くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「レイジング・ファイア」「ただ悪より救いたまえ」「探偵物語」(根岸吉太郎監督版)4K修復版

「レイジング・ファイア」

香港映画らしいスピーディなストーリー展開と派手なアクションの連続、そしてシンプルな筋立ては本当に肩の凝らない作品でした。ベニー・チャン監督の遺作。

 

チョン警部が雨の中車を走らせている。その先には大勢で一人の男がリンチされている。その夢から目覚めて映画は幕を開ける。かつて、同僚のンゴウは上司からの強硬な捜査を命じられ、度を過ぎた取り調べで容疑者を殺してしまった。その現場を見たチョンの証言で、ンゴウらは刑務所に入る。

 

出所してきたンゴウらは、独自の犯罪組織を作り、警察に反旗を翻すかのように犯罪を犯していく。この日もベトナムマフィアとの麻薬取引の現場を抑えるべく向かったチョンの上司らが何者かの妨害で殺されてしまう。しかも麻薬はその場にきたンゴウらに略奪された。

 

チョンらは捜査を進める中で、ンゴウの存在を確認、ターゲットとして迫っていくが、ンゴウらはチョンを仇として執拗なくらいに次の犯罪を計画していく。そして、巨大銀行の資金を略奪する計画を立てたンゴウらは、相棒にしようとしていた闇組織のボスを殺し、警察を撹乱させて、本来の目的銀行へ突入する。その銀行はかつて上司の強行的な捜査を命令するきっかけになった金持ちの頭取らの銀行だった。

 

その計画に気づいたチョンらはンゴウらが逃走する現場に出くわし銃撃戦を開始する。この場面こそ香港映画の醍醐味である。そしてンゴウと一騎討ちになったチョンはなんとかンゴウを倒すがンゴウは自ら死んでいく。こうして映画は終わる。

 

典型的な香港映画の作劇で、どんどんお話は前に進みながらそこに至る経緯を巧みにフラッシュバックさせ、シンプルな流れに戻してラストを迎える。アクションシーンのみならずカーチェイスも見せ場の連続で、退屈せずに2時間余りを見てしまう。特に難しいメッセージもない香港映画の典型的な娯楽作品でした。

 

「ただ悪より救いたまえ」

なんの変哲もない普通の韓国ノワール映画でした。たまたま見た一本めの香港映画と比べるとそのレベルの違いを実感してしまいます。まだまだ韓国映画は黎明期ですね。監督はホン・ウォンチャン。

 

日本人ヤクザコレエダが自宅にいてある人物に殺されるところから映画は始まる。殺したのは韓国人の殺し屋でインナムと言った。ところがコレエダの弟レイが戻ってきて、復讐のためにインナムを追跡し始める。

 

そんな頃、タイバンコクにいるインナムの元恋人ヨンジュが投資詐欺に引っかかり、娘のユミンが誘拐される。ヨンジュはインナムに連絡を取ろうとするがインナムは事情も知らないままに相手にならなかった。まもなくしてヨンジュが殺されその死体を確認したインナムは娘の存在を知り、娘を見つけるためにバンコクへ飛ぶ。

 

死んだと知らされていたのだが調べてみると臓器売買をしている組織に売られたことがわかる。インナムは、さまざまな情報を駆使してユミンを探すが、インナムを追ってきたレイもまたインナムに迫って来る。映画はインナムがユミンを探し出し脱出していく物語にレイの執拗な攻撃が交互に語られ、バンコクでインナムが知り合ったおカマの女性との逃避行へと流れていく。

 

そして、ユミンを救出し、パナマへ脱出しようとしたインナムだが、追ってきたレイと白兵線となり、ユミンをおカマの女性に預けて、インナムは自分と共にレイを倒す。こうして映画は終わる。

 

特に目ぼしい仕上がりもない平凡なアクション映画でした。

 

探偵物語

たわいのないラブストーリーですが、映画としての楽しさが伝わって来る作品でした。40年ぶりくらいの見直しですが、素敵なひとときを過ごせました。監督は根岸吉太郎

 

主人公新井直美が深夜自宅に戻ってきて2階の窓から入るところから映画は幕を開けます。近々アメリカにいる父の元に行くことになっているが、家政婦の長谷沼からの言葉に、つい恋人が反対するから行かないと答えてしまう。次の日から、直子の後を怪しげな男がつけてくるようになる。クラブの先輩永井に誘われてホテルに入った直美のところに、叔父だと言ってつけてきた若い男が飛び込んでくる。彼は長谷沼に頼まれて直子をつけてきた探偵の辻山だった。

 

こうしてどこへでも直美について来る辻山と直美の奇妙な展開が続く。実は永井には同棲している恋人の正子がいた。直美に詰め寄られ、永井は正子はゼミで一緒の学生だと答える。そんな直美はある夜、逆に辻山をつけていき、辻山の元妻幸子と出会う。幸子の店に勝手に入った直美はそこでアルバイトをしている正子に会う。

 

翌朝、辻山のところに幸子がやって来る。クラブのオーナーで恋人の国崎がホテルで殺され自分に嫌疑がかかったのだという。そこへ、直美がやってくる。辻山が追い返そうとするが、国崎組の岡野らがやってくる。なんとか逃げた直美らは直美の家に隠れることにする。国崎の葬儀に参列した直美は岡野と殺された国崎の妻が不倫している現場を見つけ、辻山と録音テープに録る。

 

直美の提案で、真犯人を探そうということになる。その夜、久しぶりに辻山と幸子は愛し合っている声を聞いた直美は一人で飲みにいき、声をかけてきた男と幸子の殺人現場のホテルへ行く。そこで、浴室の天井のトリックを見破る。国崎組は幸子を捕まえるべく辻山らを拉致した。直美は国崎組の組長にトリックを証明するが、警察が駆けつけ辻山も幸子も逮捕される。

 

しかし、国崎組の組長にトリックを説明した時、ホテルの天井裏で、かつて永井にもらい、永井が正子にプレゼントしたネックレスを見つける。直美は学校へ行き、永井を問い詰め、正子は、国崎に脅されていたことを話し自首することを決意する。

 

自宅に戻った辻山のアパートに直美がやって来る。そして直美は辻山に好きだと告白する。このワンシーンワンカット長回しのシーンが見事です。翌日、アメリカに旅立つ直子は空港に辻山が来ているのを見つけ、駆けつけて長い長いキスをする。こうして映画は終わっていきます。

 

甘酸っぱい青春の一ページのラブストーリーという出来上がりの作品で、決してよくできた傑作とまでは行かないけれど、薬師丸ひろ子松田優作のカリスマ性が映画をとっても素敵なものに仕上げた感じがします。