くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アンネ・フランクと旅する日記」

アンネ・フランクと旅する日記」

アンネの逃亡生活とナチス侵攻の悲劇を移民問題に重ねて描く人間ドラマという感じの一本で、絵の美しさとファンタジックな筋立てが魅力のアニメーションでした。監督はアリ・フォルマン

 

オランダアムステルダム、現代から一年後嵐の日、アンネ・フランクの日記が保管されている博物館、落雷と共に日記を展示しているケースが破損、すると日記の文字が動き出し、アンネが空想の友達として日記の宛名にしていたキティが現れる。こうして物語は幕を開ける。人々からキティの姿は見えないが、日記を手にしている間は生身の人間として現代に存在することができた。そして日記を開くと過去へ遡り、アンネの誕生日の日、母に日記帳をもらった日に遡る。そしてキティはアンネがアムステルダムの隠れ家に移り、孤独な日々を過ごし始める毎日に共に過ごすことになる。

 

一方、現代のキティは、姿が消えたアンネを探して、知り合った青年ペーターと一緒にアムステルダムの街を駆け巡る。ペーターは、大勢の難民が暮らすアパートで、難民達の面倒を見ていた。キティはアンネの日記を盗み出し、警察に指名手配されながらも、アンネのその後を調べ始める。そして、アンネの日記を知るはずのないアンネの父の存在を知り、アンネが亡くなったことを知る。

 

映画は、アンネが晩年過ごした日々、そして希望が見えた1945年、不幸にも最後の収容所へ向かう列車に乗せられ、命を失うまでをキティの視点を通じて描く一方で、強制送還される難民達の物語に重ね合わせる現代のドラマを交互に描いていく。そして、追いつめられたキティは、アンネの日記の原本を返却する代わりに難民達を受け入れてくれるように交渉し、政府を動かして、難民達は送還されないことが決定。キティとペーターはいつのまにか心が通い合い愛し合っていたが、日記を返却したことでキティは消えてしまう。こうして映画は終わる。

 

フリーハンドのような美しい線で描く絵が美しい作品で、現代と過去を重ね合わせたストーリーも切ない一本です。映像作品としては普通の出来栄えだと思いますが、いい映画でした。