くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「イングリッシュ・ペイシェント」「THE BATMAN ザ・バットマン」

イングリッシュ・ペイシェント

アカデミー賞の貫禄十分な名作です。約30年ぶりの再見ですが、やはり素晴らしかった。二つの時間と二つのラブストーリーを巧みに組み合わせながら、それぞれが切ないラストシーンへ収束していく展開の見事さに圧倒されます。何度見ても涙する傑作です。監督はアンソニー・ミンゲラ

 

一機の複葉機が砂漠の上を飛んでいるが、地上から攻撃され、まみなく火を吹く。操縦していた兵士は何とか脱出するが同乗していた女性だろうかは、既に死んでいるようである。場面が変わると、アラブ人らが、墜落した飛行機から男を救出している。男の顔は火傷で爛れているが、何とか手当を施している。カットが変わると、顔の皮膚が爛れた患者を看病する一人に看護師ハナの姿。患者は自分の名前も覚えていないという。やがて、赤十字のトラックは連ねて移動を開始する。時は1944年、第二次大戦末期である。

 

ハナの乗ったトラックの横を友人のジャンのトラックが追い抜いていくが、前方で爆発する。どうやら道に地雷が埋められているようで、一瞬で友人を失ったハナは愕然とする。地雷処理にハーディ軍曹とインド人兵士のキップがやって来て処理を始めるが、意気消沈したハナはフラフラと道を歩いてジャンの遺品を拾おうとしてキップに止められる。

 

ハナたちは一時廃墟の建物に留まる。ハナは火傷の患者を看病する。患者は第二次大戦初期の記憶に自分を遡る。彼の名前はあるアルマシーと言ってイギリス人の王立地図院の職員で、砂漠の地図を作成するためにこの地にやって来ていた。そこで、クリフトン夫妻と知り合い、妻のキャサリンに次第に心を奪われていく。

 

キャサリンの夫ジェフリーは、極秘任務を負っていて何かにつけキャサリンを一人残して任務遂行に向かう。一人になったキャサリンは次第にアルマシーに惹かれていき、やがて二人は愛し合うようになる。そんなキャサリンにジェフリーも疑いの目を向け始める。

 

ハナは献身的にアルマシーの看病を続ける。赤十字のトラックが去ることになるが、トラックで移動することは厳しいと判断するハナはアルマシーとこの建物に残ることにする。ある時、キップとハーディ軍曹が現れる。彼らは爆弾処理の仕事をしていた。次第にハナはキップに惹かれ始め、二人は愛し合うようになる。

 

そんなところへ、カラバッジオという親指のない男がやってくる。彼は任務中にドイツ兵に捕らえられ、親指を切断させられた。そのきっかけとなったのは、アルマシーがドイツのスパイで、砂漠の地図をドイツ兵に渡したために捕まったことだった。カラバッジオは自分を貶めた人物に順番に報復していたのだ。そして最後にアルマシーにも近づいて来たのである。

 

一方で、アルマシーの過去の物語が描かれていく。ある時、ジェフリーが操縦する飛行機を見ていたアルマシーだが、突然、アルマシーの方へ飛行機が向かって来てそのまま地面に激突する。アルマシーが駆けつけると、すでにジェフリーは死んでいて、キャサリンも同乗していて重傷を負ってしまう。アルマシーは、彼女を助け出すが重症で、アルマシーだけではどうにもならないと判断し、洞窟にとりあえず運んで、アルマシーは助けを呼ぶために街へ向かう。

 

ところが、砂漠を進んで気を失い、何とか街にたどり着いたものの、ドイツ人と間違われて、逮捕され護送される列車に乗せられてしまう。何とか列車から逃亡し、洞窟へ戻るために、隠していた砂漠の地図を取引材料にしてドイツ人に飛行機を手配してもらい、戻って来たが、既にキャサリンは息絶えていた。

 

ハナとキップ達は、弱っていくアルマシーを看病しながら過ごしていたが、やがて終戦を迎える。ところがその祝いの騒ぎに中、ハーディ軍曹が事故で亡くなり、キップは失意のどん底に落ちる。また、カラバッジオはアルマシーに彼の親友マドックは自殺したと告げる。

 

一気にアルマシーの記憶は戻り、ジェフリーとキャサリンが飛行機で自殺を図ったこと。キャサリンを洞窟に残して救援を求めにいき、ドイツ人に捕まったこと。キャサリンの元へ戻るために地図を取引の道具にしたがスパイ活動をしたわけではないことをカラバッジオに話す。それを聞いたカラバッジオにはもはや復讐の気持ちは消えていた。ハナはアルマシーの最後を看取り、キップとの愛を育むべくキップとの再会を約束して送り出す。アルマシーの記憶な中で、キャサリンを乗せ飛行機で旅立つアルマシーの姿、冒頭に場面になり映画は終わる。

