くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「クレッシェンド 音楽の架け橋」「ファミリー・ネスト」

「クレッシェンド 音楽の架け橋」

とってもいい映画でした。テンポがいいし、重い話しながらさりげなくかわす映像のリズム作りが実に上手い。それに、聞き慣れたクラシックを多用した演出も優れています。絵作りもしっかりしてるし、ちょっとした佳作でした。監督はドロール・ザハビ。

 

オマルとシーラの若いカップルがビデオトークで、これから二人で旅立ちますと幸せそうに話している場面から映画は幕を開ける。ところが途中で車に停められ、危害を加えないからと言う車からの警告の言葉が通じず、二人は逃げる。そして物語は七ヶ月前に戻る。

 

慈善家のカルラが、世界的に有名な指揮者エドゥアルド・スポルクの元を訪れる。そしてパキスタン人とイスラエル人による楽団を作りたいから協力してほしいと言う。スポルクはその困難さを知っていたので最初は断るが結局承諾、有名なスポルクの指揮による楽団ということで大勢の若者がオーディションを受けようとする。

 

パキスタン人のレイラはバイオリン、そしてオマルはクラリネットを練習している。スポルクのオーディションを受けるためにテルアビブに行くためだ。反対する家族を尻目になんとか検問所までやってきた二人だが、ユダヤ人の兵士に止められる。しかし、なんとかテルアビブに向かえることになる。

 

スポルクのオーディションが始まるが、敵対するイスラエル人で、才能のあるロンらのグループと対立が始まる。スポルクは、さまざまな手段を使って両者の融和を図り、やがて本番を明後日に控え、メンバーたちに自由なひと時を与える。ところが、兼ねてから思い合い始めていたオマルとシーラはこの夜、体を合わせる。そしてシーラはその嬉しさからついSNSに二人の写真をアップしたためにシーラはドイツにいる叔父から連れ戻されることになる。迷ったオマルは二人で逃げることにするが、楽団の安全を図っていた男が彼らを見つける。しかし、言葉が通じず、二人は逃げるが、直後銃声がしてオマルは何者かに射殺されてしまう。シーラは叔父に連れ戻されるが、その車にレイラは石を投げてしまう。

 

演奏が実現せず、落胆するスポルクの前にカルラが現れ、別の慈善活動に旅立つと言う。空港では、ガラスで遮られて、パキスタン人とイスラエル人が飛行機を待っていた。そこにオマルの事件がモニターに流れる。ロンはレイラらの方を剥き向きガラス越しにバイオリンを演奏し始める。それは、ボレロだった。それにレイラも応え、やがてメンバー全員が演奏する。こうして映画は終わっていく。

 

丁寧に脚本が描かれているので、非常に奥の深い内容が散りばめられ、単純に行かない難しさもちゃんと表現できている。しかも、映像の展開のテンポが実に良くて、退屈せずにどんどん引き込まれる。難を言えばスポルクの人生の背景がさらっと流されてしまったことでしょうか。でも、全体にとっても感動的ないい映画になっていました。

 

「ファミリー・ネスト」

例によって、ドキュメンタリータッチで、クローズアップで延々と独り言なのか誰に話してるのかわからない姿をフィックスで捉えて語っていく。要するに、住宅事情が悪いと言うことなのか、家族の在り方に問題があるのか、めんどくさいように愚痴を繰り返す登場人物を見るだけの映画でした。これを個性というなら、果たしてどこを評価するのだろうかと思います。タル・ベーラ監督の長編デビュー作。

 

工場で働くイレンが、少ない給料をもらうところから映画は幕を開ける。帰ってみれば狭いアパートに義父夫婦と同居で、義父は何かにつけてイレンに文句ばかり延々とする。イレンが友達を連れ帰ったことにも文句を言う始末。そこへ兵役に行っていた夫ラツィが帰ってくる。それでも愚痴を言い続ける義父。やがて友達が帰るが、ラツィと弟が送って行き、途中でレイプする。一体どんな男どもやという感じです。次のカットで3人でビールを飲んでる。

 

カットが変わっても、文句を言う義父。イレンが夫の留守に家に帰っていないと詰め寄る義父にラツィも素直に反対しない優柔不断男。イレンは役所へ新しいアパートの空きを依頼しているが全く進まない。とうとう娘を連れて家を出る。娘を兄の家に預け、友達に延々と愚痴を言う。義父はというと、酒場で声をかけた女とねんごろになろうとする。一体ここの男どもはなんなのだろう。ラツィはと言うと、これも昔の良かった時代を延々と誰に語っているのか喋り続け、やがて映画は終わっていく。

 

クソみたいな男どもと、そんな男についていく女ども、一体なんの映画なんだと言う作品だった。