くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ジャネット」「ジャンヌ」

「ジャネット」

素人のインディーズ映画のような様相の作品で、ミュージカル仕立てだが下手くそな歌とアングラ劇のような即興の振り付け、そして延々と喋る台詞で全般貫いていく。おそらく意図しての演出なのだろうが、演技演出も構図その他の工夫もない。不思議な映画でした。監督はブリュノ・デュモン。

 

英仏の百年戦争真っ只中の1425年、フランスの片田舎ドンレミの村のジャネットは、イギリス軍がフランスに攻め入っていることに憂いを思い、友達のオーヴィエットと悩む心を話している。思い悩むジャネットに修道女のジェルヴェールらが諭そうとするが受け入れられない。なぜかいつも川の中を歩いているジャネット。

 

そして数日後、ジャネットは川で三人の聖人と出会い、フランス軍を率いる指揮官はジャネットであると告げられる。そして3年が立ち、決心したジャネットは聖人が呼んでくれたジャンヌの名前でイギリス軍が包囲しているオルレアンに向かうことになる。しかし、一度はフランスの将軍に馬鹿にされて戻って来るが、その八ヶ月後再度叔父と一緒に旅立って行って映画は終わる。

 

史実を知っているからついていけるのだが、全くのフィクションだったら何のことかわからない作品である。

 

「ジャンヌ」

なかなか見応えのある作品で、洪水のように繰り返される台詞の応酬、様式美で処理する戦闘シーンなど、工夫の見られる演出が白眉の作品でした。監督はブリュノ・デュモン。

 

オルレアンを解放したジャンヌだが、パリ攻撃に失敗、さらにイングランドを追い払うという理想を貫くだけのジャンヌに軍内部からも反発が起こり始める。馬術ショーのようなイングランドとの戦いシーンは、規模こそ小さくスペクタクルな戦闘シーンではないものの、どこか面白さがあります。

 

そして、イングランド側に捕まったジャンヌは宗教裁判にかけられることになる。この場面で、司教たちの辛辣な尋問に自分の信念を曲げずに応戦するジャンヌとのやり取りの場面が圧巻で、ぐいぐいと引き込まれる迫力があります。

 

火刑となることが明らかになったものの、いつまでもダラダラと刑の執行を先延ばしにする司教たちの姿は、自分達の判断にどこか疑念があるのが見え見えになって来ます。それでも信念を絶対に曲げないジャンヌの佇まいがものすごい存在感となって映画をクライマックスに持っていきます。そして、彼方の丘で火刑に付されたジャンヌの姿を捉えて映画は終わる。

 

宗教を盾にしているようで、実は自分達の存在の意義を確認しようとしている司教たちの困惑した姿と、しっかりと立ち位置を決めているジャンヌへの嫉妬さえも見えて来る尋問の繰り返しが実に見事で、映画として見応え十分な一本でした。