈アタックするが、三郎も心惹かれる。さらに食堂の主人もときに心惹かれ、順一は圭子と夫婦喧嘩を始めて次郎らの家に転がり込んでくる。

 

しっかり者の三郎を誰もが頼りにし、三郎もそれに手際よく応えていくが、自分の人の良さにうんざりする。次郎は一時金持ちの女に心が流れるが、結局遊ばれていたと知って弓子に元に戻ってくる。三郎は弓子が結局次郎が好きだったと諦め、一人暮らしを決意する。順一夫婦も仲を取り戻し、ときは食堂の主人にプロポーズされ、それぞれに丸く収まって行って映画は幕を閉じる。

 

なんのことはない普通の物語ですが丁寧に作られているので、これという見応えもないが一方で、非常に軽く見れるという良さもあります。まさに高度経済成長真っ只中の一本でした。

 

「颱風とざくろ

石坂洋次郎原作らしい、インテリ風のブルジョア青年たちの物語という空気感の一本で、作品自体はそれほど秀でたものではないけれど、気楽に見れる青春ドラマでした。監督は須川栄三

 

大学のテニスコートに物語は始まる。女子学生たちが自分らで選んだ先輩の青年コーチ坂本一雄が英子ら女子大生に翻弄され、間も無く英子と一雄は恋人関係になる。製薬会社に勤める一雄は産婦人科の父を持つ家庭で、卒業後英子は放送局に務めるが実家は葬儀屋である。何かにつけ英子の気持ちを感じ取れない一雄は、クリスマスの絶好のデート日に友人に頼まれて一緒に山登りに出かける。彼を見送る英子は戻ってきたらプレゼントするものがあると送り出す。それは英子の体のつもりだった。ところが雪崩で一雄は帰らぬ人となる。

 

英子は一雄への思いを断ち切れないものの新しい人生を進んでいた。一雄の家にも顔を出し、弟の貞三は坂本家のけい子と恋人同士になる。一方、英子は一雄の墓参りで偶然出会った一雄の弟の二郎と親しくなる。物語は英子の日々を描く中にその周辺の人たち、さらには坂本家に絡んでくる人たちのエピソードを織り混ぜ、当時の自由恋愛、結婚観をセリフの中に盛り込みながら展開していく。いかにも石坂洋次郎らしい物語です。そして、英子は二郎と、貞三はけい子と婚約がまとまって全て丸く収まって映画は終わります。

 

特に目を見張る作品ではないものの、当時の若者たちの考え方を垣間見れる面白さと、一方でマンネリ化してきた当時の青春映画の一片を見た感じのする映画でした。

 

「カオス・ウォーキング」

原作の三部作の第一部を映画化したためか、キャラクターの紹介のみに終始し、ストーリーのキレもなく、背景のみを描いた作品という感じで、三部作全てで完結させりつもりなら、この後、さまざまな背景が描かれるのだろうが、この一作目が面白いとは決して思えないので、続編製作は難しいように思いました。監督はダグ・リーマン

 

時は2257年、汚染された地球を脱出して新しい星ニューワールドに辿り着いた人類だが、その地では男たちの考えが表に湧き出るノイズという状態になる地だった。第二波のでやってきた一機の探査船がこの星へ向かっていたが、突入の時の事故で軟着陸状態で辿り着き、一人の女性のみがなんとか到着する。

 

場面が変わり、主人公トッドが愛犬と森を散歩している。何やら牧師と呼ぶ黒人が馬で通り過ぎ、トッドは自身の心が表に流れ出るのを必死で抑えている。そんな彼は、森で一人の少女を見つける。それは軟着陸で着いた女性だった。トッドが住むプレンティスタウンでは女性は全てこの星の先住エイリアンとの戦いで惨殺され男のみが暮らしていた。

 

トッドはこの女性をプレンティスタウンの首長プレンティスのところに連れていくが、プレンティスはその女性を利用しようと画策、身の危険を知った彼女は脱出し、トッドが働く農場の納屋に隠れる。彼女はヴァイオラと言い、トッドたち第一波の移住民に続いてやってきた第二波の一員だった。そしてヴァイオラが本船に連絡すれば巨大移住船がこの星へやってくることがわかる。

 

プレンティスはヴァイオラを捕まえるべくトッドたちを追うが、トッドのいる農場主ベンはトッドとヴァイオラを逃す。トッドの母もエイリアンに殺されたがその日記をベンはトッドに託す。しかし、ノイズで会話するようになって、トッドたちは字が読めなくなっていた。ヴァイオラはトッドの母の日記を読み聞かせるが、なんと女たちを殺したのはプレンティスら男たちだとわかる。実際、トッドたちが最初の目的地ファアブランチには女性たちがいたのだ。

 

トッドたちはヴァイオラの本船に連絡をするべくヘヴンという最初の入植地を目指すが、途中、第一波できた巨大宇宙船の残骸に出会う。ヴァイオラはその船の非常回線で連絡することを思いつくが、プレンティスら追っ手が迫っていた。なんとか、連絡でき、プレンティスも倒したトッドだが重傷を負ってしまう。トッドが目を覚ますと巨大宇宙船の中でヴァイオラに看病されていた。第二波の本船は無事到着したのだ。こうして映画は終わる。

 

通り一片の紹介だけの作品で、スピーディに話は進みますが、キャラクターの背景などは描かれず、ニューワールドのミステリアスな描写もなく、全体に薄っぺらい作品でした。