くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド」「サンダーバード55/GOGO」「奇跡」(デジタルリマスター版カール・テオドア・ドライヤー監督)

「アイム・ユア・マン恋人はアンドロイド」

画面作りも美しいし、端正な映像で上品な作品でした。物語も静かに淡々と流れるし、ドラマも丁寧で、キワモノSF的な雑さがないのが良かった。監督はマリア・シュラーダー。

 

考古学者のアルマが、あるダンスホールにやってくる。金髪ショートヘアの女性がアルマをホールに案内すると一人の端正な顔立ちに男性トムが彼女に話し掛けダンスを始めるが、まもなくしてトムの動きがぎこちなくなって奥に連れていかれる。彼はロボットだった。楔形文字の研究資金のため、三週間のロボットとの生活の治験者として応募したアルマの姿から映画は始まる。

 

一旦は断ろうとするが、意を決して治験に参加したアルマは、一見機械的な返答を繰り返すトムだが時にドキッとする人間らしい行動をとるトムに不思議と惹かれる。しかし、あくまでロボットという考えからは抜けられなかった。アルマはトムを研究室に連れていくがトムはそこでアルマが研究しているテーマが三か月前にライバルによって発表されていることを告げる。落ち込んだアルマは自暴自棄にトムに抱いてくれと迫るがトムは応えない。

 

アルマの元彼のユリアンが結婚をするからパーティにきてくれとアルマを招待し、アルマはトムと一緒にユリアンの家に行くがそこで、ユリアンの恋人が妊娠しているのを知る。かつてアルマは中絶したことがあり、もう子供が産めない歳になっていた。そんなアルマを優しく包むように接するトム。やがて二人は愛し合う。しかし翌朝、アルマはどうしても機械だという観念から離れられずトムに別れを告げる。機械的に部屋を出ていくトム。アルマは追いかけることもなく元の生活に戻るが、ロボットの相談員がアルマの家をおとづれる。会社にも戻っていないと聞いたアルマはトムを探しに行く事にする。

 

かつて、アルマは幼馴染のトムスに恋をしていた。幼い頃の思い出の街へ向かったアルマはそこで三日間アルマを待っていたというトムと再会する。こうして映画は終わっていきます。

 

何気ない物語のようですがとっても素敵で上品なラブストーリーに仕上がっています。画面の一つ一つも美しいし、ちょっとした佳作という作品でした。

 

サンダーバード55/GOGO」

三話オムニバスで、クラウドファンディングによりオリジナルの撮影手法を再現して映像化。とにかく懐かしいかぎりのひととき。監督はジャスティン・T・リー、スティーブン・ラリビエー、デビッド・エリオット。

 

サンダーバード登場」

ペネロープとパーカーが叔父さんに呼ばれて国際救助隊の基地に招待されメンバーに加わるまでが描かれる。

「雪男の恐怖」

ウラン発掘を極秘に続ける悪人が雪男の伝説で人を寄せ付けないという事件に臨む

「大豪邸、襲撃」

世紀のお宝を盗む元貴族の一味の悪事を阻む物語。

 

三話ともペネロープとパーカーが中心の話になっています。

そして最後に、コロナでロックダウンしたイギリスのアパートの一室で作られた

「ネビュラ75」がおまけでつきます。

 

懐かしい、それだけのひと時を楽しむ作品でした。子供時代が蘇りました。

 

「奇跡」

四十年以上ぶりの見直し。さすがに名作。こういう映画を作れる監督はそういないと思います。一歩間違えばホラーになってしまうのに、美しいカメラワークと構図で映画全体を敬虔な映像美に仕上げていく演出が素晴らしい。若い二人の恋物語と、親同士の宗教的な対立を巧みに操りながら、精神的に異常と思われる人物を配置した物語展開もよく出来ています。これが名作ですね。監督はカール・テオドア・ドライヤー。

 

ボーオン農場の看板から、ベッドで起き上がって窓の外を見る三男のアナス。外には、自らをキリストと信じる次男のヨハンネスが丘に向かって歩いている。いつもの放浪のようで、アナスが連れ戻すために父モーテンを起こす。そしてヨハンネスを連れにいくが長男のミッケルも後に続く。こうして映画は幕を開ける。モノクロスタンダードの画面ですが、端正な構図が実に美しい。

 

アナスは仕立て屋ペーターの娘アンネを愛していて結婚したいと父モーテンに話すが、宗教的な考え方の違いでペーターと仲の悪いモーテンはいい顔をしない。アナスはペーターの家に行きアンネのことを話すがペーターは大反対する。そのことを父モーテンに話すが、モーテンは逆に怒り、ペーターの元へ向かう。ペーターの家では祈りの儀式が行われていた。そこでモーテンはペーターにアナスとアンネのことを話すが、どうしても聞き入れられなかった。

 

そんな頃、妊娠していたミッケルの妻インガーが産気づき医師を呼ぶことになっていた。難産で苦しむインガーを助けるべく医師は奮闘するが結局死産となる。しかもインガーの容態も良くなかった。その連絡をペーターのところで聞いたモーテンとアナスは急いで戻るが、インガーは一命を取り留め眠っていた。しかし、ヨハンネスは間も無く主が現れ連れ去るだろうとつぶやく。そしてインガーの娘に、みんなが神を信じて祈れば助かると話す。

 

一命を取り留めたと思った医師は帰るがインガーの枕元にいたミッケルはインガーが冷たくなっていることに気がつく。ヨハンネスがそのベッドの脇に連れていかれるがその場に倒れてしまう。そしてヨハンネスは窓から外に出て何処かへ消えてしまう。ボーオン家ではインガーの葬儀の準備が進められ、インガーの遺体は棺に収められた。ミッケルやモーテンが見守る所へ、歪みあった事を後悔したペーターがアンネを連れてやってくる。そしてアナスとの結婚を許す。

 

そんな時、正気に戻ったヨハンネスが帰ってくる。インガーの娘が駆け寄り、呼び戻してほしいと懇願、ヨハンネスは神の言葉をつぶやくと、インガーの手が動きやがて目を覚ます。ミッケルはインガーを抱きしめる。こうして映画は終わっていきます。

 

素晴らしいとしかいいようにない名作中に名作です。いつの間にか画面に引き込まれていく美しさはまさに一級品の貫禄というのでしょうか。椅子の配置や、真っ白な壁など、計算され尽くされた演出に目を見張ります。いいものを見た、そんな感想が自然と浮かんでくる映画でした。