くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「シルクロード.com 史上最大に闇サイト」「さがす」

シルクロード.com史上最大の闇サイト」

B級サスペンスとしてはなかなか面白かった。実話を元にしているとはいえクライマックスの一捻りは映画としてよく練られた展開だと思います。こういうクレージーな天才がいるからアメリカにAmazonGoogleが生まれるんでしょうね。そのお国柄も反映されていて良かったと思います。監督はテイラー・ラッセル。

 

一人の青年が公立図書館にやってくるところから映画は幕を開ける。2013年サンフランシスコ。そして彼を追跡する警察、リーダーらしい男がロクインするまで待てという合図、青年がロクインしようとすると傍の携帯電話が鳴る。そして物語は3年前に遡る。

 

麻薬捜査官だったもののある事件の失敗で、精神病の更生施設にいた老刑事リックが退院してくる。そして勤務地へ行くが彼の居場所は麻薬捜査局からサイバー捜査局へ変わっていた。ネットについて全くど素人のリックは、若い上司に馬鹿にされながらも必死で知識を得ようと奮闘を始める。リックは麻薬捜査のことが気になり。かねてからの情報屋で親しくしていた黒人のレイフォードに近づく。

 

そんな頃、新しい事業を始めようと、匿名でのネット取引の仕組みを立ち上げようとしたロスは、友達や恋人と面白半分にサイトを立ち上げる。ところがそのサイト、シルクロード.comは違法薬物の取引などでみるみる成長していき、それにつれてロスにストレスがかかり始める。

 

リックは、レイフォードからシルクロード.comの存在を知り、その運営者を突き止めようと自分なりにできる方法で捜査を始める。そして自分のハンドルネームを作って、郵便物の発送場所をアナログな方法で追跡し、その男を逮捕して借りた部屋に監禁しる。ロスは、金の管理なども任せていた男が連絡がつかなくなり焦り始め、そこへコンタクトしてきたリックのハンドルネーム、ノブに恐喝、拷問を指示してしまう。

 

リックは拉致していた男を殺したように見せかけ、さらにロスを追い詰めていく。そして、チャットのやり取りを証拠に上司に進言しようとするが、上司はリックのことを馬鹿にして相手にしない。そんなころ、リックが面接に行かなかったためにリックの娘の奨学金が降りず、金が必要になる。そこでリックは、ロスを逮捕することはやめ、ロスから金を手に入れることにして警察への復讐を考え始める。

 

そしてリックはロスから大金を手に入れるが、FBIは次第にロスの存在を突き止めて、冒頭の場面につづいていく。リックは、ロスに電話を入れ、お前を最初に見つけたのは俺だと告白する。直後、ロスは逮捕され、リックも間も無くロスとの関係が見つかり逮捕される。面会にきたリックの妻と娘は、リックがレイフォードに託したロスからの金が届いたことを告げる。リックとロスが刑務所ですれ違って映画は終わる。

 

実話とはいえ、話の展開もなかなか書き込まれているし、終盤の一捻りが実によく効果を発揮した脚本が面白い一本でした。

 

「さがす」

よくできた佳作、いい映画でした。もうちょっと智の心理変化が丁寧に描けていたら傑作だったかもしれません。一見、異常殺人鬼の話が、どこか情のこもった人間ドラマに変化するラストは上手い。ただ、智が妻を殺したことの罪悪感と最後に殺人鬼まがいに変化していく流れの心の変遷と葛藤がほとんど描けていないのが実に残念。監督は片山慎三。

 

一人の男がハンマーを振り回す練習をしている。そして、一人の中学生楓が走っている場面から映画は始まる。楓があるスーパーに飛び込んだら、そこで万引きで捕まっている父智がいた。なんとか示談で帰ってきたものの、帰り道、智は、連続殺人鬼の山内という男を見かけたことがあると話す。山内を通報したら三百万がもらえるという父に楓は冗談まじりに聞き流してしまう。ところがその翌日智が行方不明になる。

 

楓は父のよくいく労働斡旋所で、産廃の整理場所に行った父の名前を見つけて、クラスメートと向かうが、そこにいた原田智は父とは全く違う若者だった。しかし、帰ってから、その若者が指名手配犯だと知る。そして、父がかつて営んでいた卓球場で寝ている山内を見つけた楓は必死に追いかけ、山内の履いていたジャージを手に入れる。山内は逃したが、ジャージの中に父の携帯とカリン島という島に行く切符を見つける。

 

楓はクラスメートとカリン島へ向かうが、折しも、救急車がある一軒の家に向かっていた。楓はその家に駆けつけるとなんと父が倒れていた。そして物語は三ヶ月前、山内がムクドリというハンドルネームの女と海岸にいる場面となる。山内は自殺志願者をネットで募り、その死ぬ手助けをしていた。そして今回ムクドリという女を見つけたが、山内は実は殺人鬼だった。そしてムクドリを殺す寸前、パトロールの警官に見つかり逃げる。時はさらに遡り、カリン島にいた山内は土地の老人と知り合うが、その老人を惨殺する。

 

さらに遡り、智の妻公子は筋萎縮症という難病で、智が必死でケアをしていたが、かなり疲れていた。そんなある時、病院で看護師の山内が声をかけてくる。そして、言葉巧みに公子を殺してやると請け負う。そして殺した後、金を要求した上に、これからも、死にたい人間を一緒に殺そうと提案してきた。この辺りから智の心理変化が全く見えないのとかなり無理がかかるし、時々、楓のショットを挿入するが、楓の存在が完全に消えてしまうのが不自然。

 

山内は複数のアカウントを使って、智に自殺志願者を集めさせ自分が実行するという手筈を整えていく。そしてわずかばかりの報酬を智に渡す。

 

そんな時、かつて殺し損ねたムクドリからもう一度ちゃんと殺してほしいと連絡がくる。智はムクドリを使って山内を殺害する計画を練り、山内に産廃場に身を隠させ、ムクドリをホテルに匿って計画を進めるが、楓に追いかけられた山内から、ムクドリの殺害場所はカリン島にしようと提案する。そして、智らはカリン島へ行く。そこで、山内はムクドリの首を絞めるが、智は持参したハンマーで山内を殴り殺し、自分は山内に刺されたようにしてその場に倒れる。しかし、息を吹き返したムクドリはちゃんと殺してほしいと智に迫り、智はムクドリの首を絞める。ムクドリの顔が一瞬公子と重なり。そこへ、楓たちが駆けつける。

 

結局、智は山内を発見したという話が警察に通じて報奨金をもらい、卓球場を再開するが、レジの隅で、かつて山内に言われたアカウントのメモを見つける。智は、そのアカウントの まなてぃ というアカウントに連絡すると、返事が返ってきた。しかし。実はそのアカウントは楓のものだった。

 

智が待ち合わせ場所に行くも まなてぃは現れない。夜、楓と智は卓球をしている。延々と続くラリーの中、楓は智に真相を話す。やがて彼方にサイレンが聞こえる。大阪弁のジョークである、あんた捕まえにきたで、というのが真実となる。智が良く楓にしていた口を尖らす冗談を楓が智にして、今度は私の勝ちやと言って映画は終わる。

 

なかなか良くできた映画で、面白いのですが、智が何故山内に賛同していくのか、そして山内を殺した後、何故また、同じことをしようと決めたのかというキーになる心理変化に描写が完全に手抜きだし、楓が 智がやっていたことをかなり前から知っていたというラストのアカウントの件がちょっと説明が弱い。あちこちの穴を無視するほど全体の出来が良ければ傑作だったのですが、そこに物足りなさを感じる佳作という仕上がりの映画でした。