くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「こんにちは、私のお母さん」「スティルウォーター」

「こんにちは、私のお母さん」

泣きました。久しぶりにこれでもかというほど泣きました。物語は相当に荒っぽいのですが、コメディとシリアス部分とのバランスと配分が抜群にうまくいってる。無駄に美しいCG画面も効果的で、クライマックスには矛盾が散見するもののそんなものを吹っ飛ばして感動させてくれます。実話を元に希望を交えたフィクションという脚本が功を奏した感じですね。宣伝がほとんどなかったのも正解でした。掘り出し物でした。監督はジア・リン。

 

子供の頃から何をやっても鈍臭いシャオリンは、なんとか母を喜ばせようと奮闘するがうまくいかない。芸術大学の二部に合格はしたが、母を喜ばせるために一部合格の合格証を偽造、盛り上がった母は親戚や友人を招待してのパーティを行う。しかし、ふとしたことで嘘がバレてしまう。しかしそんなシャオリンを母のホワンリンは優しく庇い、ボロボロの自転車で二人乗りをして帰途につく。しかし、途中事故に遭い、シャオリンは無事だったがホワンリンは危篤状態になる。ベッドで泣きじゃくるシャオリンだが、突然不思議な空気を感じて廊下に出る。そこにあったテレビに映っていたのは懐かしいフィルムだった。そのテレビにくい入るシャオリンは突然時間を飛び越えてしまう。

 

ここは勝利工場へ向かう道、枯れ葉の上に突然シャオリンが落ちてきて、そこにいた若き日のホワンリンを巻き込んでしまう。病院で目覚めたシャオリンはここが1981年だと知る。しかも、目の前に若き日の母ホワンリンがいた。シャオリンは従姉妹だと嘘をついて若きホワンリンと接触、彼女を工場長の息子グアンリンと結婚させて、苦労のない人生を送れるようにと奔走し始める。しかし、それはシャオリンが生まれてこないことを意味していた。

 

当時珍しかったテレビを買う争奪戦、工場での女子バレーボール大会などなど、いかにもな中国映画らしいコミカルなシーンが連続する。しかしシャオリンの努力も虚しく、裏目裏目に出るばかり。シャオリンがホワンリンと飲み明かした翌朝、シャオリンジーンズをホワンリンは上手に刺繍で繕ってくれた。そして三年間付き合っていた彼と結婚したといって結婚証明書を見せる。シャオリンは最後のあがきをするが、結局、本来の父親との結婚となったホワンリンを止めることもできず、若き日の父とも会う。

 

何もかも終わり、これで良かったと納得したシャオリンは、彼女に惚れ始めたロンや落ちてきた時助けてくれた若き日のおじさんらに別れを告げて未来に戻ろうとする。しかし戻れない。そしてふと、母は裁縫が苦手だったことを思い出す。上手になったのはシャオリンを産んでのちの話だったのだ。では、シャオリンジーンズに刺繍してくれたホワンリンは本当に母なのか?全てがわかったシャオリンは母を探す。そして、彼女を育ててくれた母の姿をフラッシュバックしていく。実は事故に遭ったホワンリンは、シャオリンより先に1981年に来ていたのだ。シャオリンを受け止めたホワンリンは、過去に戻った母だった。ホワンリンは、命が尽きる前にシャオリンに会いに戻ったのだった。

 

シャオリンが泣きじゃくりながら気がつくとすでにに死んでしまった母のベッドの脇で泣いているシャオリンがいた。いつの時も母はシャオリンを愛していたのだ。夢だったオープンカーに乗るシャオリンの姿、傍には母が乗っているようである。こうして映画は終わっていきます。

 

過去に戻ったシャオリンが出会うホワンリンは、若き日のホワンリンでないとおかしいのだが、その辺のタイムパラドックスは一切無視して自由な発想で思いの丈を物語にしているのがとっても良い。前半はいかにもな中国コメディで、このまま最後まで行くかと思われたが。終盤の大どんでん返しは上手い。映画としての出来不出来以前にエンタメとして本当によくできた映画でした。

 

「スティルウォーター」

しっかりと描かれた作品なので、2時間以上があるにも関わらず退屈もしないのですが、いかんせんドラマを広げすぎたようで、結局描きたい中心が薄められてしまったようになったのが残念。ビルとアリソンの話として始まり展開していくのだが、途中からはいるマヤとヴィルジニーの物語が入ってからどんどん全体が薄められていく。いい映画ではあるけれどもうちょっと焦点を決めて欲しかった。ラストのアリソンの真相もインパクトが弱くなってしまった感じです。監督はトム・マッカーシー

 

竜巻の後始末をしている主人公ビルの姿から映画は幕を開ける。働いていた油田の閉鎖で仕事を転々とするビルには一人娘アリソンがいる。彼女はレズビアンの恋人リナを殺害した容疑でマルセイユの刑務所にいた。ビルは定期的にアリソンに会いに行っていたが。ある時アリソンから弁護士のルパルクに渡してほしいという手紙を預かる。その手紙には、真犯人はアキムという青年で、調べ直してほしいという内容だった。

 

ビルはその手紙を持ってルパルクの元を訪れるがまともに取り合ってくれず、娘を落胆させないために自分で探そうと考える。しかしフランス語が話せず困っていたが、たまたまホテルの隣室に一時的に泊まっていた舞台女優のヴィルジニーと娘のマヤと知り合う。しかし、文化や地元の風俗も違う地で苦戦、なんとかアキムの居場所を突き止め、顔を確認するが若者たちに襲われ大怪我を負ってしまう。アリソンに弁護士が取り合ってくれない旨を話すと娘は激怒してしまう。まもなくしてアリソンは自殺未遂まで起こしてしまう。そして四ヶ月が経つ。

 

ビルは帰るわけにも行かなくなりヴィルジニーの家に居候して、マヤの世話をしながら暮らしていた。たまたまマヤと一緒にサッカーの試合を見に行き、そこでアキムの姿を見かけてしまう。ビルはアキムを拉致し、ヴィルジニーの家の地下室に監禁、DNA鑑定をするために元警官の探偵に依頼し、一方アキムに問い詰める。ところがアキムはリナを殺すように行ったのはアリソンで、手付金としてスティルウォーターのロゴの入ったネックレスをもらったという。そのネックレスはかつてビルがアリソンに送ったものだった。

 

しばらくして、警察がヴィルジニーの家にやってくる。帰ってきたビルと一緒に地下室に行くが誰もいない。アキムの監禁を偶然見つけたヴィルジニーが間一髪でアキムを逃した後だった。マヤを危険にしたビルに怒ったヴィルジニーはビルを追い出し、ビルは帰国せざるを得なくなる。しかし、DNA鑑定に出していたアキムの毛髪がリナ殺害時に残されたものと一致し、アリソンの疑いが晴れる。この終盤がなんとも雑に見える。

 

スティルウォーターではアリソンが大歓迎される。ビルは二人きりになった時アリソンにネックレスのことを尋ねる。アリソンはまさか殺すと思わなかったとビルに話す。こうして映画は終わります。

 

見応えのあるドラマですが、少々描くべきものを広げすぎた気がします。終盤までは丁寧に展開するのに、終盤いきなりあれよあれよと解決していく流れは、ちょっと勿体無いです。いい映画だと思いますが、最後まで力を抜かないで欲しかった気がします。