くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アンビュランス」

「アンビュランス」

大胆でスピード感が物凄いカメラワークがとにかく面白くて、全編見せ場だけと言っても過言ではないエンタメ映画でした。冒頭部分のみ僅かなドラマがあって、後はひたすらカーチェイスの追っかけ劇なのですが、いつのまにか収拾がつかなくなって、ラストは、物語の方向が狂った上に、犯罪の正当化というような気持ちの悪いエンディングになった。明らかに失敗作です。それでも面白い映画でした。監督はマイケル・ベイ

 

黒人と白人の少年が遊んでいる場面から映画が始まり、カットが変わるとその黒人少年が大人になり、妻の病の治療に莫大な費用がかかるのだが保険金も降りず、役所に電話をしているがたらい回しにされているようで埒があかない状況の場面となる。結局電話を切るが、妻を安心させるために、うまくいったと嘘を言い仕事の面接に行くと出かける。なんとも適当なオープニングである。彼の名はウィルと言い、アフガニスタン派遣の元兵士で数々の武功を立てた勇士だった。しかも、車の運転もプロ級だった。

 

ウィルには、血のつながりはないが兄のダニーがいた。ダニーは犯罪のプロで、ウィルは頼るところがなくダニーに金を借りようとやってくる。おりしもダニーは銀行強盗をする準備をしていて、これから出発するところだった。あれよあれよと言う間にウィルも一味に加えられてしまう。なんとも短絡的な展開。

 

ダニーらはうまく銀行へ入り、大金を手に入れたが、たまたま、銀行の窓口の女性をナンパしようと入ってきた若い警官が異変に気づく。さらに、外で待っていた相棒の警官が気がつき、警察が駆けつける。若い警官を伴い必死で逃亡しようとするダニーとウィルだが、警官がダニーに襲い掛かったのでウィルは警官を撃ってしまう。

 

場面が変わり、救急隊のキャムは新人の救急隊員と仕事をこなしていた。たまたま発砲音を聴いて、ダニーたちが押し入った銀行へやってくる。しかも、中で若い警官が撃たれて瀕死の状態だと知り、無理矢理建物の駐車場内へ突入する。逃げる手段を失っていたダニーたちは救急車を乗っ取り、若い警官を後ろでキャムに治療させながら、脱出を図る。あとは、救急車とパトカーらとの大追撃戦となる。

 

警官が撃たれて、救急車の中で治療中ということで、大胆なことはできないまま、パトカーの規模はみるみる増えてくるし、ヘリコプターも導入され、陸から空からとダニーたちは追撃される。

 

その上、ダニーがFBI指名手配班だとわかり、FBIも参加、しかもその指揮官はダニーと旧知の仲という設定まで登場。やたら重装備の車で指揮をする警察官側の指揮官の頭脳戦も加わり、どんどん展開はエスカレートしていく。さらに、ダニーはかつての父の犯罪仲間でもある組織の大ボスに助けを乞うたためにさらにスケールが大きくなる一方で、どんどん混沌んとしてきて収拾がつかなくなってくる。

 

犯罪組織の大ボスが仕掛けた作戦で、警察官の指揮官は死亡し、さらに行先が見えない中、まんまと裏を描いたダニーたちは大ボスのところへ逃げ込むが、ダニーたちを助ける作戦の時に、大ボスの息子が死んでしまい、大ボスはダニーたちを逃す代わりに、救急車の中の警官とキャムを引き渡せと要求してくる。

 

正義感に燃えるウィルはその申し出に難色を示し、ダニーの機転で大ボスの部下と銃撃戦の上、救急車のところへ逃げ戻る。ところが、若い警官の持っていた銃を構えていたキャムは誤ってウィルを撃って、ウィルも重傷となる。もうなんのことやらという展開である。しかも、今にも死にそうだった若い警官は途中大手術を強行したにも関わらずケロリとしてるし、もうなんとも言えない状況。

 

大ボスのアジトから逃げ出したダニーたちだが、とうとうダニーの知り合いのFBI捜査官によって取り押さえられる。ウィルは捕まる寸前に金の一部をキャムに託し、妻に渡してくれと言い残す。最後の最後に、ダニーはキャムを盾に逃げようとするが、背後からウィルに撃たれ、そのままウィルと共に逮捕される。まもなくしてダニーはその場で息を引き取る。ダニーとウィルの視線が合う感動的なドラマもあるものの取ってつけたようなカットである。

 

ウィルも重傷のはずなのに、なぜか救急隊員に抱えられ病院へ連れていかれる。瀕死に若い警官は、FBI捜査官に、自分を撃ったのはダニーだと写真で示す。いやいや、ウィルも犯罪者やろと突っ込んでしまう。キャムはウィルに託された金を、駆けつけたウィルの妻に渡して、冒頭で助けた少女の部屋をおとづれて映画は終わっていく。それでいいのかというラストである。

 

一体どういうことやと言わんばかりのラストシーンで、途中のカーチェイスが芸術的なほど面白いので、なんとも残念な映画で終わった感じです。しかも、犯罪を正当化したような締めくくりはさすがに酷すぎる。オリジナル版の「25ミニッツ」を見ていないのですが、全く奇妙な映画でした。