くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「聖地X」「年ごろ」

「聖地X」

典型的な舞台劇の映画化という感じの一本で、不条理劇という空気感の作品。映画としての面白さというより、奇妙なドラマという海苔ノリだけを楽しむ一本でした。監督は入江悠

 

韓国のあるレストラン、ワールドカップを見ている一人の外国人が何かを食べてその場に倒れる。そばにもう一人倒れている女性がいる。場面が変わると、タクシーに乗って一人の女性要がやってくる。父の残した韓国の別荘のプールで寝そべっている息子の輝夫は、突然、妹の要がやってきて驚く。要は夫滋に愛想をつかせて韓国にやってきたのだ。

 

冒頭のレストラン、忠と京子の夫婦がレストラン開店に向けて準備を進めているが、妻京子の具合が悪く、不動産屋の江口と相談をしていた。

 

輝夫と暮らし始めた要は街で滋の姿を見かけて追いかけ、忠らが準備を進めているレストランにやってくる。そこで江口と出会うが、さらにトイレから茂が出てくる。要は滋に悪態をつくが、輝夫の別荘にやってくる。輝夫は滋を物置部屋に拉致する。ところが、要が滋に電話をすると、なんと日本にいる滋が出る。混乱しかける輝夫たちだが、江口と話をするうちに、忠の妻の京子についてもおかしなことがあると聞く。どうやら、この店ではドッペルゲンガーとしてもう一人の人物を生み出す力があるようだった。その夜、もう一人の京子が現れ、江口たちの前で一つに融合する。

 

まもなくして日本にいる滋が要のところにやってくる。京子のことを知った輝夫たちは日本から来た滋と韓国にいる滋を会わせないようにする。二人の記憶はそれぞれ一部抜け落ちていて、二人で一人になっていることがわかる。しかも、一つになるまでの期間が数日経った滋は、それぞれの記憶が増えていて、一つになるときに記憶量がオーバーすることもわかる。

 

輝夫は、第三の滋を要で作らせ、それを拘束して、日本から来た滋と韓国の滋を会わせる。二人は合体し、要の前に現れるが、要はもはや元に戻れないと滋に日本へ帰るように伝える。なんとか丸く収まったので、要と輝夫は拘束していた第三の滋を殺そうとするが結局できず、輝夫の別荘に匿うことにする。

 

数日が過ぎ、要は日本で、滋と決着をつけて戻ってくる。輝夫たちがバーベキューを始め、要が第三の滋を呼びに行くが、そこはもぬけの殻になっていた。こうして映画は終わる。

 

入江悠監督らしく、なぜかダンスシーンがあったり、独特の絵作りですが、作品のスケールは非常にしょぼいインディーズレベルです。なんで韓国なのかは、原作舞台がそうなので仕方ないのでしょうが、映画として少し昇華してほしかった気もします。

 

「年ごろ」

程よい長さで、当時全盛期だったブルーコメッツの曲を背景に楽しむ典型的なアイドル青春映画!という感じの爽やかそのものの作品で、めんどくさいものが何にもないこれぞエンタメという映画でした。出目昌伸監督のデビュー作。

 

高校三年の陽子と友達がこれから迎える冬休みに嬉々としている場面から映画が始まる。なんとも爽やかです。そしてスキーに兄とその友達と行った陽子は、兄大介の恋人幸子が、ゲレンデでダンディな男性小倉と知り合う。物語は、必死で背伸びして大人の世界に馴染もうとする思春期の高校生陽子の奔走を描きながら、わかりやすい青春映画として展開する。

 

兄のために小倉に会った陽子は、その大人の雰囲気と振る舞いに心が傾いてしまうものの、姉秀子と話す中で次第に大人の気持ちに変わって行く様がなんとも瑞々しい。基本的に内藤洋子のアイドル映画ですが、そのアイドル映画らしさがかえって懐かしいノスタルジーに誘ってくれるからいいです。時代を感じさせる展開も多々ある古き良き日本映画という一本でした。