くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「無聲The Silent Forest」「ザ・フォッグ」(4Kレストア版)

「無聲 The Silent Forest」

頭からラストまでなんとも陰湿な映画だった。重層的に掘り下げていく真実がいけどもいけども暗くどんよりと沈んでいく展開はさすがにしんどい。しかし、絵作りは実に美しく、映像表現も意識した演出は評価すべきだったと思います。監督はコー・チェンニエン。

 

少年が必死で老人を追いかけている場面から映像は始まる。少年は老人を捕まえて殴り倒すが聾唖者である主人公チャンは、駆けつけた警官に説明ができない上に、悪者にされてしまう。老人はチャンの財布を盗んだのだという。たまたま通りかかった聾唖学校の教師ワンが間に入り警察署からチャンを連れ出す。こうして映画は始まる。

 

学校では100周年のパーティがあり、チャンはそこで一人の少女ベイベイに惹かれる。ところが通学のバスの中でベイベイが最後部の席で性的暴力を受けている現場に出くわす。チャンはその場を逃げ出し、ワンに相談するが、本人のベイベイはだまっておいてほしいという。首謀者は歳上のユングアンで、かれが後輩に命じてやらせていた。しかも、あれはただにゲームだと平然と答える。

 

ワンはこの学校に起こっている性暴力やいじめの問題を校長に相談するがこれまでうやむやに闇に葬っていた事実が浮かび上がる。転校させるというベイベイの祖父を説得し、チャンが守るからという事で学校に残ったベイベイだが、ユングアンらの卒業式の日、ベイベイはユングアンに襲われてしまう。ユングアンの指示で、チャンは後輩の股間をしゃぶる事でベイベイを襲わないと約束したユングアンをチャンは殴るが、その夜ユングアンは自殺未遂をし入院してしまう。さらにチャンの動画が攪拌され、責任を感じたベイベイは闇医者に不妊手術をしてもらう。

 

追い詰められたチャンはユングアンを襲おうと病室にいくが、ユングアンは病室で手首を切ろうとしていた。実はユングアンは入学して間も無くから美術のウォン先生に性的虐待を受け続けていたのだ。その事実を知ったチャンやワン先生は校長を責めるが、校長は学校運営を盾にとって言い逃れてしまう。ワンがユングアンのところを訪ねると、ユングアンは、ウォンのことを憎んでいるのに好きになっていく自分が怖いと泣きじゃくる。

 

事件はマスコミに広がり、校長らは退任となる。やがて新学期が始まり、チャンはベイベイと通学のバスの中にいた。全てが元通りになったかに見える車内、チャンにしゃぶられた後輩の少年がおもむろに立ち上がり。次の標的を見つけたのような視点で映画は終わります。

 

内容は相当に陰湿で重いものですが、冒頭の綿の花が舞ったり、終盤、チャンを俯瞰で捉えるカメラの背後の道路の模様が美しかったり、学校の廊下の縦の構図など絵作りにも工夫されていて映像としても楽しめる演出はなかなかでした。

 

ザ・フォッグ

四十年ぶりくらいの再見でしたが、これほど面白いB級ホラーだったかと再発見しました。特に生き物のように街に迫ってくる霧の描写は素晴らしいし、登場人物を描くより、主人公は霧だと言わんばかりの展開は見応え十分でした。監督はジョン・カーペンター

 

懐中時計のアップから独りの老人が子供達に昔話をしている場面から映画は始まる。誕生100周年を迎えた港町アントニオベイ、その記念日を明日に控えた深夜、街のあちこちで不思議なことが起こり、沖に出た一艘の船が霧に襲われてしまう。この街の古い教会のマーロン神父は壁の中から祖父が残した日記を発見する。それは100年前のこの街の誕生にまつわることが書かれた日記だった。

 

街の外れの灯台で地元のラジオ局でDJをしているスティービーは、不気味な霧が沖から街に迫ってくるをの発見する。翌日の記念日前に各地から人々が集まる中、やがて、深夜が訪れる。霧が迫るなか、霧の中から現れた亡霊が人々を襲い始める。それは、かつてこの街を作った六人の人々への恨みを晴らすためにやってきたものだった。主要な人物はマーロン神父の教会に避難して、日記から教会の中に隠された100年前に街の人々が奪った金を発見。マーロン神父はその金で作った十字架を亡霊たちに返すと、霧はたちまち消えていく。

 

恐怖は終わったかに思われたが、亡霊が狙っていた六人のうち五人しか殺されていない。マーロン神父が不審に思った途端、再度亡霊が現れ、マーロン神父が殺されて映画は終わる。

 

初めて見た時は、ちょっと物足りなさを感じたが、今見直すと。本当によく出来ているホラー映画だとわかります。とにかく霧の演出が見事。見直してよかったです。