 

とにかく、これこそ名作と言わんばかりの書き込まれた人間ドラマが見事で、二つの時と二組の男女の恋物語に、さまざまな人間ドラマを絡ませていく展開に、どんどん胸打たれていきます。本当に名作とはこういうものだと思います。素晴らしかった。

 

「THE BATMAN ザ・バットマン

ダークヒーローとして徹底的に人間らしく描き切ったバットマンのドラマという意図はしっかり出ているし、夜景とシルエットを効果的に使った映像作りも美しいのですが、やや語りの理詰めで展開させるドラマ部分がくどいし、大作らしいスペクタクルな場面も織り込んだストーリー展開は飽きさせないのですが、構成のバランスがちょっと良くないのか、長さを感じてしまう。さらに、ブルース・ウェインの両親の物語の真相説明が終盤延々と描かれるので、ここまでの中心的な警察内部の汚職のドラマがどうでも良くなってしまう。ちょっと力が入りすぎた仕上がりの映画でした。監督はマット・リーブス。

 

両親を殺された過去に苦しむ主人公ブルースは、今夜もゴッサムシティの空にバットマンを望むサーチライトのメッセージに応え、悪人退治に乗り出してくるのだが、そこにはどこか複雑な復讐心が見え隠れしていた。そんな時、現市長のドン・ミッチェルが殺される。犯人として名乗り出して来たのがリドラーという男。バットマンはゴードン警部補と捜査に乗り出す。バットマンはあのコスチュームのままで探偵まがいの捜査に加わる。

 

ミッチェルが実はある女と愛人関係にあったかの写真を入手し、その真相のために、ペンギンがその情報を持っていると考えたバットマンがペンギンのクラブに乗り込みそこで一人の女性セリーナの存在を知る。

 

バットマンは、セリーナのもう一つに顔がキャットウーマンであることを知り、また彼女が行方不明になった友人のアニータを探していることを知る。アニータこそがミッチェルと写真に写っていた女性だった。バットマンはセリーナと協力し、ペンギンの闇クラブを調査し始めるが、そこで、検事など警察関係者も含めて、先日解決した麻薬の売人マリーナ事件にも関わっている背後の黒い関係が見えてくる。そんな時第二の殺人事件が起こる。事件のたびにバットマン宛に謎々が提示され、バットマンはその謎を解きながらリドラーに近づいていく。やがて見えてくるのは、犯罪王ファルコーネの存在。

 

リドラーの最後のターゲットがブルースであることも見えてくる。そして、逮捕されたリドラーは、ブルースに、ブルースの両親は実はファルコーネを使って、市長選にマイナスになるネタを持っていた新聞記者を殺した過去があることを話す。しかし。バットマンがアルフレッドに問いただすと、それは誤解であることがわかる。リドラーは、留置所に収監されたものの、実は最後の復讐が既に準備されていた。

 

ゴッサム市の周辺の運河の要所に爆弾を仕掛けていた。それが爆発すると、運河の水が市長選のドン・ミッチェルのライバルで、新市長として決まったベラの演説会場に流れ込み大勢を死傷させる計画だった。バットマンらは駆けつけるが、爆弾は爆破され大量の水が会場に流れ込む。そして、あわや電気線が水の中に落ちようとするところをバットマンが身を挺して防ぎ、さらにどこから来たのかリドラーの手下達が銃撃戦を繰り広げ始めるのに単身戦いを挑んで行く。何度もピンチになるが、キャットウーマンが加勢し大団円。最後は、被害者などを助け出すお手伝いをするバットマンの姿。やや微笑ましい。

 

全てが終わり、キャットウーマンは、一緒にこれからダークヒーローとして活動しようと誘うが、空にはバットマンを呼ぶサーチライトが輝く。バットマンキャットウーマンと別れ街への道をバイクで走り去り映画は終わる。こうしてバットマンは、正義のヒーローとして前に進む。

 

とまあ、これでもかというほど詰め込まれた内容の作品ですが、ストーリーの整理がいまひとつ鮮やかに仕上がっていないのと、派手な見せ場の配分の構成がリズム的にうまくいっていないために、妙に長く感じてしまう。カーチェイスの場面やクライマックスのスペクタクルなバトルシーンは実にすごいのですが、全体に緩急がもうちょっとできていたら傑作になった感じです。でもクオリティは高い作品で面白かった。