くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「恋する寄生虫」

「恋する寄生虫

それほど期待してなかったのですが、思いのほか良かった。こういう切ないラブストーリーは大好きです。小松菜奈が良かったし、原作は読んでいないのですが、おそらく原作をうまく映像化しているように思います。映像作家らしい絵作りも嫌味がなく良かったし、良質の一本でした。監督は柿本ケンサク。

 

顔をマスクで覆っている一人の青年高坂がパソコンの前で何やら作業をしている。クリスマスイブに通信機器全てが使えなくなるウイルスを作っているというセリフがかぶる。幼い頃、彼の両親は彼の目の前で首吊りした。そのカットの後、彼が極度の潔癖症で両手は洗いすぎて赤く荒れているのが映る。場面が変わると一人の少女、そばにいる男が、その少女にお前は病気だからと告げる。彼女の名は佐薙、視線恐怖症で、周りの人間の視線が恐ろしくてどこへも出かけられない。彼女は高校生になっていた。

 

高坂は必要に迫られバスに乗っていたが、乗客の態度に我慢できず、気分を悪くしてバスを降りてその場に倒れる。そこへ佐薙が通りかかる。高坂が目覚めると佐薙の祖父?の病院だった。治療を終えた高坂は自宅に帰るが、ある夜、突然、一人の男が高坂のデスクに座っている。その男の名は和泉、彼は高坂に、パソコンのことをバラされたくなければ子供を三か月あづかって欲しいと依頼する。報酬は五十万だと強引にことを決め、待ち合わせ場所を告げる。

 

高坂が待ち合わせの公園に行くと、そこにいたのは女子高生の佐薙だった。佐薙は高坂に、報酬の半分くれたら友達になってやると告げる。彼女は常にヘッドフォンをしていて、外の言葉を遮断していた。高坂は仕方なく佐薙の申し出を受けることにし、自室に連れ帰る。和泉はなぜ佐薙が学校へ行かないか高坂に聞いてくれるように依頼、高坂は佐薙から、周囲の視線が怖いからだと話す。

 

ある時、佐薙はひったくりに会い、カバンとヘッドフォンを取られる。錯乱した佐薙は高坂に助けを求める。高坂は、勇気を出して自転車に乗って佐薙の元へ向かう。やがて二人はお互いに惹かれるようになって行くが、それに連れて高坂の潔癖症も佐薙の視線恐怖症も和らいでいるのを実感する。しかし、佐薙は間も無く死ぬと告げる。

 

和泉は高坂に、佐薙の頭の中には寄生虫がいて、その寄生虫が佐薙が高坂に好意を持つように誘導していると話す。そして、高坂の頭の中にもその虫はいてそれが佐薙への思いを作り出しているにだという。佐薙の母もその寄生虫を持っていた。寄生虫は恋をすると体内に卵を産んで人間を食い荒らし、発狂した人間は自殺するのだという。治療を拒んだ佐薙の母は寄生虫のせいで自殺をした。

 

まもなくして、佐薙の祖父裕一は、治療の目処が立ったからと佐薙の治療を始めることにする。頭の中の寄生虫がある程度成長しないと摘出できないため、高坂と接することでお互いの寄生虫を育てて摘出するためだった。ただ、寄生虫を摘出すると、お互いの気持ちは消え失せてしまう。高坂と佐薙は、お互いの思いが消えることに抵抗があった。佐薙は病院を抜け出し、母が自殺した湖へ向かう。彼女を追って高坂も向かう。そして二人はそこで口づけをする。

 

二人が目覚めると病院のベッドで、二人とも寄生虫を摘出された後だった。高坂は潔癖症もなくなり普通の生活になり、就職をしていたが、以前作ったコンピュータウィルスは未完成のまま送信していた。高坂はクリスマスイベント会場に向かう。ウィルスの仕掛けた時間が近づく。いつの間にか隣に佐薙がいた。時間が来ても不具合は起こらずクリスマスツリーは点灯するが、しばらくして、火花が飛び始め、周囲の電気系統から花火のように火花が降り注ぎ始める。その景色の中、高坂と佐薙はキスをして映画は終わる。

 

思い返してみると、ちょっとシーンを飛ばしすぎた部分や、矛盾している場面もないわけではないけれど、全体に見ると、とっても切ないラズストーリーに仕上がっています。ちょっと癖があるので、好みもあるかもしれませんが、私には大好きな映画でした。